スマホ販売規制で生まれたのは競争ではなく「停滞」。法改正後の販売現場の声を聞いた

迎 悟(Satoru Mukai)
迎 悟(Satoru Mukai), @kuropon
2020年01月15日, 午後 07:00 in smartphone
0シェア
FacebookTwitter
携帯販売店の現状
2019年10月に携帯電話に関わる法律「電気通信事業法」の一部が改正されました。

改正内容の柱はいくつかありますが、消費者視点で大きな影響があったのは「電話機本体の割引上限は2万円まで」という制限でしょう。

電気通信事業法の改正と同じタイミングで消費税率は10%が増税されました。携帯電話業界としては「iPhone 11シリーズ」の発売直後でもあり、増税を前にした9月末までは駆け込みでの買い換えが多かったとも聞いています。

法改正後は「最新モデルがのりかえ(MNP)で一括1円」のような、携帯電話販売店の店頭で見かけた特価の掲示は激減しました。

先にも書いたように、iPhoneのモデルチェンジ時期と法改正がほぼ被ったことで、筆者の周りでも「新しいモデルを安く買い換えるつもりだったので乗り換えを考えていた」と、買い換えを予定していた人から予定が狂った事を嘆く声もありました。

しかし、消費者として「買い替えの予定が狂った」ということは、販売店の状況も変わったはず。
そこで法改正から3か月が経過した現在の様子を実際の店舗で聞いてきました。

■客足は減り、台数は半減


携帯販売店の現状

「お客様の数は減って、昨年対比で半分くらいの台数しか売れてません」

いくつかの店舗で話を聞いてまわると、客足の減少と販売台数減については同じような回答を得ることができました。

客数が少ない理由を販売店のスタッフはこう語ります。

「新しいiPhoneはちゃんと売れています。けど、この時期に安くなる旧モデルが安くできないので、目玉商品に欠けるんです。最新機種は10万円を超えることも珍しくないので、旧モデルとはいえ今使っているものよりは新しく、それでいて安く買えるからと支持されていたのに、それがないので」


2019年モデルのiPhoneは安価なiPhone 11こそ登場したものの、それでも価格は税込で8万円台後半からと決して安くはない。iPhoneに限らず、注目を集める機種は10万円を超えることも珍しくありません。

一方で、法改正後も値引き販売が認められている場合もあります。その代表例が在庫処分となる機種。たとえば発売から3年以上が経過したiPhone 7は、多くの店舗で安価に販売されています。しかし、前述のスタッフは旧モデルを求める客足も減っているとこぼします。

「最新機種の価格を見て、高価だと感じた場合に大幅に値下がった機種を提案しご購入を決めるお客様は本当に多かった。これは他社の売場でも同じで、最新機種が高いから"のりかえ"で旧モデルが買えるならと他の会社のコーナーへ立ち寄るお客様がいたのに、この狭い店内でお客様があっちにこっちにと立ち寄ることがなくなってしまった」


そう聞いてみると、筆者自身も一人のユーザーとして、買い換えの際には少しでも安価に買いたいがために、それもiPhoneやXperiaなど複数の事業者で同じ機種が取り扱われている場合、のりかえも視野に入れながら各社のキャンペーンを比べ、大幅な割引の恩恵を受けて買っていたため、スタッフから聞いた「売場が空いている理由」にも納得もいきます。

携帯販売店の現状▲値引き販売が難しくなったため、店頭には「頭金0円」(分割払い時の店舗の上乗せ分なし)のポップが踊る

もちろん、9月末までに「10月から値引きがなくなる。値上げします。」といった広告やPOPは多く見かけ、ニュースなどでもスマートフォン本体が値上げされるといった報道がなされていたため、法改正直後は「値上がった」と思い込んだユーザーが、携帯電話売場から遠のいている可能性は十分に考えられるでしょう。

「法改正以降、前年の半分しか売れていない。のりかえの大きな割引がなくなったので、その分が減るのは仕方ない。けれど、元々割引がほぼなかった機種変更なども減ってしまった」

「一括0円や高額なキャッシュバックは、それに該当しないお客様でも「なんだろう」とお店やコーナーに足を向けるきっかけになっていた。すでに"実質"のようなわかりづらい仕組みはお客様も興味を示しづらく、ハッキリと大きな割引があることが興味を引く要素だったのかもしれない」


"他社からののりかえだけが安くなる"というのは、多くのユーザーも知っていることでしょう。

それでも旧モデルが安価に購入できる事実が伝われば、「機種変更でも旧モデルならば安く買えるかもしれない他社へのりかえ、または今のまま機種変更で、本体代以外も含めおトクにならないか聞きに行こう」という、買い換えの動機作りにはなったはず。

実際、とある販売店や事業者で、大幅な割引が見込めるのりかえでの販売は、全体の販売数における2割にも満たない数しか全国で出ていないという話を聞いたこともあります。

割引の抑止によって、通信料やサービス内容を比較した健全な競争を狙った今回の法改正だが、大幅な割引に見慣れてしまったユーザーからすれば「安くないから買い換えられない」「安くならないなら、古くなった機種でも使えるからまだ買い換えない」という、買い換えない理由を強くするだけになってしまったように、今回いくつかの店舗で話を聞いて筆者は感じました。

もちろん、通信料による競走は昨年11月に正式サービスとして参入してくるはずだった楽天モバイルの料金プランを見てからという考えもあったはずです。

しかし、新規参入を予定してた楽天モバイルの料金はなかなか発表されず、あくまでも大手三社は互いの料金を意識した新プランを提供しているに過ぎない現状です。本体代の大幅値引きに匹敵するインパクトは市場にもたらされることはありませんでした。

今回の法改正が狙った「健全な競走」が果たして成り立つのか。少なくとも改正から間もなく3か月が経過した現段階では「競走」ではなく「停滞」だと筆者は感じています。

 

TechCrunch 注目記事新型コロナのソーシャルディスタンスを支援するビデオチャットアプリ8選

 

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

 

関連キーワード: Android, au, docomo, iPhone, KDDI, marketanalysis, mobile, NTTdocomo, politics, Rakuten, smartphone, SoftBank, Ymobile
0シェア
FacebookTwitter

Sponsored Contents