Origamiを買収しドコモと提携するメルペイ、その背景は

スマホ決済再編が急加速

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年02月6日, 午後 01:30 in payment
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前回、PayPayの戦略について取り上げたのですが、執筆後にスマートフォン決済を巡って大きな動きが起きました。それは2020年1月23日、メルペイがOrigamiを買収したことです。

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▲メルカリ傘下のスマートフォン決済サービス「メルペイ」。Origamiの買収を打ち出したことは驚きをもたらした

Origamiはスマートフォン決済「Origami Pay」を提供するベンチャー企業で、スマートフォン決済では最古参の部類に入ります。それが2019年にサービスを開始したばかりのメルペイに買収されたのですから、業界の変化の大きさを感じずにはいられない出来事だったことは確かです。

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▲Origamiはスマートフォン決済の老舗というべき存在だが、大きな顧客基盤を持たないだけに競争激化で苦戦が伝えられていたのも事実だ

見えないOrigami統合のメリット

リリースによると、買収後のOrigami Payのサービスやブランドは、一定の期間を置いた後にメルペイに統合されるとのこと。ですがOrigamiとメルペイの戦略を振り返ってみますと、両社が目指すところはかなり異なっており、統合のメリットが見えづらいというのが正直な所です。

メルペイはフリマアプリの「メルカリ」が母体であり、メルカリで販売した料金を使ってもらうための出口として生まれたサービスでもあることから、当初よりコンシューマー向けのサービスを志向していました。それゆえメルペイの取り組みを見ると、後払い方式で利用しやすい「メルペイスマート払い」を提供したり、全国の商店街などとタッグを組み、キャッシュレス化を推進しつつ加盟店拡大を進めたりするなど、あくまでコンシューマー向けを主軸とした事業を展開しています。

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▲メルペイは商店街と共同でキャンペーンを打ち出すなど、あくまでコンシューマー向けにこだわった戦略を取っていた。写真は2019年7月に東京の高円寺商店街で実施された「高円寺メルペイ通り」のキャンペーンより

ですがOrigamiは大きな顧客基盤を持たず、利用者数や加盟店舗数の拡大という面ではライバル他社に押されている状況でした。そこで同社はスマートフォン決済の競争が激化して以降、他社と正面を切って対抗するのではなく、むしろ決済の裏方に回り、大きな顧客基盤を持つ企業と連携することで利用拡大を図ろうとしていたのです。

実際Origamiは、2019年9月にOrigami Payの機能を他の企業に提供する金融プラットフォーム「Origami Network」構想を打ち出していました。これはクレジットカードでVISAやマスターカードなどが果たしている役割を、スマートフォン決済でOrigami Payが果たすことにより、さまざまな企業がスマートフォン決済を導入できるようにするというもの。既に信用金庫やトヨタファイナンスのサービスでの採用が発表されています。

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▲OrigamiはOrigami Payの機能を外部企業に提供する「Origami Network」構想を打ち出すなど、顧客を持つ企業との連携でOrigami Payの利用を拡大する方針を打ち出していた

これだけ戦略が大きく違っていただけに、コンシューマー向けを志向するメルペイがOrigamiを取り込んでも、生かせる要素があまりなく買収のメリットは薄いように感じてしまう訳です。にもかかわらずなぜメルペイはOrigamiを買収したのかといえば、やはり2019年に打ち出された、ヤフーを傘下に持つZホールディングスと、LINEの経営統合の影響が大きいのではないかと考えられます。

ヤフーはPayPay、LINEはLINE Payの親でもあり、経営統合の暁には両サービスが何らかの形で統合され、規模の面で一歩抜きんでる可能性が高い状況です。それだけにメルペイとしても、少しでも規模を拡大するべくOrigamiを買収するという判断に至ったといえるかもしれません。

規模を握るには「携帯キャリア」との提携がカギに

とはいえOrigamiを買収してもメルペイの規模がそれほど大きくなる訳ではなく、むしろ規模の面では他のライバルが急台頭する可能性が出てきています。なぜなら2020年に入ってから、携帯電話会社系のスマートフォン決済サービスがキャンペーン施策を相次いで打ち出し、攻勢を強めているからです。

