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2019年に大きな話題となった、QRコード決済などに代表されるスマートフォン決済。その中で抜きんでた存在となりつつあるのが、ソフトバンクグループ傘下のPayPayではないでしょうか。2020年1月16日に、PayPayは今後に向けた新しい戦略を発表したことから、今回はPayPayについて考察していきたいと思います。

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▲PayPayは2020年1月16日に発表会を実施。新たな戦略や決済額の40%相当を還元するキャンペーンなどを打ち出していた

PayPayは2018年10月のサービス開始と、「楽天Pay」「LINE Pay」などの競合と比べるとサービス開始時期は比較的遅い方でした。しかしながら2018年末に100億円を還元するという大規模なキャンペーンを実施して以降、積極的に大規模キャンペーンを展開することで、利用者を急速に拡大。2020年1月現在ではユーザー数は2300万人を超える規模に達しています。

その一方で、全国20箇所の営業拠点を設けて、大企業だけでなく中小企業に至るまで、PayPayが利用できる店舗を積極的に拡大してきました。そうした取り組みが功を奏して加盟店数は185万箇所を超え、2019年12月には単月の決済回数が1億回を超えたそうで、いかにPayPayが短期間のうちに拡大してきたかを見て取ることができるでしょう。

多数のライバルがしのぎを削るスマートフォン決済サービスの中で、ここまでPayPayが急拡大できたのには、やはり後ろ盾の存在が大きいといえます。PayPayは元々ソフトバンクとヤフーの合弁として設立された両社肝いりの事業であり、それらが持つ豊富な資金力と強力な営業網を活用できたことが、大胆なキャンペーンと加盟店拡大というPayPayの成功要因へとつながったといえるでしょう。

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▲PayPayはソフトバンクが培った営業力を生かし、大規模店だけでなく地方の中小店舗にも積極的に営業をかけ、導入を進めている

とはいえ、2019年に激化したスマートフォン決済のキャンペーン合戦を、ソフトバンクとヤフーだけで勝ち抜くのは難しかったようで、2019年5月にはソフトバンクグループがPayPayに460億円を出資し、体力を補っています。それゆえ現在PayPayはソフトバンクグループの傘下という位置付けになるのですが、実際のかじ取りは引き続きソフトバンクとヤフーが担っているといえるでしょう。

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▲キャンペーン合戦激化の影響を受けてか、2019年5月にはソフトバンクとヤフーだけでなくソフトバンクグループからも出資を受けて企業体力を補っている


「40%還元」でも旧キャンペーンに見劣り

体力勝負となったスマートフォン決済競争で頭一つ抜け出した存在となったPayPayですが、さすがにかつてのような大規模キャンペーンを繰り返すのは厳しくなってきたといえます。それは今回の発表会で打ち出された、新しいキャンペーン施策からも見て取ることができるでしょう。

PayPayが2020年2月に実施する新たなキャンペーンは、対象となる飲食店でPayPay残高による決済をすると、誰でも40%のPayPayボーナスが戻ってくるというもの。「Yahoo!プレミアム」の会員であれば50%の還元がなされるとのことです。

これまでのキャンペーンは20%の還元が主だったことから、還元率が倍となる今回のキャンペーンは非常にお得なように見えますが、過去のキャンペーンと比べるとそうでもないことが見えてきます。実際、対象となる店舗は「吉野家」「日高屋」「サーティーワンアイスクリーム」など7社の店舗のほか、キャッシュレス決済ができる日本コカ・コーラの「Coke On Pay」対応自販機に限られています。

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▲PayPayは2020年2月に40%還元キャンペーンを実施するが、その対象店舗は7つの飲食チェーン店と、日本コカ・コーラの自動販売機に限られる

また還元されるPayPayボーナスの付与額も1回当たりの上限は500円相当、期間内で1500円相当となるようです。過去のキャンペーンを振り返りますと、今回と同様に飲食店などが主な対象となっていた、2019年7月から8月にかけて実施された「PayPayランチ」キャンペーンの場合、通常のPayPayユーザーに対する1回当たりの付与額は最大1000円相当、1ヵ月当たりの合計は3万円相当までとされていましたし、対象店舗ももっと多かったのです。

