「ポケベル」という愛称で長らく親しまれてきた「ポケットベル」ですが、全国で唯一ポケベルのサービスを提供していた東京テレメッセージが9月30日にサービスを終了します。
ポケットベルは、電波で小型受信機に合図を送る無線呼出しサービスに使われる機器で、1958年に米国でサービスが開始。日本では1968年7月に電電公社(後のNTT)が150MHz帯を利用した自動ダイヤル交換方式の「ポケットベルサービス」として、東京23区で開始しました。
ポケベルは相手を呼び出す単純なもの
サービス開始当初は、電話をかけるとポケベル本体の音が鳴り、それに気づいて自宅の固定電話もしくは公衆電話から相手へ電話をするといった使い方が一般的でした。現在のように連絡を取り合うというよりも、あくまで「呼び出す」という至ってシンプルな仕組みでした。▲初期のポケットベル(B型、A型、S型)
現在と比べると、できることも少ないですが、当時はオフィスを離れて行動する営業マンへの連絡など、それまでの固定電話利用では得られない利便性をもった画期的なサービスでもありました。
▲1988年にはペンタイプのポケベルが発売
その後、ポケットベルの端末も姿や形を変えて進化し、新機能も追加されました。1987年(昭和62年)にはプッシュ信号により数桁の数字を送信して表示できるようになり「送信者の電話番号にかけ直す」ことも可能になります。
数字による「語呂遊び」も大流行
1990年代に入ると「0840(おはよう)」「8181(バイバイ)」「0906(遅れる)」「194(行くよ)」「14106/114106(愛してる)」など数字の語呂合わせでメッセージを送ることが、女子高生など若い世代で流行しました。1994年頃からカタカナやアルファベット、絵文字などを表示できる製品が登場し、ここでようやく文字送信も可能となりました。
最盛期を迎えたのは1996年(平成8年)のことで、ドコモとしての契約者数は649万件を突破(地方など他社を含めると約1000万件)。ドコモの齋藤武氏(前 ポケットベル事業推進本部 販売促進)は、「あまりの人気で、通信設備や本体生産も追いつかなくなるほど大変でした」と当時の苦労を語ります。本体色にピンクや紫が多く採用されていたのもこの頃で、女子高生など若い世代に人気だったと振り返りました。
こうしたこともあり、ドコモでは95から96年頃に広末涼子さんをポケベルのイメージキャラクターとして採用。齋藤氏によると、学生をターゲットにした製品やテレビCMも好評で、友達同士で連絡を取り合うことを「ベル友」と呼ぶなど社会現象となったそうです。
一方で、この頃から携帯電話やPHSやの普及が本格化しはじめ、ポケベルに取って代わるような存在となりつつありました。1996年のピークを境に加入者数は減少していきました。
ポケベルのサービスも電電公社(当時大手)の民営化からNTT分割などを経てNTTドコモが引き継ぎ、ポケットベル事業は2001年に「クイックキャスト」(QUICKCAST)にサービス名を変更。2004年には新規加入受け付けを終了し、2007年3月末をもってサービスを終了しました。
そして前述のとおり、1500人の加入者数を抱える東京テレメッセージもポケベルのサービスを終了しました。
齋藤氏は約50年というポケベルの長い歴史に対して「モバイルの世界は流行りだすのも早いですが、同時に廃れるのも早いと感じます。今後は直接端末を操作しなくても相手とコミュニケーションを取れるような手段もあるといいなと思います」とコメントしました。