中でも大きな施策を打ち出してきたのがKDDIの「au PAY」です。KDDIは2020年1月28日に発表会を実施し、「au WALLET」の名称を「au PAY」に変えることを発表。アプリやクレジットカード、プリペイドカードだけでなく、Eコマースの「au Wowma!」も「au PAY マーケット」に変更するなど、大幅なブランディング変更を実施することが打ち出されました。ですがより注目されるのは、同日に打ち出された「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」です。

このキャンペーンは2020年2月1日から3月29日までの毎週、au PAYを利用すると20%還元されるというもの。期間中3回に区切られたステージ毎に最大1〜3万ポイント、合計で最大7万ポイントの還元を受けることが可能です。毎週還元額が10億円相当に達し次第終了するなどの条件はあるものの、au PAY加盟店すべてが対象となるため高額商品を購入してもポイント還元が受けやすいなど、魅力が高いキャンペーンとなっています。

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▲KDDIは2020年1月28日に発表会を実施、「au WALLET」などを「au PAY」へとブランド変更するとしたほか、毎週10億円相当のポイントを還元するキャンペーンを実施するなど、大盤振る舞いのキャンペーンを打ち出している

またKDDIとじぶん銀行は、2020年2月10日から2020年3月29日の間に、じぶん銀行口座をau PAYのオートチャージ口座として登録し、au PAYで買い物をすることで毎週50名に10万ポイントが還元される「auじぶん銀行行名変更記念 毎週50名さまに10万WALLET ポイント!チャージ&au PAY利用であたるキャンペーン」も実施するとのこと。その内容から、こちらもかなりの大盤振る舞いであることが分かります。

スマートフォン決済各社がキャンペーンの還元額を減らす傾向にある中、KDDIがこれだけ大規模な還元キャンペーンを実施するのは、同社がau PAYの利用拡大に本腰を入れてきた証ともいえるでしょう。

KDDIは長い間、au IDやau WALLET等のサービスを、携帯電話ユーザーに閉じた形で提供していましたが、2019年にその方針を大きく転換して各種サービスをオープン化。金融サービスの強化のほか、ポイントプログラムを共通ポイントの「Ponta」に統合するなど、オープン化に向けた"構え"が整い、auの携帯電話ユーザー以外への利用を拡大するフェーズへと移ったことから、他社に遅れる形で大規模還元キャンペーンを展開するに至ったといえそうです。

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▲KDDIはau IDやau WALLETなどのオープン化で出遅れていたが、金融サービスの統合やau WALLETポイントのPontaへの統合などでauの携帯電話ユーザー以外にサービスを拡大できる準備が整ったといえる

ソフトバンク系のPayPayがLINE Payと同じグループとなっただけでなく、非常に大きな顧客基盤を持つKDDIがスマートフォン決済の顧客拡大に力を入れてきたことは、メルペイにとって非常に大きな脅威となることに間違いありません。

ドコモとの提携は必然

そこで手を結んだのがNTTドコモです。国内7000万人超のdポイント基盤を抱える同社とキャッシュレス分野で提携。「メルペイ」と「d払い」の残高連携や加盟店共通化を図ります。また、2020年初夏をめどにドコモの豊富な営業力を活かし、加盟店の共同開拓を実施します。また、提携を記念して10%還元キャンペーンを実施するとのこと。

相対的に体力の低いメルペイにとって、加盟店の開拓や激化する還元合戦は経営上の大きな負担となっていました。大資本であるNTTドコモとの提携によって、単に会員基盤を拡大するだけでなく、これらの負担を軽減できるメリットも期待されます。メルペイが今後もキャッシュレス決済で存在感を示すには、今回の提携はいわば必然でした。

ドコモ・メルカリ連合、ソフトバンク系のPayPay、KDDI・Pontaの「au PAY」と携帯キャリアへの収斂が進むスマホ決済。この分野では大きな動きを見せていない「楽天」の今後の動きも気になるところではあります。同社はすでに1億超の楽天IDを保有しており、4月に本格参入する携帯電話(MNOサービス)とキャッシュレスをどう組み合わせるかにも注目したいところです。

 

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