今回のキャンペーンは、確かに還元率が高いという面で見ればお得ではありますが、対象店舗と還元されるPayPayボーナスの上限が大幅に減っていることから、かける予算は大幅に減少していると推測できる訳です。PayPayは2021年9月30日まで決済システム利用料を無料にする方針を打ち出しており、現在は大きな収入を得る手段が存在しないだけに、加入者がこれだけ増えた今となってはかつてのように「無条件でお得」なキャンペーンを実施するのは難しくなっているといえそうです。

金融サービスに進出

そうなると気になるのが、PayPayは今後一体何で稼ぐのか?ということ。スマートフォン決済サービスの収益化手段としては決済手数料のほか、決済データを企業のマーケティングに用いるなど、データを活用したビジネス展開などが考えられえますが、PayPayの代表取締役社長執行役員CEOである中山一郎氏は「まだ考えていない。そういうことできるほどデータが十分とは思っていない」と話しており、データの活用にはまだ本腰を入れていない様子です。

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▲PayPayの中山社長は、データの活用はまだ未知数とする一方、金融サービスへの注力を新たに打ち出している

一方で、中山氏がPayPayの新たな取り組みとして打ち出していたのが金融サービスへの進出でした。実はPayPayは2019年9月、「資金決済に関する法律」における資金移動業の登録を完了し、現金として払い出しできる「PayPay マネー」を提供するようになっています。

このことは、PayPayにチャージしたお金を決済以外にも利活用できる土台が整えられたことを意味しています。そうしたことから中山氏は、今後PayPay利用者に対してローンや投資、保険などの金融サービスを提供していくことを明らかにしているのです。

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▲PayPayはアプリ上でローンや投資などの金融サービスを提供することを明らかにしている。複数の金融機関と組んでサービス提供する、マルチパートナー戦略を取るとのことだ

決済から金融へとサービスを広げる取り組みは、既にKDDIが「au WALLET」で、LINEが「LINE Pay」で進めているものでもあります。ですがKDDIやLINEは、特定の金融機関と組むなどして自社独自の金融サービスを顧客に提供する戦略を取っているのに対し、PayPayは複数の金融機関とパートナーシップを結んで複数のサービスを提供する、マルチパートナー戦略を取るとしています。

そうしたことからPayPayは、決済手数料収入やデータの活用によるビジネスが本格的な収益化へとつながるようになるまでの間、金融機関とのパートナーシップで何らかの手数料を得る、あるいはローンの利子や投資に関する手数料などで収益化を進めていくことになるのではないかと考えられます。

LINE Payとの統合はどうなる

ですがそれはあくまで現時点での話。先にPayPayの急成長には、親となるソフトバンクやヤフーらの存在が影響していると触れましたが、その背後にある親の存在が、PayPayの今後の戦略を見極めにくくしているというのも正直な所です。というのも2020年10月には、ヤフーを傘下に収めるZホールディングスと、LINE Payを持つLINEが統合する予定なので、完了の暁にはPayPayもその影響を少なからず受け、現在の戦略を大きく転換する可能性は十二分にあるでしょう。

中山氏はLINE Payと「まだ何も話していないし、何も決まっていない」と、現時点での戦略に対する影響を否定しています。ですが今回の発表で金融サービスの具体的な内容に触れられなかったのは、統合の影響を考慮して具体的な策を出せずにいるのでは?と勘ぐってしまいたくなるというのが、筆者の正直な気持ちでもあります。

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▲みずほフィナンシャルグループと「LINE Bank」の設立を目指すなど、LINE、ひいてはLINE Payは、金融事業に関してPayPayと異なる戦略を取っているだけに、事業統合後両社の戦略の違いがどう影響するかは気になる所だ

もちろん、仮にPayPayがLINE Payと統合したとすれば、スマートフォン決済サービスとして国内最大規模となることは確実でしょう。ですがPayPayの立場としては、親となる会社の方針の影響を多分に受ける可能性があるだけに、自身の戦略を名かっくに打ち出しにくいというのが正直な所かもしれません。そうした状況下で、どこまでPayPayは独自の戦略を打ち出していけるのか?というのが今後は注目される所ではないでしょうか。