LG G8X ThinQカメラレビュー:遊べる「可変歪み補正」、超広角を先駆したノウハウが結集

またはLGは如何にして「スマホ業界のセガ」となっているか

橋本 新義(Shingi Hashimoto)
橋本 新義(Shingi Hashimoto)
2019年12月7日, 午前 08:00 in smartphone
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LG G8X ThinQ12月6日にソフトバンクから発売となった、LGエレクトロニクス製スマートフォン『LG G8X ThinQ』(901LG)。大手キャリアのハイエンド級Androidスマホとしては驚きの2画面ケース付きで5万5440円(税込)という価格などから、一躍2019年冬の注目機となっているモデルです。

「ケースと合体させることで2画面スマホ」となることが特徴の本機ですが、実はそれ以外でも、ヘビーユーザーにとっては唯一無二とも呼べる特徴を備えたモデルでもあります。本記事の前編となる本体のみを評価したレビューでは、実は1画面(=ケースを外した)状態ではカメラの飛び出しがなく、さらに画面側も端までフラットな、昨今では奇跡とも呼べる「表裏とも平たいスマホ」である点などを紹介しました。


そしてこのモデル、実はリアカメラに関しても、ライバル製品にはない、ヘビーユーザーと入門者に"刺さる"特徴があるのです。LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
▲ほぼ同じ位置から撮影した東京の夜景。標準カメラ(1枚目)では縦長でやっと入る屋上が、超広角(2枚目)では横位置でまるまるカバーできます。超広角ゆえの強烈なパースもポイント


それは超広角カメラ。iPhone 11シリーズの搭載により話題となっている機能ですが、実は本機は公称画角136度という、ライバルを上回るほどの広い範囲が撮影できます。これは(乱暴ですが)35mm換算とすると、9~10mmという驚くべき値。加えて、超広角カメラにつきものの「歪み補正」を段階的に変更できるという特徴を(今回も)備えているのです。

ここで「今回も」と紹介したのは、実はLG製スマホはこうした機能を以前より搭載していたため......というより、昨今の超広角カメラモジュールをスマホに搭載する流れを作ったメーカーこそがLG、と呼べるほど超広角のトレンドを先取りしていたためです。

具体的にはワールドワイドでは2016年2月に発表された『LG G5』で、日本向けモデルでも同年11月に発売された『isai Beat』で搭載しており、その画角も本機とほぼ同じ135度という広いもの。以降LGの旗艦級モデルでは途切れることなく継承されています(時期によっては画角が狭くなったりもしましたが)。つまり本機は、LGが3年半もの間積んできた超広角スマホのノウハウが継承されたモデルでもあるというわけです。

しかし非常に先行していたにも関わらず、せっかく超広角カメラが注目されるようになったこのタイミングに、そうした点をほとんど前に出さないという「スマホ業界のセガ」っぷりが良くも悪くもLGで、個人的には非常にもどかしいところ。

2画面に関する特徴紹介を優先したいのはわかりますが、これは実にもったいないと感じる次第。ですので今回も、本体レビューに続いて2画面の話やフロントカメラ(こちらもなにげに凄い仕様ですが)には触れず、背面(メイン)側のカメラを中心に紹介します。

なお2画面状態でのレビューは、山根博士や石野純也氏、石井徹氏や金子麟太郎氏がまとめてくださっており、石井氏は2画面状態でのカメラ撮影に関して、金子氏の記事はフロントカメラに関しても紹介しています。ぜひこちらの記事もご覧ください。


公称9mm相当の超広角を実現する歪み補正コントロール
オフ時では対角魚眼的な効果も


LG G8X ThinQ
▲撮影位置を合わせた状態での、歪み補正をオンにした状態の超広角(左​​​​​​)とオフにした状態(右)。オフにすると周囲が非常に丸く歪むと同時に、さらに広い範囲が収まっている点がわかります


ということで、まずは超広角カメラから紹介しましょう。現状ではまさにトレンドとなりつつある点から搭載自体は珍しくなくなりつつある超広角ですが、本機の特徴は"広角度"が強い点です。

