日本で「NFC Pay」はいつ普及するのか:モバイル決済最前線

世界中どこでもキャッシュレスの時代は近付いている

鈴木淳也 (Junya Suzuki)
鈴木淳也 (Junya Suzuki), @j17sf
2019年11月29日, 午前 11:50 in payment
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今年9月は英国、アイスランド、フランスの欧州3ヶ国、10月は米国西海岸の3都市(ロサンゼルス、サンフランシスコ、ラスベガス)、11月は香港、マカオ、中国の深センの3都市を出張でまわったが、以前に比べても現金を使う機会は非常に減ったと感じる。

現金を利用したのは、米国滞在時に現地の人と食事に行って割り勘をしたときにキャッシュで受け取ったのと、チップを支払ったとき、そしてクレカがほとんど利用できないマカオ滞在時のみだ。

このうち、特に最初の欧州3ヶ国についてはもはや現金の必要性を感じない。「ICチップ付きクレジットカード」を持っていることが前提ではあるが、これさえあればすべての支払いは可能だし、カードにNFCによる支払い機能が付いていればさらに便利になる。

現地でのキャッシュレス事情は別サイトでの記事を参照いただきたいが、アイスランドなどではインターネットでのオンライン予約や支払いを組み合わせ、それほどコストをかけずにキャッシュレスを実現していて非常に面白い。

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▲今どきは世界のどこに行ってもクレカとスマホがあれば支払いで困ることは少ない。レイキャビク市内でNFC Payで支払いを行っているところ

特に現地では独自通貨の「アイスランドクローナ(ISK)」が流通しており、訪問機会の多い英国の「ポンド(GBP)」や欧州の「ユーロ(EUR)」に比べても圧倒的に後の利用機会が少なく、できれば両替やキャッシングは避けたい。その意味でキャッシュレスというのはインバウンド客にとって非常に嬉しい施策といえる。

最近、Alipay(支付宝)で「Tour Pass」が導入され、クレジットカード経由で残高チャージを行って中国内でのAlipayによる支払いが外国人でも容易になった。中国旅行のハードルがぐっと下がったわけで、キャッシュレスにおける分かりやすい効果の1つだと思う。

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▲レイキャビク中心部にあるアイスランドで一番高いハットルグリムス教会と、"ヴィンランド"探検で知られるレイフ・エリクソンの像

NFC Payの前段階にあたるIC対応で苦戦

残念ながら、日本ではまだ欧米やアジアの一部地域のようにクレジットカードのインフラが普及しておらず、使える場所は限られている。

中国におけるTour Passのような仕組みもないため、最近流行のスマホ(アプリ)決済を利用するには、いったん現金を経由してチャージする必要がある。つまり現地通貨をダイレクトに日本国内で支払いに充てる方法が非常に限られるということだ。

最近でこそ「Welcome Suica」の登場によってクレジットカードで残高チャージ可能なSuicaが流通し始めているが(正確には「クレジットカードで残高を含めてカードを購入できる」)、購入可能な窓口は非常に限られており、その意味での汎用性はまだ低い。

インバウンドの文脈でキャッシュレスを考えるなら、まずはクレジットカードのインフラが整備されるのが利便性のうえで好ましいと筆者は考える。

スマホ(アプリ)決済の世界でクロスボーダーで国境を越えた決済を実現している事例はまだ少なく、世界的にみてもこの種の決済は「自国内の閉じた環境向け」というのが一般的。ゆえに現時点でクロスボーダー決済が標準機能として提供されている国際ブランドのクレジットカードやデビットカードを使わないという選択肢はなく、観光立国を考えるうえで欠かせないと判断するからだ。

大手チェーンでのクレジットカード対応は進んでいるとはいえ、まだまだインバウンド対応としては不十分なのが実態だ。特に日本は2020年3月に「IC対応義務化」を控えており、コンビニではファミリーマートなど大手が対応を急いでいる。

大手は経済産業省や業界からの目もあり対応が進むと思われるが、中小を含む多くの小売店では2020年以降も当面はIC未対応の状況が続くと予想される。これは米国でも同様で、EMVCoの報告によれば施行から4年が経過した現時点でなお6割程度であり、欧州の9割超の水準と比べても低い。

