「2位でもいい」次世代スパコン「富岳」の第一筐体が理研に向けて出荷:旅人目線のデジタルレポ 中山智

省電力なら世界一! 使い勝手の良さが次世代スパコン「富岳」の魅力

中山智 (Satoru Nakayama)
中山智 (Satoru Nakayama), @yenma
2019年12月4日, 午後 12:00 in science
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旅人ITライター中山です。蓮舫議員に「2位じゃダメなんでしょうか?」と言われたスーパーコンピューター「京」の運用が終了し、次世代モデルとして「富岳」が計画されています。この富岳を構成するマシンが、12月2日に製造を担当している富士通ITプロダクツから出荷されるということで、同社の工場がある石川県かほく市へ行ってきました。現地では出荷式の前に、富岳についてのレクチャーと工場見学も開催。富岳に搭載されるプロセッサーは、富士通が開発した「A64FX」で、Arm命令セットアーキテクチャーを採用。プロセルルールは7nmでコア数は48(+OS用4コア)となっています。京で使われていたプロセッサーは45nmでコア数は8なので、プロセッサーだけでも相当な進化です。

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▲工場でメインボードに「A64FX」を取り付け作業している様子

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▲「A64FX」と京に搭載されていたプロセッサーの比較

富岳はこの高性能な「A64FX」を高速通信可能な「TofuインターコネクトD)」で接続。そのため「A64FX」にはTofuインターコネクトD用の通信機能やメモリー(HBM2×4枚)、PCIeコントローラーといいった機能も1チップに集約されています。

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▲「A64FX」はCPUだけでなくメモリーや通信機能も集約

この「A64FX」を1枚のメインボードに2つ搭載し、さらに1つのラックに192枚のメインボードをセットします。つまり1つのラックに384個のプロセッサーが搭載されているわけです。ちなみに富岳は「A64FX」を約15万個接続して構成されるシステムなので、このラックが約400台組み合わさることになります。

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▲1つのラックに192枚のメインボードがセットされる

これだけのシステムなので、今回も「2位じゃダメで世界一を目指す」のかというと、実は違います。富岳は「性能競争が目的ではない」とし、使い勝手のよいスーパーコンピューターを目指しています。たとえばOSには一般的な米Redhat Linuxを採用。さらに低消費電力で運用でき、富岳のプロトタイプはスーパーコンピューターの消費電力性能を競うGreen500で、世界1位を獲得しています。つまり計算スピードこそ世界一ではないものの、計算効率では世界一というわけです。

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▲Green500では世界一の省電力性能を獲得

実際スーパーコンピューターの本当の目的は、コンテストで1位になるのではなく、コンピューターシミュレーションで創薬や災害予想など、研究開発や製造、社会インフラに活用すること。そのため計算速度だけに特化して使いにくいモデルよりも、使いやすくて電力消費などコストパフォーマンスが高いモデルのほうが社会的意義は大きいのです。その点からすると、10年前に「世界一になる理由は何があるんでしょうか? 2位じゃダメなんでしょうか?」と指摘した蓮舫議員は、あながち間違ったことを言っていたわけではなかったのかもしれません(とはいえ、当時の状況ではやはり的を外れた意見だったとは思いますが)。

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▲出荷用に梱包された富岳の第一筐体

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▲第一筐体が神戸の理研に向けて出荷されていった

石川県かほく市の富士通ITプロダクツから出荷された富岳の第一筐体は、神戸市の理化学研究所計算科学研究センターに向けて出発。今後半年をかけて約400台が理化学研究所に出荷され2020年末までに再評価試験を行うとのことで、本格的な運用は2021年ころになりそう。使い勝手の良さで「世界一」を目指す富岳の活躍に期待したいところです。
 
 

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