地球外文明からの信号を探すため、世界中のボランティアのPCリソースを借りて電波望遠鏡のデータを分析してきたSETI@homeが、その20年を超える分散コンピューティング活動を2020年3月31日で終了すると発表しました。
UC BerkeleyのSETIチームは「プロジェクトは3月31日にユーザーへのデータ送信を停止するものの、これが地球外知的生命体探査への公的な関与の終わりではありません」と述べています。SETIとはSearch for Extra-Terrestrial Intelligence(地球外知的生命探査)の略称で、SETI@homeはプエルトリコにあるアレシボ天文台と英ウェストバージニア州にあるグリーンバンク望遠鏡の観測データに地球外生命体が発した信号と判断できる情報が含まれていないかを、世界中のボランティアのPCを使って調べるプロジェクト。PC1台の能力はたいしたことがなくとも、インターネットにつながる世界中のPCの力を借りれば、スーパーコンピューターにも匹敵する計算能力が得られるという発想のもと、1999年に開始されました。
Thanks to the many volunteers who have helped crunch data for SETI@home in the last two decades. On March 31, the project will stop sending out new work to users, but this is not the end of public engagement in SETI research. pic.twitter.com/P0t0v8w7n4
— UC Berkeley SETI (@BerkeleySETI) March 3, 2020
SETI@homeの共同設立者デビッドP.アンダーソン氏は、プロジェクトそのものは終了しないと述べており、科学実験として「仮説を立ててデータを収集する段階を終え、分析と評価を行う段階に近づいている」としました。もう少しわかりやすく説明するならば、すでに大量の分析済みデータが蓄積されているので、今後はそれらをふるいにかけ、ある種の結論を探し出すべき段階に差し掛かってきたということです。したがってSETI@homeの"@ home"部分は終了するものの、プロジェクトはまだまだ終わりません。SETIチームは最終的に"科学ジャーナル向けの論文"にまとめるとしています。
ちなみに、分散コンピューティングプロジェクトのプラットフォームソフトウェア"BOINC"は、もともとSETI@homeのために2005年に開発されました。現在ではSETI@homeでの運用実績をもとにUC Berkeleyの他の天体物理学プロジェクトや、様々な癌、デング熱といった医療分野などでデータ解析、治療薬開発に用いられています。最も新しい事例としては、2月27日に中国武漢から全世界に拡大している新型コロナウイルスによる感染症COVID-19の治療法開発のために使われることが発表されていました。