アップルらハイテク企業がEU規制当局に特許トロール抑止を要請。「技術革新を阻害する」と警告

米国よりEUの方が特許トロールに甘いようです

Kiyoshi Tane
Kiyoshi Tane
2020年01月18日, 午前 07:05 in antitrust
128シェア
92628888
Getty Images

自らは研究開発や製品の製造・販売を行わなず、多数の特許を買い集め、それらを侵害している可能性のある企業から賠償金を得ようとする個人や団体を「パテントトロール」(または特許トロール)と呼びます。彼らの存在はハイテク企業にとって悩みの種となっています。

そうしたパテントトロールが技術革新を妨げているとして、アップルやマイクロソフト、BMWなど複数の多国籍企業が賠償金目当ての特許取得を規制するよう、EUの規制当局に求める書簡を提出したと報じられています。Financial Timesによると、アップルを含む35社と4つの業界団体は、パテントトロールがイノベーションを抑制していると警告する書簡を欧州委員会に送ったとのこと。産業政策担当のティエリー・ブルトン委員に、特許保有者が「システムを玩具にする」ことを阻止するための厳しい規則を策定するよう求めたと報じられています。

さらに過去に単一の特許が侵害されたと認定されたさい、裁判所が製品販売に対する全面的な禁止を命じたことにも言及。その上でEUの裁判所に、より柔軟なアプローチを取るように求めたとのことです。

この件を補足しておくと、米国では特許侵害が認定されたとしても、原告にパテントトロールの特性が備わっていた場合は「損害賠償のみを認め、差止請求は却下する」という判例があるからです。

具体的には、2006年に米MerExchangeが米eBayを訴えた一件です。この事件はインターネット・オークションの開発企業であるMerExchangeがeBayの「Buy It Now」(オークションに参加せず、固定価格ですぐに落札できる機能)を、自社が保有する3つの特許を侵害しているとして訴えたもの。それ以前には「特許侵害が認められた場合は、自動的に差止命令を発令しなければならない」との原則論があり、一度はそれに従った判決(控訴審)が下されました。

しかし米最高裁は、差止認定のためには4つの要件(耐えがたい侵害/損害賠償だけでは救済が不十分/原告・被告双方の均衡を考慮する/差止を行っても公益が損なわれない)を満たす必要があるとして控訴審の判決を破棄し、地裁に差し戻す評決を下しました。これ以降、特許取得後にそれを活用せず、差止命令をちらつかせて巨額の損害賠償を狙うトロール行為を抑止する機運が高まった経緯があります。

今回の件に先立って、アップルはインテルと共同で米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ(ソフトバンクグループ傘下)が特許権を買い集め、ハイテク企業に訴訟を起こしている行為を反トラスト法違反として米連邦地裁に提訴していました

米テキサス州東部の地方裁判所はパテントトロールに有利な判決を下す傾向があることで知られており、アップルが同地区にあった直営店を閉鎖したさいも、訴訟対策ではないかとの推測もありました。そしてヨーロッパもまた、製品の輸入差止命令を狙う特許ゴロにとっては都合のいい場所というわけです。

アップルほか書簡に署名した企業らは、特許侵害の訴えに対する「比例的な」(過剰ではない)対応を義務づける規則の策定もブルトン氏に求めているとのことです。もちろん知的財産権はいかなる個人や企業であれ尊重すべきですが、ハイテク企業のイノベーションや顧客の便宜を損ねない範囲でバランスを取ることが望まれそうです。

TechCrunch 注目記事「新型コロナの影響で自宅待機中のTechCrunchスタッフを熱中させているもの

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

TechCrunch Japanへの広告掲載についてのお問い合わせはad-sales@oath.com まで。媒体概要はメディアガイドをご覧ください。

関連キーワード: antitrust, apple, eu, lawsuit, microsoft, patent, patenttroll
128シェア

Sponsored Contents