店舗展開も打ち出したメルカリ、ライバルに差をつける取り組みは(佐野正弘)

一層の利用拡大を図れるか

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年02月28日, 午後 06:30 in mercari
28シェア
engadget
去る2020年2月20日、メルカリは初の事業戦略イベント「Mercari Conference 2020」を実施しました。最近はもっぱら、子会社でスマートフォン決済を手掛けるメルペイの動向が注目の的ではありましたが、メルカリはそもそもスマートフォン向けのフリマアプリ「メルカリ」で急成長した会社であり、現在も事業の主軸はフリマアプリであることに変わりはありません。

engadget
▲メルカリは2020年2月20日に「Mercari Conference 2020」を開催。メルカリの国内事業に関する新たな取り組みを打ち出した

そもそもメルカリなどのフリマアプリが流行したのは、スマートフォンの普及が拡大していた2013年頃。その背景にあったのは、ネットオークションなど従来のC2Cサービスで、ユーザーが不満だと感じていた部分を解消し、より手軽に出品・購入できるようになったことが大きいと言えます。

実際フリマアプリは、まだパソコン向けのネットサービスが主流を占めていた中、スマートフォンからいつでも出品・購入でき、しかもネットオークションで一般的な入札方式を採用せず、出品者が提示した額を支払えばすぐ購入できることが人気要因となっていました。またネットオークションではオプション扱いであることが多かった、落札者の料金と出品者の商品を預かり、配送が完了した時点で料金が支払われる「エスクロー」を標準採用するなど、事前にトラブルを防ぐ仕組みが用意されていたことも、利用者の安心感を高め支持された一因になっていたといえます。

そうした手軽さと安心感から、フリマアプリは主としてスマートフォンを積極利用する、若い女性からの人気を獲得、そこでやり取りされる商品も洋服などが中心となっていました。特に支持が強かったのが地方の女性層であり、近くに古着屋やリサイクルショップがないといった不満を、フリマアプリの存在が解消したといえるでしょう。

engadget
▲フリマアプリの先駆けとなった「Fril」は、ネットオークションの利用が複雑で難しいと感じていた若い女性に特化し、手軽さと安心さを重視したサービスで人気を獲得していた

とはいえ、フリマアプリは当時、メルカリ以外にもいくつかのサービスが存在していました。実際、Fablicというベンチャー企業が提供していた女性向けフリマアプリ「Fril」は、2013年開始のメルカリより先となる2012年にサービスを開始して人気を博していましたし、LINEもフリマアプリとEコマースを融合させた「LINE MALL」を2013年に開始。楽天も「ラクマ」を2014年に開始するなど、急速に競争が激しくなっていきました。

engadget
▲フリマアプリを巡っては、LINEが「LINE MALL」を開始するなど2014年前後に競争が激化したが、その後淘汰が進んでいった

ですが競争が激化する中、メルカリは最初から女性以外もターゲットにした総合サービスとして展開していたこと、そして積極的なプロモーション展開などによって急速に頭角を現します。一方でLINE MALLは2016年に撤退、Fablicは2016年に楽天に買収され、Frilとラクマは統合に至るなど再編が進んだことで、メルカリはフリマアプリのトッププレーヤーとしての座をつかんだといえます。

ですがフリマアプリに関しては、国内ネットオークションでは最大手となるヤフーが、2017年に「ヤフオク!」にフリマモードを導入したり、2019年にはPayPayと連携した「PayPayフリマ」を展開したりするなど力を入れてきており、ラクマを持つ楽天も含めインターネット大手からの激しい攻勢を受けている状況でもあります。それだけにメルペイ等への投資で厳しい状況にあるメルカリが、どのようにして本業であるフリマアプリを拡大していくかというのは注目される所でもありました。

そして今回のイベントでメルカリが打ち出したのは、意外にもアプリやネットではなく、リアルな場所に向けた取り組みでした。実際メルカリは、メルカリの使い方を学んだり、出品した商品の梱包や発送をしたりできる実店舗「メルカリステーション」を、2020年春より開始すると発表、新宿マルイ本館に出店するという第1号店を皮切りに、2021年まで全国主要10都市に展開したいとしています。

------------------------------------------------------------
engadget
▲メルカリが新たな施策として打ち出した実店舗「メルカリステーション」。第1号店は新宿マルイ本館に出店するとしている

