CEO加藤貞顕代氏が語る、クリエイターファーストをきれいごとにしないnote運営

ランキングがなくて広告を貼れないのがミソ

田沢梓門
田沢梓門, @samebbq
2019年07月30日, 午後 02:30 in platform
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ピースオブケイクが7月22日に開催したメディア向け説明会の模様をお伝えします。上記画像左がCXOの深津貴之氏、右がCEOの加藤貞顕代氏。2人がこれまでの実例をもとにnoteのカルチャーについて説明しました。

まず「note」とは文章やマンガ、写真、音声などさまざまなコンテンツを投稿できるメディアプラットフォーム。ユーザーがいいねやシェア以外にコンテンツに対して課金でサポートできるというのが大きな特徴です。2014年4月にリリースし、2019年1月時点で月間アクティブユーザーが1000万人を超えています。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」というミッションを設定しており、クリエイターのモチベーションを考えた細やかな仕組みが展開されています。その代表的な機能や取り組みを紹介します。

■とにかく書きやすい

まず、記事を投稿する際の編集画面の直感的なインターフェースが特徴です。どのサービスでもよく聞く「直感的インターフェース」というワードですが、実際に利用してみたら機能が無さすぎて簡素だったり、面倒な操作が多い場合もありますがnoteは違いました。

ブログサイトなどによくあるツールバーなどはなくて非常にシンプルなUIで、タイトルやサムネ、本文の打ち込みなどを本当に直感的に実行できます。EngadgetのCMSもこんなに簡単だったらなあと思ってしまいました。 ▲文字を選択して太文字にしたりリンクを貼ったり、中央寄せにすることも簡単。改行すると浮かび上がる「+」のアイコンをクリックすると写真や動画を埋め込めます


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▲大盤振る舞いなハウツー

サイト内を巡っていて驚いたのがヘルプセンターにあった「noteの楽しみ方(書く) 」という、初心者ユーザーの向けのページ。文章の組み立て方やタイトルワークのコツなどを具体的でわかりやすくまとめています。こんな貴重なノウハウを惜しみなく無償で提供していることからも、ユーザーによりよいコンテンツを制作して欲しいというnoteの姿勢が伺われます。

記事内に埋め込めるデータは写真以外にも「YouTube」「Tiktok」「Apple Music」「Sound Cloud」「Slide Share」「Googleフォーム」「GitHub Gist」と各種SNSに対応。音楽や動画を主軸に活動しているクリエイターにとっては嬉しい機能ですね。そのほか、連携している12個のECサイトカートや求人情報の埋め込みも可能。noteでコンテンツを発信するだけでなく、個人や会社のブランドを認知してもらいビジネスに繋げられる仕組みが用意されているのです。
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▲課金モデルの一例として紹介された人気占い師しいたけさんの「マガジン」。星座ごとに会員プランを展開しています

いわゆる課金記事というコンテンツ販売の仕組みは下記の3種類が用意されています。

単発 note記事やマガジンを買い切りで販売する形式
定期購入 購入月にマガジンへ追加されたnoteをすべて読めるように販売する形式
サポート 読者の感じた価値に応じて、対価が得られる仕組み(無料公開noteも対象)

優良なコンテンツやコミュニティに対して共感してファンになったユーザーが対価を支払うという仕組みです。これは、クリエイターにとって大きなモチベーションになるでしょう。noteが「あらゆるクリエイターのホームグラウンドになるようなサービス」になれたらと加藤氏は語りました。

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▲クリエイターの活躍する場を広げる試みとして43のメディアパートナーがいて、noteきっかけで書籍の出版や映像化などが実現しています

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▲オフィスのイベントスペースを貸し出して、クリエイターとファンとの交流の場も提供しています

■競争のない自由なプラットフォーム

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▲PCブラウザーのトップページ

noteのコンテンツの見せ方として特徴的なのはランキングがないこと。トップページの上部に上がっている記事はスタッフがピックアップしたものですが、選定する指標は必ずしもPVではありません。また、noteのコンテンツには広告に貼ってアフェリエイトを稼ぐこともできません。これらの理由について深津氏はこのように述べていました。

「インターネットが普及する以前は絵が上手い人が漫画を書く際は、作品を作り続けることで段階的にスキルアップして商業誌などに投稿していきました。しかし、ネットに絵をアップできる時代になると、デビューした瞬間に世界ランキングに放り込まれます。ランキングでの順位が可視化されてしまうとことで、自分の作品とランキング上位の作品を比較して心が折れて続かなくなってしまうケースが多いのです。

