ソフトバンクが見送った Xperia 1 IIをドコモが扱う背景、対照的な5G戦略 (佐野正弘)

ハイエンド重視のドコモ、価格重視のソフトバンク

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年03月19日, 午前 11:45 in mobile
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5Gのサービス開始時期を「2020年春」としていたNTTドコモ。ですが2020年3月18日に5Gの商用サービス開始に向けてオンラインでの発表会を実施し、5Gのサービスを2020年3月25日に開始することを明らかにしました。同社は携帯大手3社の中では最も早い段階から5Gに力を注いできただけあって、発表会で明らかにされた内容は非常に盛りだくさんでした。



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▲NTTドコモは2020年3月25日に5Gの商用サービスを開始すると発表。コンテンツから端末、料金まで、非常に多くの発表がなされている

特に5Gに向けた新しいコンテンツやサービスの取り組みに関しては、VRを活用した日中共同でのVR音楽ライブの実施や、Jリーグに加えTリーグのスポンサードを発表するなどスポーツ配信の拡充、そしてコーエーテクモゲームスの「真・三国無双8」など大型タイトルのクラウドゲームによる配信など、5Gに向け周到に準備を整えてきた様子がうかがえます。

それだけに、新型コロナウイルスの影響でイベントが無観客で実施されたり、提供が遅れたりするなどしているのは残念な所でしょう。

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▲バーチャルアーティストによるライブ配信ができる「MATRIX STREAM」というシステムを用いたデモ。NTTドコモはこのシステムを用いた日中共同のVR音楽ライブを3月21日に実施予定だが、東京と上海で予定されていた5Gによる体験会は実施が見送られてしまった


ドコモは「高性能」、ソフトバンクは「端末価格」を重視

ではNTTドコモの5Gサービスが、既に5Gの商用サービス開始を発表しているソフトバンクと、どのような点で違っているのかを発表内容から見ていきましょう。

その1つは5G対応端末で、NTTドコモは今回5G対応スマートフォン7機種と、シャープ製のWi-Fiルーター「Wi-Fi STATION(5G)」の提供を発表していますが、その傾向は明らかにソフトバンクとは異なっています。

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▲NTTドコモは5Gの商用サービス開始に合わせてスマートフォン6機種と限定モデルの「Galaxy S20+ 5G Olympic Games Edition」、そしてWi-Fiルーター1機種を投入

ソフトバンクは中国メーカーの採用を増やして価格重視のラインアップを揃えていましたが、それに対してNTTドコモは、ソフトバンクが採用を見送った「Xperia 1 II」をはじめとして、値引きがなければ軒並み10万円を超えるであろうハイエンドモデルばかりを揃えているのです。

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▲NTTドコモはソフトバンクが販売を見送った「Xperia 1 II」も投入するなど、ハイエンドモデル重視のスマートフォンラインアップとなっている

中でも注目されるのが、富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)製の「arrows 5G」です。というのもFCNTは富士通から投資ファンドへと売却されて以降、シニア向けの「らくらくスマートフォン」など手堅いミドルクラスのスマートフォンに注力。ハイエンドモデルは長らく提供していませんでした。

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▲近年はミドルクラスのみ投入していた富士通も、5Gの立ち上げに向けハイエンドモデルの「arrows 5G」を投入している

しかしながらarrows 5Gはチップセットにハイエンド向けの「Snapdragon 865」を搭載し、約4800万画素のカメラをはじめとしたトリプルレンズ構造を採用。さらにGalaxy S20+ 5Gと並んでミリ波対応を打ち出すなど、攻め"の姿勢が強かった大文字の「ARROWS」時代を彷彿させるハイエンドスマートフォンに仕上がっているのです。

昨今の端末値引き規制でハイエンドモデルの数は絞る傾向にある中、規模の小さいFCNTまでもがこうした端末を提供するというのは今までにないことす。それだけNTTドコモが、ハイエンドの5Gスマートフォンを揃えて先進性を打ち出すことに注力していることは確かでしょう。

では低価格を求める層はどうするのか?というと、そこはまだ4Gで十分対応できると考えている様子がうかがえます。実際今回の発表会では5G端末だけでなく、「Xperia 10 II」など4Gスマートフォン4機種も発表しており、これらはいずれも価格重視の低価格モデルとなっています。

