Engadget
普段は「Quora」というQ&Aサイトで活動している貝原大地です。Engadgetでは軍事/ミリタリー系の面白いTopicsを紹介していきます。第1回は「PUBG」についての記事でしたが、第2回はメタルギアソリッドシリーズに登場した銃器について解説します。

常人では使いこなせない「H&K Mk.23」

Engadget
登場作品/メタルギアソリッド

同作では、ハイテク特殊部隊「FOXHOUND」が占拠するシャードーモセスを舞台に、主人公であるソリッド・スネークが単独任務で作戦行動をする事が描かれています。

スネークが本作戦で最も愛用したハンドガンはMk.23です。当時開発途中だったUSP(Universal Selfloading Pistol:汎用自動拳銃)をベースとして45ACP弾を使用するH&K社製のモデルです。

本モデルを開発した目的としては、1989年に開始されたUS SOCOM(米国軍特殊部隊司令部)の次期制式拳銃「OHWS(Offensive Handgun Weapon System)」に向けてのトライアルに参加する為です。このOHWSでは当時設立して間もない特殊部隊であるUS SOCOMが米軍制式ハンドガンであるM9以上に高性能かつ、高い信頼性を確保できるモデルを要求した為です。

計画で要求されたスペックは
●サイレンサーを無加工で装着できるバレルを有する
●レーザーモジュールを装備できること
●極めて高い信頼性と精度を有すること
●耐水性を持ち、水上作戦での運用が可能なこと
●単体での潜入作戦で使用できる高い拡張性を有すること


そしてOHWSのトライアルではH&KのMk.23に加えてアメリカの1911シリーズで有名なコルト社からオールアメリカン2000とコルト SOCOMが参加しました。

結果的にトライアルに勝利したH&Kは1995年にMk.23 Mod.0としてUS SOCOMにて制式採用されます。

完成したMk.23は当時のハンドガンの性能を大きく上回るモデルとなり、後にUSPにて一般的となるマウントレイルを規格は違うものの採用し、装備するなど非常に近代的で斬新な発想を多く取り入れられました。

現代のハンドガンでは当たり前であるアンビデクストラス仕様のマガジンリリース・セイフティを備え、デコッキングレバーも完備しているなど先取りした機能が多く確認できます。

要求されたスペックとしての信頼性、確実性は30,000発の射撃テストを通して25m先で半径3cmに集弾するほどのハンドガンとしては並外れた耐久性と精度を発揮します。

このようなスペックを見る限りでは申し分の無い、万能なモデルかと思ってしまいますが致命的な弱点が存在します。

それはサイズ重量です。

Engadget

当時の水準のハンドガンとしては破格のスペックが要求された結果、全長は245mm、重量は1.2kg。ハンドガン特有の取り回しを重視する銃器が大型したが故に扱い難いという事態が発生しました。

しかも重量に関してはハンドガン単体でのスペックであり、OHWSが要求した仕様のサイレンサーやレーザーモジュールを装備した場合には、重量が2kg超。「ハンドガンとは?」という根源的な問いが湧き出てきます。

そういった事情から、理想的な性能を有していながらも実際に扱ってみた場合には運用が現実的ではないとしてUS SOCOMでは極一部の作戦にて使用されるに留まり、制式採用のモデルにはなりませんでした。

つまりシャードーモセスではスネークをサポートする上で非常に心強いMk.23ですが、その運用は鍛え抜かれた肉体とテクニックをもつスネークだからこそ扱えたという訳です。

標準装備であるサイレンサーや環境の厳しいシャドーモセスでも動作不良の心配がいらない高い信頼性等、Mk.23はスニーキングミッションにあつらえ向きの銃と言えます。

余談ですが、OHWSでコルト社から提出された2つのモデル、オールアメリカン2000はストーナーとリード・ナイトにより設計されたコルト初のポリマーフレーム自動拳銃です。

1993年に6000挺限定生産された非常に希少価値の高いモデルで、ショートリコイル式で作動しながらスライド後退時に30度バレルが回転して解放する独自のメカニズムを持つ特徴を持ちます。

もう一つのコルト SOCOM はMk.23のようなマウントレイルに近い発想で独自の機構にてレーザーモジュールを装備できます。またサイレンサーもバレルを無加工で装着出来るよう溝が彫られています。内部機構はダブルイーグルをベースにし、デコッキングレバーを装備するモデルになっていました。

