「液体のり」主成分PVAにがん放射線治療の効果向上機能。腫瘍細胞をほぼ根治レベルまで破壊

PVAは安価なのも特徴

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi
2020年01月23日, 午後 12:00 in Medicine
399シェア
kenji ando
1月22日付けの米国学術誌Science Advancesに、文房具の"液体のり"が、放射線によるがん治療の一種、ホウ素中性子補足療法(BNCT)の効果を劇的に高める作用があるとする論文が掲載されました。論文を執筆した東京工業大の研究チームによると、マウスを使った実験にいおいて、大腸に発生していたがんがこの方法によってほぼ消失したとのこと。

写真:ハフポスト日本版・安藤健二ホウ素中性子療法(BNCT)では、悪性の腫瘍細胞にホウ素を取り込み、そこに放射線を当てることで腫瘍を選択的に破壊します。まだ臨床研究の段階にあるこの治療法ですが、効果的にがん細胞のみを破壊することが可能なため、正常な細胞とがん細胞が混在する悪性な脳腫瘍などでの効果が期待されます。

通常のBNCTでは、効果を発揮するホウ素化合物ボロノフェニルアラニン(BPA)ががん細胞から排出されやすいのが課題とされていました。

研究チームはBPAに液体のりの成分ポリビニルアルコール(PVA)を結合させたPVA-BPAを作成したところ、この物質が細胞質でなくエンドソーム・リソソームとよばれる細胞内小器官内に取り込まれ、結果として細胞内に長時間滞留することを発見しました。そしてこの状態を作り出したマウスの皮下腫瘍モデルに熱中性子線を照射したところ、強力な抗腫瘍効果を発揮し、「ほぼ根治に近いレベル」まで腫瘍を破壊したとのこと。

液体のりの成分であるPVAについては、2019年5月にも科学誌Natureに造血幹細胞の増幅効果があるとする論文が掲載され話題となったばかり。こちらは東京大学や米スタンフォード大学などで構成されるチームによる研究で、マウスの造血幹細胞を培養する液体にPVAを使用することで、細胞の老化を抑制しつつ増幅する効果を発見したとする内容でした。
実験はマウスによるものですが、研究チームは特に小児の血液疾患において安全な造血幹細胞移植が可能になると述べていました。

なお、いずれの研究も液体のりを直接使ったのではなく、液体のりの主成分でもあるPVAという高分子材料を用いているのが重要なポイントです。PVAは生体適合性の高さから、多様な医薬品に添加物として利用されている物質であり、これらの研究もそれほど突飛な発想ではないかもしれません。

おそらくは研究を広く知らしめるため、研究チームがプレスリリースなどで"PVA"でなく"液体のり"というワードを使ったと考えられますが、その効果は研究と同じぐらいかそれ以上に絶大だったと言えそうです。

 

広告掲載についてのお問い合わせはad-sales@oath.com までお知らせください。各種データなどはこちらのメディアガイドをあわせてご覧ください。

 

関連キーワード: BNCT, cancer, Medicine, PVA, PVA-BPA, radiotherapy, Tokyo Institute of Technology
399シェア

Sponsored Contents