幹細胞治療の新手法で糖尿病が「機能的に治癒」。マウス実験で9か月間血糖値が正常化

患者の治療に活かせる日はいつ来る?

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2020年02月25日, 午後 06:00 in Medicine
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Washington University School of Medicine

ワシントン大学医学部の研究者ジェフリー・R・ミルマン博士が、ヒト幹細胞をインスリン産生細胞に変換し、重篤な糖尿病のマウスに投与したところ、数か月間にわたって血糖値を正常に制御し、機能的に糖尿病を治癒できたとする研究結果を発表しました。

ミルマン氏はヒト幹細胞を膵臓のベータ細胞に変換する方法を数年前に発見、そのベータ細胞は高い血糖値に晒されるとインスリンを分泌し始めることがわかっていたものの、当時は血糖値をうまく制御できるところまではたどり着けていませんでした。Nature Biotechnology誌に掲載された研究結果によると、最新の研究では1デシリットルあたり500mg(人間では致命的レベル)の血糖値になっているマウスにインスリン分泌細胞を投与したところ、2週間以内に血糖値の改善がみられ、9か月にわたり正常な状態を維持したとのこと。

通常、幹細胞を特定の種類の細胞に変換する際、いくつかのランダムな要因が発生し、目的外の種類の細胞が一部混在します。これらの細胞が悪さをすることはないものの、全体的に見れば作り出した細胞の量に対して、目的とする役割を果たす強さを低下させることになります。

たとえば糖尿病の患者を治療するには約10億個のベータ細胞が必要だとする場合、幹細胞から作り出す細胞の1/4が肝細胞や他の膵臓細胞になるとすれば、作り出す必要があるのは10億個では足りず、機能低下分を見越して最低でも12億5000万個が必要になります。

このため、ミルマン氏は無駄になる細胞の割合を減らすことにフォーカスした新しい方法を研究し、より高い割合のベータ細胞を生成、機能させられるようにしたとのことです。「これは以前とは完全に異なるアプローチです。以前は様々なタンパク質と因子を特定し、細胞に対してそれがどのように変化をもたらすかを見ていましたが、いまではそれによって発生する変化のシグナルとよりよく理解できたので無駄に作り出される細胞の割合を少なくできるようになりました」とミルマン氏は述べています。

この新しい手法では、複数の異なるソースによる幹細胞で効率的に機能し、疾患の研究における能力を大幅に引き上げられたとのこと。

これだけ良いことずくめならば、われわれ一般人や実際に糖尿病を患う患者たちは早く人間の治療にも適用して欲しいと願うところですが、ミルマン氏はこの手法を臨床実験に持ち込む前に、まだやるべきことがたくさんあると説明します。マウスで良好な結果が得られただけでは、人間で同様の効果が得られるかはわからないため、研究チームはより大きな動物でより長期の試験を実施して、いつか数多くの糖尿病患者を救えるよう、研究を継続するとしています。

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