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▲5Gの発表にもかかわらず、4Gスマートフォン4機種とタブレット1機種も同時に発表している

もっともNTTドコモのプロダクト部 プロダクト企画担当部長である渡邉正明氏は、ミドルクラスの5G対応モデルに関して「まだ決まっていないが、できる限り早く準備したい。今年中くらいには提供できるよう、準備している」と答えています。2020年後半にはミドルクラスも5G対応端末に入れ替えていきたい考えのようです。

アンリミテッドを導入したドコモ、見送ったソフトバンク

5Gの料金プランからも、NTTドコモとソフトバンクとでは明確な戦略の違いを見て取ることができます。NTTドコモは5G向けの新料金プランとして「5Gギガホ」「5Gギガライト」の2つを提供するとしており、このうち主力プランとなる大容量の5Gギガホは、従来の「ギガホ」に500円を上乗せした月額7650円(各種割引を適用しない場合)で、100GBのデータ通信が利用できるプランとなっています。

しかしながらNTTドコモではサービス開始当初より、5Gギガホの通信量を無制限にする「データ量無制限キャンペーン」を実施するとのこと。このキャンペーンは終了期間を定めず実施されるそうで、当面5Gのプラン契約者は通信量上限の制限なく、データ通信が利用できる「アンリミテッド」を実現できることとなります。

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▲5G向け料金プラン「5Gギガホ」の概要。月当たりの通信量は100GBだが、当面はキャンペーンにより、通信量無制限で利用できるとのこと

アンリミテッドの導入を見送ったソフトバンクとは対照的に、NTTドコモがアンリミテッドの実現を前面に打ち出したのには、ネットワーク整備の戦略の違いが影響しているといえそうです。

ソフトバンクは5Gの周波数帯をスポット的な利用に留め、4G向けの周波数帯を5Gと共用する「ダイナミックスペクトラムシェアリング」(DSS)の活用で5Gのエリアを広げる方針です。ですがNTTドコモのネットワーク部 技術企画担当部長である中南直樹氏は「既存の4Gの周波数を5Gに変えても通信速度は変わらない」と話すなど、DSSの活用にそこまで前向きではない様子です。

ではどうやってエリアを広げるのかというと、5G向けに割り当てられた周波数帯を使い、基地局を多数設置していく方針のようです。実際NTTドコモは5Gの周波数帯を用い、2020年6月末までに47都道府県に5Gの基地局を設置。2021年3月末には全政令指定都市を含む500都市、2022年3月末には当初予定を2年弱前倒しして全国に2万の5G基地局を設置するとしています。

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▲NTTドコモは5G用の周波数帯に対応する基地局を多数設置することで、5Gのエリアカバーを広げる計画。当初予定を2年弱前倒しし、2022年3月末には全国2万局を設置するという

5G向けの周波数帯は電波が遠くに飛びにくく、広範囲をカバーするには多数の基地局設置が必要でコストがかかりますが、高速大容量通信には向いているので整備が進めば従来より一層大容量の通信に耐えられる。それゆえソフトバンクは大容量よりコスト、NTTドコモはコストより大容量を重視したネットワーク整備を進める戦略を取り、その違いが料金プランに出たといえるでしょう。

もっともNTTドコモのアンリミテッドの実現はあくまでキャンペーンによるものなので、将来的に終了してしまう可能性もあります。ですが代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「どういう使われ方がされるのか、なかなか想定できない。ネットワーク設備への影響を見極める必要があるのでまずはキャンペーンでの提供にした」と話しており、ネットワークが耐えられると判断すればアンリミテッドが正式プランになる可能性もあるようです。

NTTドコモもソフトバンクも、サービス開始当初は5Gのエリアは非常に限定的なことから、当初のサービスに大きな差は出ないかもしれません。ですが両社の戦略には明確な違いがあることから、今年の後半から来年と、エリア整備が進むにつれ各社の5Gサービスには大きな違いが出てくることになるかもしれません。3月23日に5Gのサービスを発表すると見られているKDDIや、6月のサービス開始を予定している楽天モバイルを含め、今後の動きに目が離せない所です。

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