「5Gの次」を考える会議、総務省が開催

5Gもまだ始まっていませんが

石井徹(TORU ISHII)
石井徹(TORU ISHII), @ishiit_aroka
2020年01月28日, 午後 08:00 in 6G
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総務省 Beyond 5G会議

今年春にいよいよ日本でもスタートする「5G」。スマホの通信が速くなるだけでなく、工場のワイヤレス化やロボット、VRデバイス、自動運転での活用など、とにかくさまざまな用途で活用されるだろうという期待が高まっています(実際には5Gのインパクトは、特に展開当初は一部のエリアでスマホの通信が速くなるといったものにとどまり、大きな影響を与えるのは全国に展開する1〜2年後と見られています)。

一方で政府は、"5Gの次"が到来した社会を考える有識者会議「Beyond 5G推進戦略懇談会」を開催しています。1月27日にはその第1回会合が開かれました。会合の座長は東京大学総長の五神真氏が務め、構成員には徳島県知事、NICT理事長。経団連理事、東大工学部教授、主婦連事務局長といった面々が名を連ねます。

まだ始まってもいない5Gの次を考えるのは時期尚早な感もありますが、この会合で議論されるのは、通信技術としての「6G」の内容よりも、"新しいモバイル技術が社会にどのような変化を与えるか"に力点が置かれています。

議論される内容は「2030年代の通信インフラで期待される機能」「Beyond 5Gで実現するために必要な技術」「日本におけるBeyond 5Gの導入と国際競争力向上において望ましい環境整備」の3点。そしてこれらを実現するための政策の方向性についても議題とされています。

つまり、「6Gがどのような通信技術となるか」は論点とせず、「6G時代に日本はどのような社会となっているか」を広く検討する会議と言えます。

■なぜ今「Beyond 5G」なのか

5Gの商用サービスは早い国でも2019年に導入されたばかり。2020年にスタートする日本でも遅くはありません。それにも関わらず「6G」に向けた動きは世界中で活発化しています。



サムスンやLG、ファーウェイのようなスマホ・通信機器メーカーはすでに6Gの基礎研究を開始しているほか、フィンランドでは6Gに向けた大規模な研究プロジェクトが展開されています。

日本でもNTTで研究開発を進めているほか、NTTドコモでは「6G」の構想をまとめた資料を公開しています。

総務省▲総務省資料より

一方、日本のモバイル通信産業を顧みると、3Gが登場する00年代頃までは携帯電話メーカーや半導体産業、携帯向けコンテンツ産業などが隆盛し勢いがありましたが、3G終盤から4G LTEにかけて衰退を続けている状況にあります。

こうした諸外国の状況と過去の経緯から総務省が抱いた危機感が、「5Gの次」に向けて政府がどのような支援を行うことができるのかを早めに考えておこう、「Beyond 5G推進戦略懇談会」の立ち上げにつながったのでしょう。

5Gがこれまでのモバイル通信技術と違うのは、いわゆるIoTなど産業を中心とした活用が本格化することです。工場の自動化(FA)や建設機械の遠隔操作、ロボットのリアルタイム操作、ドローンによる無人配達など、すでにある技術と5Gを組み合わせて、より人手不足などの課題を解決しようという取り組みが盛んに行われています。

そしてFAや建機、ロボットといった分野は、日本の企業の影響力がまだ強い市場とあっています。早いタイミングで議論を行うことで、こうした強みとなる部分を支援する体制を整えていこうという意図も垣間見えます。

第1回会合では総務省やNICTにより"5Gの次"の世界で実現したいという未来予想図が示され、構成員がそれぞれの立場から意見を述べています。

象徴的なのが、政府が5Gを活用して実現したい社会像として「インクルーシブ(包摂的)」というテーマが示されているということ。 これはモバイルワークや介護ロボット、翻訳マシンや高齢者向けパワードスーツといった技術を、"誰でも豊かな人生を送れる社会"をコンセプトとしてまとめたものですが、その実現には、全国で5Gが普及することを前提として含んでいることになります。

総務省▲総務省の資料より。"インクルーシブ"というテーマについて座長の五神氏は「(5G/6Gの展開について)国土を津々浦々まで使うという方針と理解している。都市への集約も選択肢としてはある。しかしそれは国は期待していない」と指摘しました

NICTの徳田英幸理事長は、5Gの次の通信技術の動向として、地上だけでなく宇宙や海洋といったあらゆる場所でシームレスに連携できる技術になるといった見通しや、東芝やNECが多くの特許を保有する量子コンピューターの分野から「量子暗号通信技術」の研究が進んでいることなどを紹介。まだ見ぬ6Gがワイヤレス通信の枠を超えた統合的な通信技術となる可能性を示しました。

総務省
総務省
▲NICT資料より

一方で議論の中で指摘されたのが、日本政府の視点が内向きな議論に終始しがちな点。NPO法人 J-Winの内永ゆか子氏は「どれだけ国際的な連携を日本が中心となって作るかが重要だろう」と指摘。そのために新技術の検証やトライアルに対する法制度上からのサポートや「デジタル省」の設立など政府機能の再設計も視野に入れた提案を行いました。

この会合は2020年夏までに集中的に開催される予定。議論された内容は日本のIT政策の柱として取り入れられていくことになります。日進月歩のIT業界で10年先の技術トレンドを把握するのはまさに雲をも掴むような行為ですが、理想の社会を想像することで、技術の発展を過度に制限しない法制度へと反映されていくのであれば、その議論は無駄にはならないことでしょう。
 

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