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AI機能と5Gモデムも統合した「Kirin 990」チップセットを採用したファーウェイの「Mate 30」シリーズがグローバル市場でこの秋発売になります。今やファーウェイの2本柱として大きな注目を集めるMateシリーズですが、最初のモデルが登場した時は今とは違う位置づけの製品だったのです。Mateシリーズは初代モデルからどのように進化してきたのか、その歴史を振り返ります。

・2013年 初代モデル「Ascend Mate」登場


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ファーウェイのスマートフォンは初期のころ「IDEOS」というブランドを使っていました。日本でもいくつかのモデルが投入されたこともあります。しかし2012年にスマートフォンのブランドを「Ascend」という名前に一新するとともに、新たにスペックを重視した「D」、デザイン特化の「P」、一般向けの「G」、カジュアル路線の「Y」という4つの製品展開を図ったのです。ターゲットユーザー別に4つのライン展開で販売数増を狙ったのでした。

ちなみに2011年のファーウェイのスマートフォンシェアはガートナーによると世界8位。当時のランキングは1位がノキア、以下サムスン、アップル、LG、ZTE、ブラックベリー(RIM)、HTCの順。ファーウェイはモトローラをようやく追い抜いたという状況だったのです。

製品ターゲットを明確にすればさらに販売数を伸ばせると考えたのも束の間、ファーウェイの想定外の製品が市場で存在感を表します。それは大画面とペンをひっさげて同情したサムスンの「Galaxy Note」。「大きすぎて誰も使わない」とあちこちから批判を受けた初代Galaxy Noteは、2011年9月の発表直後から好調な売れ行きを見せ、気が付けば「ファブレット」という言葉まで生み出しました。ファーウェイのAscend初代モデルが登場したのはそれから4か月後の2012年1月。世界最薄のスタイリッシュモデル「P1s」を投入して一気に話題を集めるものの、ファブレット需要は中国でも広がっていったのでした。

2013年1月のCES2013でファーウェイが発表した「Ascend Mate」は、前年に4つのアルファベットで製品区分を明確化した方針を早くも撤廃し、「Mate」という名前を採用しました。おそらくこれはGalaxy Noteに対抗して製品名にも親しみとわかりやすさを込めてつけられたものと考えられます。ちなみに同時に発表された「Ascend W」はWindows Phone OSを搭載したモデル。この時点でファーウェイのスマートフォンは6つの製品区分に別れたのです。

Ascend Mateは6.1インチディスプレイを採用し、本体サイズは163.5 x 85.7 x 9.9 mm、重量は198g。当時としてはかなり巨大で重い製品だったでしょう。Galaxy Noteの5.3インチよりディスプレイを大型化したものの、本体サイズもより大きかったため完全なライバルにはなり切れなかったようです。

・2014年 LTEに対応した「Ascend Mate2 4G」投入


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2014年1月のCES2014で発表された「Ascend Mate2 4G」は名前に4Gとつけているように、LTEに対応することを一番のアピールにしていました。やはり初代Ascend Mateからつけた「Mate」の名前が消費者には浸透しにくかったのでしょうか。Galaxy Noteはスタイラスペンを内蔵しノートのように使えることと手軽な大きさで多くの消費者の支持を受けました。それに対してAscend Mateは大きさを超えることを急いでしまったのか、ブランディングまで力が回らなかったと思われます。しかし2機種目で4Gをアピールしたことは、ファーウェイのスマートフォンに最新技術が搭載されていることをしっかりと誇示できたことは明らかです。

Ascend Mate2 4Gは同じ6.1インチディスプレイを搭載し、本体サイズも161 x 84.7 x 9.5 mmとやや小ぶりになりました。しかし重量は増して202gと、200gを超えてしまったのです。このあたりはまだまだ「大きいディスプレイを載せるのがやっと」という状況だったのかもしれません。とはいえ2013年6月には世界最薄を更新する「P6」を発表しています。P6はデザインとカメラにも優れた製品で、ファーウェイのスマートフォン設計技術は着々と高まっていたのです。

・2014年 高級感仕上げ「Ascend Mate 7」で攻勢をかける


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Ascend Mate2 4Gからわずか8か月後の2014年9月に発表された「Ascend Mate 7」は現行のMateシリーズの礎となるモデルともいえます。9月に発表された意味は、このモデルから新型iPhoneとGalaxy Noteに対抗する「秋冬のフラッグシップモデル」という位置づけに戦略を大きく転換したからです。アップルは「iPhone 6 Plus」を同月に投入し、スマートフォンの大画面モデル競争がついに本格化します。

Ascend Mate 7は狭額縁化6インチディスプレイ採用で本体サイズは157 x 81 x 7.9 mmとさらに小型化を実現。ボディーは金属製でダイヤモンドカットのエッジ処理で高級感にもあふれています。さらにチップセットはハイシリコンのオクタコアCPU搭載「Kirin 925」を採用。デュアルSIMかつデュアルLTE対応で、世界初のCat.6対応と高速も売り。「最新のチップセットに美しいボディー」、そしてフラッグシップモデルP7と同じ1300万画素カメラを搭載し大きな注目を集めました。

中でも中国ではビジネス層を中心に大ヒット、同時期に発表されたGalaxy Note 4が従来モデルと変わらぬ樹脂ボディー仕上げだったこともあり、「大画面高級モデル」とし先進国でも人気となっていきました。

