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米マサチューセッツ工科大学内でコミュニケーションなどに用いられるデジタル技術の研究をおこなっているMITメディアラボが、性的虐待や人身売買の容疑者として起訴され、獄中自殺したアメリカの大富豪ジェフリー・エプスタイン氏から資金提供を受けていたとされる問題はこの9月にメディアラボの所長だった伊藤穣一氏の辞任する展開となりました。

一方でMITの人工知能研究所(MIT CSAIL)で役職に就いていたリチャード・ストールマン氏は、この問題に関して、MIT CSAIL設立者のマービン・ミンスキー氏(故人)がエプスタイン氏の斡旋で未成年者と性的関係を持ったと報道されていることに対して、ミンスキー氏を擁護する考えを文書に記したことが、世間からの批判の的となっていました。リチャード・ストールマン氏といえば近年のMIT CSAILでの活動よりもGNUプロジェクト、フリーソフトウェアの思想を広める団体フリーソフトウェア財団(Free Software Foundation:FSF)での活動を思い出す人の法が多いかもしれません。

しかし、一連のエプスタイン氏絡みのスキャンダルの渦中、エプスタイン氏の被害者で当時17歳にもかかわらずミンスキー氏との性的交渉を余儀なくされたバージニア・ジュフリー氏に関するMIT内のメールのやりとりの中で、ストールマン氏は被害者がどの国にいて、当時の年齢はいくつだったかなどとたずねたうえでそれがレイプや性的暴行だと定義するのは合理的でないとの持論を展開し「最もそれらしいシナリオは、被害者が自ら『完全に喜んで求めに応じていた』ということだ」とのべました。

ヒッピー文化の影響を強く受け、自宅すら持たずにMITからの給料も受け取らず研究施設で寝泊まりするというまるで仙人のようなストールマン氏に、現代の常識、共通認識をたずねること自体がそれほど正しいことではなかったのかもしれないものの、いくらなんでも性的虐待の被害者に対して「完全に喜んでいたのだろう」は、到底受け入れられる言葉ではありません。当然、ストールマン氏への批判がわき起こることとなりました。

ストールマン氏はその後自身のブログを更新し「子どもとの性行為が心理的に害をおよぼす可能性があることを理解した」とコメントを投稿しました。そして9月16日、ストールマン氏は「一連の誤解とそれに対するMITと私へのプレッシャーにより、私はMIT CSAILの職位から直ちに辞任することにしました」と声明を発表しました。さらに、FSFに関しても同日、財団創設者で代表のストールマン氏が辞任し役員会からも退いたことを財団が発表。FSFはすぐにも新たな代表の選出に入るとともに、決定し次第ウェブサイトで公表するとしています。