またメルカリはヤマト運輸と提携し、商品を発送する無人の投函ボックス「メルカリスポット」の設置も進めるとしています。メルカリで売れた商品は、通常コンビニエンスストアなどに持ち込んで発送手続きをする必要がありますが、必ずしも近くに対応するコンビニエンスストアがあるとは限りません。

そうしたことからメルカリは、無人の発送拠点を設置することでより手軽に商品を発送できる環境を整えたいようです。メルカリスポットはメルカリステーションのほか、全国のドコモショップにも順次設置されるとのことで、2023年までに全国5000ヵ所への設置を目指すとしているほか、パナソニックと共同で後継機の「メルカリスポットプラス」の開発も進めるなど、力を入れている様子がうかがえます。

engadget
▲メルカリで売れた商品を送る無人の拠点「メルカリスポット」。「宅急便コンパクト」「ネコポス」での発送が可能だという

実店舗展開以外にも、メルカリは今回のイベントでデータの活用に関する取り組みについても触れていました。メルカリは中古品を扱うプラットフォームであることから、出品者や購入者の情報のほか、ユーザーの検索、閲覧、売買といった行動データ、そして出品した商品の名称など、非常に多くのデータを保有しています。

最近ではプラットフォーマーが持つデータを外販し、マーケティングに活用するビジネスというのも盛んになされていますが、メルカリではそうした自社のデータを販売するのではなく、新品を販売するお店やECサイトなどに開放、つまり無料で使えるようにするというのです。

もちろんデータを開放するのはメルカリと提携する企業に限られるのですが、メルカリのデータと提携先のお店のデータを相互に連携することで、提携先企業のマーケティング用途に活用してもらうだけでなく、メルカリのIDとECサイトのIDを連携し、データ連携によってECサイトで購入した商品をメルカリに出品する際、説明文の入力を不要にするなど、メルカリ側にもメリットのある仕組みを用意する狙いがあるようです。

engadget
▲メルカリは自社のデータを販売するのではなく、提携する店舗やECサイトなどのデータと連携することにより、双方の利用が活性化する仕組み作りに力を入れるとしている

これら一連の取り組みからは見えてくるのは、フリマアプリの市場拡大の余地がまだ大きいと考えていることでしょう。実際今回の説明会で、メルカリは不用品の推定価値が年間約7.6兆円あり、そのうち約1.1兆円は破棄されているとしていました。

engadget
▲不用品とされるものの推定価値は1年間で約7.6兆円に上る一方、メルカリの流通総額は年間約5000億円程度であることから、市場の拡大余地はまだ大きいと見ているようだ

そうしたことからメルカリは、フリマアプリの拡大余地がまだまだ大きいと判断。店舗などリアルな場面への進出や、新品を販売するお店との連携などによってメルカリへの出品を促進し、流通量をもっと拡大することがメルカリの業績拡大につながると考えたといえます。

確かにフリマアプリは、女性を中心に若い世代では利用が進んでいますが、一方でスマートフォンを持ち始めたばかりのシニアなど、利用が進んでいない世代も少なからずいるのは確かでしょう。実際メルカリも、NTTドコモとスマートフォン教室と連携させた「メルカリ教室」を展開するなどして、利用者層を広げる取り組みはこれまでにも進めていました。

engadget
▲メルカリはNTTドコモとのコラボレーションで「メルカリ教室」を展開。シニアを主体としたスマートフォン初心者の利用拡大に向けた取り組みも進めている

そして今回、自ら実店舗や発送拠点を手掛けるなど大きな取り組みを打ち出したことで、メルカリは国民全体のフリマアプリ利用促進に大きく踏み切ってライバルに差をつけようとしている、といえるでしょう。特にインターネットサービスに馴染みがない層に対し、今回の措置でどこまで利用促進につなげられるかは、他のサービスに差をつける上でも重要になってくるだけに、注目される所です。

TechCrunch 注目記事「新型コロナの影響で自宅待機中のTechCrunchスタッフを熱中させているもの

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]

TechCrunch Japanへの広告掲載についてのお問い合わせはad-sales@oath.com まで。媒体概要はメディアガイドをご覧ください。

関連キーワード: mercari
28シェア