・2015年 「Mate 8」「Mate S」で新たな展開へ

2015年はファーウェイにとってブランドの再転換の年となります。「Ascend」のブランドを廃止し、ファーウェイ「P」「Mate」の2つをフラッグシップとした製品展開に変更。また初のNexusブランド「Nexus 6P」やスマートウォッチ「Huawei Watch」を発売するなど、モバイルデバイスの製品ラインナップの拡大を目指した年でもありました。

Mateシリーズは9月に5.5インチとディスプレイサイズを1周り小さくした「Mate S」を発表。iPhone 6sが採用した3D Touchに似たForce Touch機能を搭載したモデルもありました。Mateシリーズでありながらも実験的な機能を搭載したモデルだったわけです。なおこの年の中国市場はLeEco(LeTV)がハイスペック・大画面・高級仕上げ・低価格というスマートフォンを大々的に投入。ファーウェイとしては価格勝負ではなく機能で差別化とばかりにMateシリーズのラインナップを1つ増やして対抗したとも考えられます。

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Mate 7の後継モデル「Mate 8」は11月に中国で発表。Mate 7からCPUやバッテリー、デザインを向上しており、Mateシリーズの実力をさらに高めたモデルでした。

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・2016年 ライカとポルシェデザインの「Mate 9」


2016年9月発表の「Mate 9」は3モデル展開と製品の数を拡大しました。基本モデルのMate 9はディスプレイサイズこそ5.9インチとわずかに小型化されたものの、この年コラボレーションを発表したライカのカメラを搭載。4月発表の「P9」では1200万画素カラー+1200万画素モノクロのデュアルカメラでしたが、Mate 9ではモノクロ側を2000万画素にアップ。さらにフロントカメラの美顔機能も高め、カメラ機能を大きく高めました。

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派生モデルとして登場したのが「Mate 9 Porsche Design」で、ついにブランドとのコラボレーションモデルも投入されました。ディスプレイは5.5インチで左右の角を落としたエッジデザイン。価格は1395ユーロ、日本円では15万円を超えます。しかしこの価格でも十分売れるだけの製品を出せるメーカーにファーウェイが成長したというのも事実でしょう。ライカとのコラボもライカがファーウェイを認めたからです。スペックはほぼ同等で通常モデルの「Mate 9 Pro」と合わせ、Mateシリーズの高級化路線が強まっていきます。

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・2017年 NPU搭載チップセット、AI機能強化の「Mate 10」

2017年10月発表の「Mate 10」は世界初とファーウェイがうたうモバイル向けNPUを内蔵したチップセット「Kirin 970」を採用しました。NPUはAI処理などを行いCPUの負荷を分担します。これにより写真撮影時の高度なシーン自動判定やユーザーのスマートフォンの使用実態に応じたアプリ起動の高速化などが図られます。また専用クレードル不要、ケーブル1本で外部モニタに接続して専用UIで操作できるデスクトップモードも搭載。サムスンは同機能を使うために別途高価なクレードルが必要ですが、ファーウェイはそれも不要にしました。

このMate 10あたりからファーウェイの製品発表会では「対アップル」よりも「対サムスン」色を強めていきます。本体サイズなどでは新型iPhoneとの比較をするものの、それはもはや優位性のアピールではなく「参考に」というアピールにも思えました。カメラ性能もライカとのコラボにより完全にiPhoneを抜き去りました。ファーウェイの世界シェアはまだ3位でしたが、もはや2位になるのは時間の問題、1位サムスンをどう抜くかがファーウェイの大きなチャレンジになったのです。

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モデルは6インチ18:9ディスプレイの「Mate 10 Pro」、5.9インチ16:9ディスプレイの「Mate 10」、そしてポルシェデザインとコラボレーションした「Huawei Mate 10 Porsche Design」の3つ。Huawei Mate 10 Porsche Designは背面仕上げをセラミック風にしさらに高級感を高めました。

・2018年 カメラと大画面化でライバルはキャノンと任天堂!「Mate 20」

2018年9月発表の「Mate 20」はさらなる製品拡張を目指し、7インチを超える特大画面の「Mate 20 X」もラインナップに加わりました。Mate 20 Xの製品発表では任天堂のゲーム機Switchとの性能比較を行うなど、もはやライバルはスマートフォンではなくゲーム専用機。カメラのISO感度も102400となり、比較にはキャノンの一眼レフカメラを出すなど「やりたい放題」とも言えるほど、マシンスペックの高さが大きくアピールされました。


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このMate 20 Xに加え、「Mate 20」「Mate 20 Pro」「Mate 20 Porsche Design」とモデルは4機種に増加。カメラは4000万画素のワイドに800万画素の望遠、そして2000万画素のウルトラワイドを搭載(Mate 20のみ1200万画素+800万画素+1600万画素の組み合わせ)。iPhone 11が今年になってウルトラワイドレンズを搭載して驚かれていますが、ファーウェイはすでに1年も前に実装済みです。さらにはフロントカメラも全モデルが2400万画素を搭載。カメラフォンとしても最高のモデルとなり、ファーウェイのみならずすべてのスマートフォンの中でも当時最高峰と言える製品に仕上げられたのです。

最新モデルのMate 30シリーズは、だれが見てもライバルがいないと思えるほどの最上位モデルとなり市場に投入されます。Googleアプリ非対応や独自アプリプラットフォームのHMS(HUAWEI Mobile Service)の完成度といった懸念はあるものの、今年登場するスマートフォンの中でトップ3に入る力は十分に持っているでしょう。この秋冬のスマートフォン市場でどれくらいのパフォーマンスを残すのか、気になるところです。