インテル、ニューロン模倣チップ「Loihi」でにおい10種類を嗅ぎ分け。麻薬や病気など検出に期待

すかしっ屁をロボットに見破られる未来

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2020年03月19日, 午前 06:50 in Science
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A close-up photo shows Loihi, Intel’s neuromorphic research chip. Intel’s latest neuromorphic system, Pohoiki Beach, will be comprised of 64 of these Loihi chips. Pohoiki Beach was introduced in July 2019. (Credit: Tim Herman/Intel Corporation)

すでにAIは人間の五感に相当するものをいくつか得ていますが、こと嗅覚に関して言えば、コンピューターはまだ十分な能力を手にしていません。しかし、インテルとコーネル大学の研究者は「Loihi」と称するニューロモーフィックコンピューティングチップ(ヒトのニューロンを模した電子回路で構成されるチップ)を使用して10種類の化学物質の"におい"を学習、認識するようAIを鍛え上げました。

この技術は将来的に、たとえば麻薬や武器・爆発物のを嗅ぎつける警察犬のような、「電子鼻」を備えるロボットを作り出すのに役立つかもしれません。Loihiには130万ものニューロン、1億3000万のシナプスに相当するがあり、自身のニューロンの内部ネットワークを常に組み替えて、教師あり/なし学習、強化学習などいくつかの異なるタイプの学習を可能にします。

インテルの研究チームはは、哺乳類の嗅覚について、脳内でどのような反応が起きているかを調べました。たとえばわれわれの鼻の中には約450種類の嗅覚受容体があり、それらは空気中に含まれる"におい"に関連する分子によって活性化、脳に信号を送ります。

たとえば夕暮れ時にキッチンでお母さんがカレーを炊いていれば、その鍋から蒸気とともに立ちのぼったカレーの香りの元となる分子が、家のなかを漂って2階でうんうんうなりながら宿題をしている子どもの鼻の中に入り、子どもの嗅覚受容体がそれに反応して信号を脳に送ることで「やったー、今夜はカレーだ!」となるわけです。

そして、この匂いを感じ取る能力は、脳内に保存された過去の"におい"経験のなかで異なる"におい"と相互参照できるようになるとともに新情報を処理して、無数の異なる"におい"を区別できるようになるとされます。

もちろん、このチップはまだ人間の脳における嗅覚の処理全体を再現しているわけではありません。しかしインテルの説明によると、72個の化学センサーと接続されたこのチップは、アセトン、アンモニア、メタンなどといった全10種類の"におい"を循環させて鍛えた結果、まるで脳が特定のパターンに電気信号を割り当てるように"におい"を特定できるよう識別検知できるようになったとのこと。研究者は、通常のディープラーニングのやり方ならこの3000倍以上のトレーニングを行う必要があると述べています。

嗅覚AIの訓練方法について研究しているグループはインテルおよびコーネル大学のチームだけではなく、たとえばGoogleなどもおこなっています。Google Brainと呼ばれる研究チームでは、パフューマー(調香師)に協力を仰ぎ、香りのもととなる分子と知覚的な"におい"の関連を調べています。ほかにも英国では絶滅した鼻の香りをAIで再現しようとする試みがされていたり、ロシアではAIを使った毒ガス検出といった不穏な研究もされています。

インテルの研究者は今回の研究について「脳の神経回路がこのような臭いに関する複雑な計算をどうやって瞬時にやってのけているのかを理解することが、効率的かつ堅牢なマシンインテリジェンスを開発するための手がかりになる」と述べました。脳がにおいをどうやって認識しているかをすべて解き明かすことができれば、AIの設計方法がいまとは大きく変わる出来事になるかもしれません。

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