実質『自動運転』なバス、国内初の公道での定期運行を4月開始。茨城県境町で

決められたルートを低速走行「横のエレベーター」

石井徹(TORU ISHII)
石井徹(TORU ISHII), @ishiit_aroka
2020年01月27日, 午後 12:16 in autonomous
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SB 自動運転バス
茨城県境町は、自動運転バスの定時・定路線運行を4月をめどに開始すると発表しました。自治体による公道でのバスの運行としては、国内初となるとしています。

走行区間は境町の観光拠点「河岸の駅さかい」から銀行、小学校、郵便局、スーパーマーケット、医療センターなどを結ぶ約5km。運賃無料のシャトルバスとして1日に3〜4往復程度を走行します。

ソフトバンク子会社のSBドライブが運行システムを提供し、販売代理店のマクニカが車両整備などの技術を支援します。車両はフランスNavya社製の11人乗りの中型自動運転バス「NAVYA ARMA」を採用。境町が3台を購入し、日本仕様に準拠する改造を行って投入します。新車の納入は7月になるため、それまではSBドライブが所有する同型車を利用して運行します。

自動運転バス

■2人が乗務。時速19kmに制限

自動運転バスは境町内でオペレーターが管制し、バスには当初、ドライバーと保安要員兼説明員の2人が搭乗するという、1台あたり3人のスタッフが付く体制で運用します。自動運転の基準ではレベル2に相当します。

自動運転レベル2は、国交省の定義では厳密には「自動運転」にあたりませんが、ドライバーの介入は原則として行わずに定期運行ルートを走行する能力をもつため、運用は 『実質的にレベル4に相当する』自動運転の技術が用いられているとしています。

自動運転バス

法令による制約として自動運転車両向けのナンバープレートを取得しているため、最大速度は時速19kmに制限されます。標識などの情報は事前に登録されるほか、経路上に設置された信号機とLTEで通信し、状態を取得する仕組みを採用しています。

ドライバーは非常時の対応のほか、現時点では自動化されていない操作を担当。具体的には路上駐車がある場合の追い越しや、車庫入れや充電の操作はドライバーが介入します。飛び出しなどの緊急回避対応は自動運転の機能にも組み込まれているため、基本的には人間が介入することはないとしています。

自動運転バス▲27日都内で開催された記者発表会にて。中央は境町の橋本正裕町長、その右隣がSBドライブの佐治友基社長

■コミュニティバスは「横のエレベーター」

境町は茨城県南部にある人口2万4000人の町。利根川を挟んで埼玉県に接し、都心まで1時間で出られる立地から、東京方面に勤務する人も多く居住しています。

一方で同町には鉄道駅は存在せず、バスも町外の駅などに向けた路線しかありません。日本の自治体の例にもれず、同町も少子高齢化の対応に迫られていますが、高齢者が免許返納後に使える交通機関がないことが大きな課題となっていました。

自動運転バス

境町の橋本正裕町長は自動運転バスを「横に動くエレベーター」とたとえて、住民が気軽に使える移動手段として投資していく考えを説明。「(お年寄りの住民が)子ども達が帰ってきたときにクルマを出して、大規模商業施設につれていってもらうというのも限界がある。自律走行バスによって課題を解決し、町民に希望をもってもらいたい」と語りました。

自動運転バス

境町はシャトルバスを運行する事業をまずは5年間、実施する予定。バス3台の購入や5年間の運用を含めた予算として5年で5.2億円をしています。この5年で5.2億円という金額は、橋本町長によれば「一般的なコミュニティバスの運行費用と同じか少し安い程度」としています。

自動運転バス▲橋本町長がSBドライブの存在を知ったのは昨年2019年12月。町議会の賛成を取り付けて実用化の発表を行うまでわずか2カ月弱だったそうです

境町は今後、駅などへと繋げる路線を展開したり、頻度を増やしたりする計画です。自動運転への規制緩和が行われれば、公道での完全自動運転での運行も検討するとしています。

また、現在は通常の路線バスとして運行されている区間についても、バス会社と協力して自動運転バスへの置き換えも検討していく方針も示しました。

自動運転バス

■自動運転バスのモデルケースに

SBドライブではこれまで50回以上の自動運転バスの実証実験を展開。同社の自動運転車管制システム「Dispatcher」には11車種の自動運転車と連携できるようになっています。

SBドライブの佐治友基社長はこうした実証実験の積み重ねに加え、国土交通省と警察庁による規制緩和によって今回の定期運行化に至ったと紹介しました。

自動運転バス

境町でのバス運行開始当初は、運行管理と乗務員をSBドライブのスタッフが派遣しますが、運行の実務については地元のバス事業者に対して権限を譲っていく方針を示しています。

また、境町での事例は国交省が自動運転バスに向けて整備した「パターン化参照モデル」の第1号とされています。このモデルは気象条件や走行ルートの特徴といった条件が似た地域で展開しやすくする仕組みで、今後他の自治体で同様のシステムを展開する時に参考となるものです。

自動運転バス

佐治社長は今後の展開について、境町以外にも3つの自治体と定期運行の検討が進んでいると言及しています。自動運転技術はまずは地域住民の足として、じわじわと浸透していくことになりそうです。

 
 
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