発表時のリリースなどをよく見ると、さりげなく「画角136度」と書かれていますが、これは(乱暴な計算ですが)35mm換算にすると9~10mmに匹敵するほどの値です。なお、先にお断りしておきますが、本来は9mmレンズやライバル機種を用意しての画角測定などをしたかったところ、今回は用意できませんでした(ごめんなさい)。

そして筆者には、この広角っぷり以上に刺さった点がありました。それは「超広角において、歪み補正を段階的にコントロールできる」点です。
ここで言う「歪み補正」とは、超広角レンズに起因する周囲の歪みを補正すること。広角が非常に広いレンズの場合、そのままデータ化すると周囲が球形に歪んでしまい、一般的な用途では違和感の残る写真になってしまうため、これを防ぐための画像処理です(このあたりの詳細は中山智氏の記事をどうぞ)。





「どこが凄いのか」を解説する前に、実際の操作について触れておきましょう。上記は操作手順を記録した動画です。

実際の操作としては、標準カメラアプリのズーム機能で行います。本機カメラアプリのズーム兼レンズ切り替えはiPhone的な操作となっており、タップでプリセットされた画角が切り替わり(標準の1倍と、超広角の0.5倍がループします)、ドラッグでズームが行える......という仕様。

歪み調整が可能なのは、このズーム操作で超広角のプリセット状態(歪み補正オン)から、さらに広角側に調整した場合。つまり、タップでの超広角指定では使えないという、半ば"裏技的"な操作になるわけです。

この操作を行うと、次第に歪み補正が緩くなり、周囲の切り取られた範囲も入ってくる(=より広角となる)状態になります。ただし一方で周囲が円形に歪んでいき、いわゆる対角魚眼レンズに近い状態となります(こうした処理は原理的にやむを得ないところです。またこうした現象も出るため、隠し操作的になっているものと思われます)。



こちらは、上記の操作で実際に撮影された動画です。広角側のズーム操作によって歪み補正が段階的に可変されていく様子や、望遠側はデジタルズームながら最大8倍と、かなり積極的に行える点などが確認できます。

さて、このどこが凄いのか......という話ですが、「歪み補正の効き具合を連続的に可変できる」という点です。上述した中山氏の記事でも紹介していますが、たとえばiPhone 11系では歪み補正は常時有効となっており、またXperia 1などでは有効と無効の切り替え処理となっています。

つまり本機のように、「歪み補正までをズームの一環と考え、効き具合を調整できる」という仕様はかなりユニークなのです。そしてこれは、超広角レンズにある程度慣れたユーザーや写真家にとっては、非常に刺さる機能となり得るポイントでもあります。

というのも写真表現の観点から見ると、こうした超広角レンズの周囲の歪みはテクニックの一環として使えるため。たとえば高層ビルを撮影する際に付近を歩いている人物の姿をわざと引き延ばし、デフォルメによりビルの高さを強調するように見せる表現などは定番的です。

LG G8X ThinQ
▲超広角+歪み補正オンでの撮影。下にいる人物に強烈なパースが掛かっていますが、歪み補正を掛けると左右方向にも歪みます。こうした特徴を表現として使えるのは、写真表現に慣れた人にとってはメリットの一つとなるわけです


またこうした写真表現のみならず、当然ですが「周囲が歪んでもギリギリ端にある被写体を収めたい」といった際にも使える機能となります。

なお、本機標準アプリの『ギャラリー』は、35mm換算での焦点距離が表示される仕様です。しかし試用機では、歪みを補正した状態でも最大広角(歪み補正オフ)時でも「13mm」と表示されました。おそらく実際は、歪み補正有効時が13mmで、歪み補正をオフにするとさらに広がる、というパターンのはずです。

超広角以外の機能も相応の水準
高度HDRやAIオートも「やり過ぎ感薄めで効く」


LG G8X ThinQ
▲イルミネーションを露出補正せずともそつなく綺麗に撮影できるようになったのは、ここ2~3年のスマホカメラが大きく進歩したポイント。いわゆる「高度HDR」系処理に対応するモデルならではです


ここまでは超広角についてのみ紹介してきましたが、基本的なカメラの機能や画質に関しても紹介しましょう(といっても画質に関しては当然官能評価となるため、主観が大きく入りますが)。