ほぼ全てのパーツが入念に吟味されカスタム化されている「アレ」

Engadget
登場作品/メタルギアソリッド3 スネークイーター
ソリッドシリーズ随一の人気を誇り、ザ・ボスとの戦いはシリーズ最高と名高い本作ですが1960年代を舞台としたマニアックな武器も注目すべき特徴です。特にメタルギアのもう1人の主人公であるビッグ・ボスが扱う愛用の銃には非常に拘りの点が多く見られます。

この作品で一番印象深い銃器はなんといっても「Colt 1911 カスタム」。EVAから渡されたカスタム仕様の1911ですが、受け取ったときのスネークの長台詞はゲーム史に残る名シーンですね。では、そのセリフをベースにカスタム内容を考察してみます。



「フォーティーファイブか」

これは45口径弾を使用するコルト社の1911シリーズを指す言葉になります。開発したのは近代銃器の基礎を築いた偉人であるジョンブローニングであり、ブローニング式とも呼ばれるティルトバレル式ショートリコイルを搭載したものが1911、通称ガバメントと呼称されるモデルになります。因みに45口径とは銃身の内径であり、0.45インチ(=11.3mm)となります。

「鏡のようみ磨き上げたフィーディングランプ...」

この場面にてスネークはスライドを引いてエジェクションポートから内部を覗きますが、これはマガジンからチャンバーまでの傾斜を見ています。

つまり、この弾がバレルにまで運ばれる道がフィーリングランプと呼ばれるものであり、装弾不良や排莢不良を防止する工夫を細かく施されている事を指摘しています。

「強化スライドだ」
「更にフレームとのかみ合わせをタイトにして精度を上げてある」


強化スライドとは基本的には材質面で強化されます。また時には大量生産される中で稀に発生する極めて高い精度を保持する物を指します。

そして生産後の組み立てを終わった後には更に稼働部位を擦り合わせ、微調整を繰り返して限界までスペックを底上げします。この手のカスタムは非常に難易度が高い上に経験が必要な技術な為に、一流のガンスミスに依頼する必要があります。

「サイトシステムもオリジナル」

標準の1911ではフロントサイト、リアサイト共に非常に小さく、現在のサイトシステムの様な考えがまだ誕生していない事もあり扱い易いとは言えないデザインです。

そしてこのオリジナルのサイトシステムは一般的には3ドットサイトと呼ばれるものです。フロントサイトにあるドットをリアサイトにあるドットに水平に並べることで視認性の高いサイティングが可能。

形状としてはノバック社の物に近いですが、軽量化の為の溝を掘る工夫が見られます。

「サムセフティも指を掛け易く延長してある...」

サムセイフティは1911の特徴であるコック&ロックを可能にする安全機構としての機能の他に、親指を乗せてより安定した射撃を行う上でも重要な役割を持っています。

そのサムセイフティを延長するというカスタムはより安定した射撃を可能にする工夫であり、同時に素早いコック&ロックが可能にもなります。

「トリガーも滑り止めグルーブのついたロングタイプだ」

トリガーに関しては滑り止めの加工も重要ですが、ホールが非常にユニークなカスタムがされています。

トリガーのホールはトリガー自体の重量軽量化において影響を与えるために比較的メジャーなカスタムですが、この1911では6ホールの加工がされています。

一般的には3ホールが多い中で6ホールは非常にマイナーな形状であり、かなり印象的に残るカスタムと言えます。

「リングハンマーに...」
「ハイグリップ用に付け根を削りこんだトリガーガード」


リングハンマーとはハンマーの内部が肉抜きされた穴の空いた形状のハンマーです。これによりトリガーが引かれた後のハンマーの動きを俊敏にする事で素早い射撃を可能にしています。

またトリガーガードとはグリップからトリガーにかけて円状に広がるガード部分を指し、この付け根部分を削る事でグリップする位置を高い位置にする事が可能になる事からハイグリップ仕様と呼ばれています。

Engadget

「それだけじゃない」
「ほぼ全てのパーツが入念に吟味されカスタムがされている」


グリップに関しては前方下部が抉られており、この窪みにナイフを装備し、グリップする事でスネークが得意とするCQCに高い親和性をもたらします。

またスライドストップも延長されたことで、素早いリロードからの装填を可能にしています。バレルに関してもサイレンサーを無加工で装着でき、スネークの潜入に必須な消音効果を発揮します。