僕らはそういったことがユーザーの創作が続かなくなる原因だと考えています。競争をさせてPVを稼がせるのはサイトのグロースに有効かもしれないけれども、僕らのサービスでは短期的なPVゲームよりもユーザーがクリエイターになって創作を継続してくれることのほうが優先順が高いです。だから、あえてランキングシステムを搭載していません。

私は加藤さんと都市国家の設計に例えてnoteの話をしています。ランキングというのは超資本主義な設計思想で、ランキング1位ですごいPVを集めてる人が上位に表示されるとその人に更にPVが集まるみたいに格差がどんどんと拡大していきます。そうすると、PVを稼げる同じ方向性のコンテンツや煽ったタイトルが増えてしまいます。短期的な刺激に特化してしまうインターネットのネガティブ面でPVやお金を稼がないというのがnoteの理念にあります」


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さらに、創作を継続させる施策としてnoteには「お題」や「コンテスト」という仕組みがあります。「#あの夏に乾杯」「#好きな日本文化」「#チームだからできたこと」といったテーマがあるので、ユーザーはそれに沿ったコンテンツを製作できます。お題という依頼があることで、ユーザーの創作活動は活発になっているそうです。ライターとしても活動する筆者は、「ネタが無い」「締切が無いと永遠に筆が進まない」といった要因で創作の進行が鈍化した経験は多々あったのでとても有効な施策だと思いました。

ここまで聞くと何かを表現したい人にとってnoteはとても創作のしやすい環境に思えます。1点気になったのは、創作の自由の問題。プラットフォームのガイドラインが厳しくなり、NG項目が増えることはクリエイターのモチベーションに直結します。「noteがグロースしていく上で、悪質なコンテンツの取り扱いや表現の自由についてどう考えていますか?」という質問に、加藤氏は以下のようにコメントしました。

「基本的には表現の自由は最大限には担保していきたいから、ルールを課すということはしたくないです。一方で安全な空気というのはクリエイティブにとって物凄く重要。だから『最低限のルール』『テクノロジー』『運営」の3つでバランスをとっていきたいです。

違法でない限り色んなものがある方が健全だと思っているけど、問題はそのコンテンツにマッチしない人が閲覧してしまうこと。ソフトの問題もあるかと思うので、リコメンドエンジンでうまく棲み分けができればと思います。深津さんが言っていた都市の話でいうと、ニューヨークは金融街や中華街、劇場、公園など多様な区域があってすごくバランスよく棲み分けられている街です。そういう多様性がある素敵なサービスにできればなと思っています。

広告モデルは過激なことを言って人が集めて数字が伸ばそうとするユーザーが増えやすい仕組みです。しかし、noteは課金システムによる収益なので方向性は違います。クリエイターは、読者と健全な関係を作って長期的なファンとのコミュニケーションを取るための仕組みづくりを考えなければいけません。なのでnoteには、過激で悪質なコンテンツは増えにくいと思っています」

規模が大きくなるほどにサービスの健全性を保つのは難しくなりますが、ランキングがなくて広告が貼れないという特徴がnoteの多様性や安全性を維持していくのに重要な役割を果たしているようです。

■理念を保ちつつグロースしていくには?

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▲noteの核となる成長モデル。この循環が上手くいくように運営をしているそうです

前述したnoteのプラットフォームとしての特徴を保ちつつどうやってグロースできるように運営しているのでしょうか。深津さんによると「noteはかなり理念設計。売上やPVよりも理念が先にきています。それでいてプラットフォームがグロースしつつ、理念がきれいごとで終わらないようにどうやって仕組みにできているのかということに注力しています」とのこと。PV以外の指標としてクリエイターの継続率やコンテンツの多様性、一番まっとうなことをした人が最適行動になるようなフロー、システムが健全であるかなどをチェックながら運営しているそうです。

最近のnoteでの人気記事の傾向としては、クリエイターのパーソナルなできごとを扱ったものがウケがよく、Twitterじゃ書けない長文のコンテンツがトレンド化しているそうです。数年前は、有名なインフルエンサーがノウハウを有料で提供している場所といったイメージでしたが現在はもっと多様になっているようです。「最初は砂漠に小さなバザーを開いていたのが、漫画やブログなど様々なジャンルが増えて街になった感じです」という深津さんの言葉がとてもしっくりきました。
■関連サイト
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