なお、背面側のカメラモジュールの構成は、メインが1200万画素、超広角が1300万画素のデュアルカメラです。イメージセンサーに関してはEngadget中国版のレビュー内で言及されており、メイン(広角)用がソニー『IMX363』、超広角用がサムスン『S5K3M3』とのこと。

とくにメインモジュールに関しては、価格的に見ても相応のモデルが使われていると言えそうです(該当記事で触れられているように、いまやベストなセンサーというわけではありませんが)。

基本的なカメラ機能とアプリの作りに関しては、イマドキのいわゆる『AI(被写体判定)+高度HDR』をベースとした世代。機能的にはあまり大きくはアピールしていないものの、よい意味でそつなくまとめている......という印象です。

LG G8X ThinQ
▲スポットライトの当たった看板でもHDRオンならばこの通り。店内や周囲といった明暗差の激しい箇所でもそつなく抑えます


高度HDRという点に関しては、筆者がいくつかの機種で傾向を見ている"磯丸ベンチ"(居酒屋「磯丸水産」の中でもとくにスポットライトが明るい店舗を夜に撮影し、HDRの効き具合をチェックするテスト)などでも試してみました。

結果からすると、非常に輝度の高いスポットライト看板やイルミネーションへの耐性に関しても、白飛びなどは相応に抑えられている印象です。
ただしデフォルトでの露出の取り方が「白飛び防止の優先度合が高い」タイプではなく、スポットライト直下などでは露出補正などが必要になることもありました(このあたりはさすがに、HDR関連を含めた露出の取り方が非常に強い機種――iPhone 11系やPixel 4系ほどではない印象です)。


LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
▲先ほどの看板で露出を明るくした状態でのテスト(2枚目は1枚目の左下付近を、ほぼ等倍でトリミングしたカット)。元写真ではISO100ですが、このぐらいのノイズは残しています。なおノイズ低減を重視する場合は、夜景モード(マルチショットノイズ低減を使うタイプです)もあります


また、いい意味でLG製のカメラらしいのが、AIモードによる画質調整(コントラストやホワイトバランス調整)が比較的控えめな点。たとえばHDRオン時の暗所ノイズなどは、あまり低減をせずに残します。このあたりに関して手慣れているファーウェイ製の上位モデルなどと比べると一見して地味ですが、裏を返せばやり過ぎ感の薄い傾向となる、というメリットともなります。

LG G8X ThinQ
▲AIオート(アプリ内では『AIカメラ』)は、「シーンの自動調整」という設定項目名となります。慣れないうちはわかりにくいかもしれません


AIオートに関しては、カメラアプリの設定にある「シーンの自動調整」という項目で動作の設定が切り替えられますが、いい意味で控えめなことから、基本的には有効にしておいて良い設定と感じました。

LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
▲超広角(歪み補正オン)から標準、最大望遠の8倍、そして最大望遠時のほぼ等倍ピクセル切り出し。いわゆる超解像的処理も入っており、ソフトウェアでの拡大ながら荒れが少ないのがポイントです


そして望遠側に関しては(望遠カメラが非搭載のため)ソフトウェアによる拡大のみ。にもかかわらず8倍まで拡大可能と、かなり大胆なのもポイントです。いわゆる超解像処理もなされており、たとえば文字やイラストを最大ズームで拡大しても、相応に粗を感じさせない仕上がりとなります(もちろん、苦手な被写体などではいわゆる「絵の具で塗った感」が出てきますが)。

また個人的にちょっと感動したのが、被写体をタップしてフォーカスと露出を指定した際、露出補正のスライダーと合わせてMF(マニュアルフォーカス)のボタンが表示されること。これを押すことでスライダーがフォーカス調整に変更されるのです。

スマホのカメラにある程度慣れたユーザーの場合、被写体をタップしてフォーカスを合わせる際、「被写体の形状などによってはなかなかピントが合ってくれない」といった状態となり、ポイントをずらしながら何回もフォーカスを合わせた......という経験は1度や2度ではなく遭遇したことかと思います。