IC対応が進まないと"タッチ決済"の普及も進まない

IC対応が進まないと何が不味いのかという部分だが、セキュリティ対策が甘いという問題のほか、"タッチで決済"の「NFC Pay」の普及が進まないことが大きい。クレジットカードにアンテナを搭載したり、NFC対応スマートフォンを使ってタッチで支払いを行える非接触決済は非常に便利だが、仕組みとしてはIC対応の延長線上にあり、小売店における決済端末のNFC対応はオプション的扱いとなっている。

日本の場合、Apple Payの実装がFeliCaをベースとしたインフラに則っていたため、諸外国のようにNFC Payが普及する機会を逃してしまっている。また、本稿執筆時点でVisaがApple Pay対応を表明しておらず、Visaカードを利用できない問題が続いている。Visaは東京五輪の公式スポンサーであり、過去の五輪でも現地のタッチ決済インフラ普及を推進してきたほか、国内ではVisaカードを扱う三井住友カードを筆頭に国内発行のクレジットカードやデビットカードにICとNFC搭載を進めている。その一方で起爆剤の1つとなりそうなApple Payへの対応は拒否しているわけで、せっかくの取り組みがかみ合っていないのが現状だ。

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▲セミセルフレジ導入で話題となった「すき家」でもNFC Payで支払えるようになっている

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▲中には餃子の王将のようにNFC Pay対応がうたわれながらも、写真のように店舗によっては利用不可にされている

次のターゲットは2025年の大阪万博

前述のようにVisaがスポンサードしていることもあり、東京五輪は「NFC Pay」を中心としたインフラ整備で重要な役割を果たすと考えていたが、現実はそう甘くないようだ。大手でのクレジットカードのIC対応はかろうじて進むものの、NFC Payにまで踏み込んだ投資は次のサイクルを待たざるを得ず、おそらく2020年半ばの東京五輪の時期になっても利用可能な場所は現状とそう大差ない状況に落ち着く。

最近各所を取材して出てくるのは、決済に関して関係者らは東京五輪に向けたインフラ整備はすでに諦めており、次は2025年に開催される大阪万博を次のターゲットにしているという。大阪は鉄道駅でもNFC Pay対応店舗が多数あるなど東京と比較しても進んでいる印象があるが、この2025年を対外アピールの場として、さらなるインフラ整備を行っていくわけだ。

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▲2025年に万博が開かれる予定の大阪では、急ピッチでさまざまなインフラ整備が進んでいる

関連プロジェクトは目白押しであり、先日発表されて話題になった大阪メトロでの顔認証ゲートもその1つ。このほかにも水面下で2025年をターゲットにしたプロジェクトが推進されており、そう遠くないタイミングで公表されることになるだろう。

このほか、「2025年」が明記されて表面化しているプロジェクトとしては「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」がある。コンビニ商品すべてRFIDタグを付与して流通から販売までをインテリジェント化して、流通改革を行うというのがその趣旨で、会計時の自動チェックアウトから食品の安全性管理まで、一般客にもメリットが多い仕組みといえる。

ただ、RFIDタグが高止まりした現状で、その貼付コストや管理方法、どこが中間コストを負担するなどの問題はいまだ解決しておらず、実現にあたってかなり苦戦しているという情報は漏れ聞こえてきている。プロジェクト名の由来は「単価が高い電子タグを1000億枚も用意すれば、その単価は下がっていくだろう」という鶏と卵にも例えられそうな発想からきており、あと5年にまで迫った現状でどこまでできるか経過が楽しみだ。

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▲大阪メトロで12月10日から実証実験が始まる顔認証ゲートもその1つ

もう1つ、直近で話題となったのが[共同通信が報じた「JR東日本がタッチレス改札を導入」という記事だ。現状でカードや切符の形で通過している駅の改札を、ハンズフリーで通過できるようにする仕組みで、JR東日本によれば「方式や導入時期を含めて未定」としているものの、共同通信のいうように「タッチレスゲートを導入する」という目標は定まっているという。

これは同社が今年2019年夏に発表している「グループ経営ビジョン『変革2027』」で触れたもので、2027年をターゲットに実現しようとしている取り組みの1つだ。改札の更新サイクルを考えれば、次の導入時期は2023年から2024年の付近であり、時期的にはちょうど大阪万博の2025年に間に合う形だ。実際にどの程度拡大するかは不明だが、技術デモストレーションを兼ねてアピールすることを検討しているのかもしれない。

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▲JR東日本はグループ経営ビジョン「変革2027」の中でタッチレスゲート導入に言及
 
 

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