以上の様に元となった1911から相当箇所のカスタムが施され、正にスネークの為のワンオフカスタムと言われる程の加工がされています。

スネークがこの1911を強く好んだのは、やはりスニーキングミッションにおける消音効果です。銃で射撃する際には必ず音が発生しますがサイレンサーを使用することで、ある程度減音が可能。しかし音速を超える弾薬の場合ではサイレンサー内部で射撃音を消す前に弾が射出される為、消音効果は薄いです。

ですが、1911にて使用する45ACP弾は亜音速弾である為にサイレンサーとの相性が非常に良いのです。その為に単独潜入するスネークには大変好条件な銃であり、尚且つ高度なカスタムを施された本モデルがここまでスネークを歓喜させた訳ですね!

一撃必中「Desert Eagle Long barrel」

Engadget
登場作品/メタルギアソリッド4 ガンズオブパトリオット
永きに渡るソリッドスネークの最期の作品であり、銃器操作においてもゲーム業界で最も正確な描写を行う作品として非常に貴重な作品。

本作ではスネークの活躍もさる事ながら、ソリッドシリーズ第1作で共闘したメリルも後半では印象的な活躍をしました。今回はそのメリルが扱う銃器を取り上げてみます。

メリルが使用する「D.E.L.B.(Desert Eagle Long barrel)」はアメリカに本社を置くマグナムリサーチ社が1982年な開発したモデルになります。まず最初に開発されたデザートイーグルは44マグナム弾を使用するモデルでした。

しかしマグナム弾をオートマチックで射撃するという発想自体は注目されたものの、当時まだ成熟されていなかったデザートイーグルの機構では不具合が多発した為に、マグナムリサーチ社からイスラエルのIMI社にライセンスが売却されます。

そして4年後の1986年にIMIはデザートイーグルの機構を安定した動作を確保する事で、マグナム弾を使用するオートマチックとしては初の成功を収めます。また1991年には44マグナム弾より更に強力な50ActionExpress弾を使用するデザートイーグル 50AEモデルが開発されました。

しかしIMI社は1995年から2000年までアメリカのサコー・ディフェンスで生産を続けた後にジェネラル・ダイナミクス社に吸収されます。そしてIMI社から独立したIWI社がイスラエルにて生産を行い、2005年にはマグナムリサーチ社も生産を再開しましたが2009年にはIWI社が生産を終了するなど、非常にややこしい経緯を持つモデルでもあります。

Engadget

しかしユニークなのは歴史だけではなく、内部機構も変わっています。まず一般的なハンドガンが採用するブローニング式ショートリコイルはデザートイーグルでは採用されていません。

これは使用する弾の炸薬量が多い為であり、デザートイーグルでは自動小銃と同様のガスオペレーションでの作動を採用しています。このためバレルはフレームに固定されており、命中精度は非常に高くなっています。

またバリエーションとしては通常の6インチや10インチ、14インチのロングバレルモデルが存在します。しかし14インチモデルは1999年に生産が中止されています。

そして威力としては、50口径モデルで使用される50AE弾は発射時の銃口初速は劣るものの銃口エネルギーはAK-47で使用される7.62mm×39弾と同等です。

つまり近距離であればレベルII規格以下のボディアーマーを貫通するという事になります。メタルギアソリッド4のメリルが扱う10インチモデルのデザートイーグルは正に一撃必中を体現するものであり、それはマウントされたスコープからも見て取れます。

この装備もデザートイーグル特有の固定されたバレル故に可能なものであり50AE弾の特性を最大限に活用していると言えます。

また演出的な要素では、後に結婚することとなる米軍の同僚ジョニー佐々木と2人でカバーし合うシーンで、ジョニーは「M82A2」を手にしています。メリルはデザートイーグルでジョニーはM82A2と、50口径で同じサイズの弾で共闘している訳です。

無論口径が同じだけで、炸薬は全く異なる為に弾の共有化は不可能ですがジョニーが作中でM82A2を使用したのはメリルを救出し、共闘したこのシーンのみである事から、メリルに対する気持ちの決意も見て取れる訳ですね!

口径から、2人の気持ちも通じ合ったという演出は流石メタルギア!と思わざる得ない要素です。