そうした際に非常に気が利くのがこの機能。ピントがずれていると感じたら、即座にマニュアルフォーカスに設定して、手動になりますがピントのフォローが即座にできる、というわけ。これはとくに、マクロ的な撮影を多くするユーザーにとっては有り難いと思います。

LG G8X ThinQ
▲標準カメラアプリの撮影モードはダウンロードによって拡張が可能。モード選択から「その他」を選択すれば表示されます


さらに、動画でもユニークな機能を備えます。それは2017年モデル『LG V30+』『isai V30+』で搭載された『ポイントズーム』と名付けられた機能です。
これは画面中央のみならず、任意の場所に対してズームができ、さらに業務用カメラのように「一定の速度でズームし続ける」動きが可能になるモード。プロの動画で見られるような滑らかなズーム処理が使えるようになります。

なおこの機能を使うためには、カメラアプリからダウンロードにより、モードを追加しなければなりません(そう、本機のカメラアプリはダウンロードにより撮影モードが増やせるのです)。
ポイントズームを使うためには、『Cine Video』と呼ばれるモードを導入すればOK。なおこのモードは、もともと「動画にリアルタイムで映画のようなフィルタ効果を適用できる」という目的がメインのため、様々なフィルタ効果も楽しめます。


LG G8X ThinQ
LG G8X ThinQ
▲前編でも紹介しましたが、レンズ(カメラ)部の指紋は慣れるまで本機の弱点となるところ。指紋の付き方によっては1枚目のようにフレアの元となるため、可能な限りレンズの確認は忘れずに


このように、高度HDRや撮影モードという点では2019年末の高級モデルとして相応――と呼べそうな本機ですが、撮影に関してはちょっとした注意点があります。それは前編でも触れたように、「本体の背面を1枚のガラスが全面的に覆う設計のため、知らぬ間に指紋がつきやすい」点。

裏面が完全にフラットという点は本機の(人にとってはこれだけで選ぶ価値がある、非常に大きな)美点ですが、反面、本体のみで使っている場合は指の感触でカメラレンズ部が判別できず、慣れないうちは使っているうちにレンズ部に指紋が付いている、という事態もあります。

個人的にも、慣れないうちは撮影した際に派手なフレアが出ており、「ああ、指紋だ......」と拭き取ることが多くありました。

LG G8X ThinQ
▲AIオートオンで茶色い系の食べ物を撮ると、ほどよい色温度補正で美味しそうに仕上げてくれます。唐揚げや焼き鳥に対する感じの良さはかなりのもの


このようにG8X ThinQのカメラは、細かなところを見ていくと便利な機能やユニークなモードがあちこちに散見される、非常に面白い存在でもあります。

筆者としては、さらに前編で紹介したように、本体が両面ともにフラットである点や高音質DACを搭載したヘッドホン端子(ここも「スマホ業界のセガ」度が高いポイント)、さらにFeliCa+おサイフケータイ、フルセグ+録画対応のテレビチューナーと防水、防じん仕様が入った「日本向け仕様全部入り」である点なども勘案すると、2画面という点を抜きにしても非常に楽しめ、また注目できるモデルである、と(セガファン的な熱量で)お伝えしたい箇所です。

LG G8X ThinQ
▲今回は紹介できませんでしたが、実は動画機能も充実。しっかりと4K解像度/60fpsに対応していたり、ASMR動画用高感度マイクモード(小さな音でも集音できるようにマイクのゲインを上げる)などを備えます


とくに本機が大注目される直接的要因となった価格の手頃さも勘案すると、この価格でこれだけ面白い超広角が使え、撮影後に画像加工する際の処理速度も悪くない(このあたりはさすがのSnapdragon 855搭載機です)という本機は、非常に面白い存在――と推したいところ。

これらのカメラ機能が刺さったヘビーユーザーには、ぜひとも一度店頭などで本機を試して欲しいところ。また本機を既に購入された方は、ぜひとも超広角カメラなどでも遊んでいただきたいと願います。

LG G8X ThinQ Cameras▲もちろん他の方が伝えるように、2画面状態でも非常に楽しいモデルです。なお画面は「シンキュー(ThinQの公式表記)にて真紅(しんく)ぅと陳宮(ちんきゅう)」という筆者渾身のギャグ第2弾

 
 

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