新iPad ProのMagic Keyboardに見る、ジョブズも予想しなかった進化(石川温)

キーボードを打つなら、ペタペタよりストロークがあった方がいい

石川温
石川温
2020年03月20日, 午後 12:15 in ipad
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「ペタペタペタ」
ここ数年、MacBook Proでの入力と言えばこんな感じだ。キーボードの薄型化を実現しようと導入されたバタフライキーボード。確かに薄いのだが、キーストロークがあまりに短いため、文字を入力する度に「ペタペタ」としているし、押している感覚はあるものの、ストロークが短いせいか、指に負担が掛かって疲れてしまう。

だが、仕事柄、毎日のように長文を執筆しているので、すっかりそれが当たり前になっていた。アップルは、バタフライキーボードがあまりに評判が悪かったと反省したのか、昨年秋に発売した16インチのMacBook Proからシザーメカニズムのキーボードを採用。1ミリというストロークを実現した。

そして、今回、発表となったMacBook AirとiPad Proにおいて、Magic Keyboardとして文字入力の快適さをアップルは打ち出してきた。まさにアップルはキーボードに対して真摯に向き合い、今後は薄型化よりも「ストロークが長くて快適」なキーボードを目指していくという明確な方向性を示した。

実際のところ、普段の仕事はiPhoneがあれば、それなりにこなせてしまう。メールの確認やちょっとした返信。スケジュール調整などはメッセンジャーやLINEで充分だったりする。資料の確認などもiPhoneで問題ない。大画面化しているiPhoneがあれば、普段の雑用仕事のほとんどがこなせるのではないか。

一方、我々がパソコンに向かうという時は本気の資料や長文メールの作成。自分であれば、原稿を執筆するタイミングとなる。つまり「パソコンを使う=キーボードを打ちまくる」ということだ。僕らは「パソコンを使いたい」じゃない。キーボードで大量に文字を打ちまくりたくて、仕方なくパソコンを使っている。

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アップルとしても、ユーザーにおけるデバイスの使い分け方に薄々感づいたのだろう。iPadを訴求する際、数年前の「画面がさらに大きなiPhone」的な存在価値だけでは、全く売れる要素がない。iPhoneと一緒に持ち歩くiPadに求められるのは生産性で、「いかに文字やイラストなどを入力しやすいか」という点に尽きる。

そのため、iPadはペン入力に対応し、さらにキーボードのついたカバーを強化。今回はキーボードの進化させただけでなく、トラックパッドもつけて「もはやパソコン」とも言える存在になってしまった。

3月24日に配信されるというiPad OS13.4では、トラックパッドやマウスでの操作にも対応。画面上にはフローティングサークル(点)が浮かび上がり、クリックや選択がやりやすくなるようだ。これまでの「画面を直接タッチする」という操作に加え「フローティングサークルを動かして選択する」というハイブリッドな操作性に進化することなる。

キーボードも打ちやすくなり「iPad Proで仕事がしやすくなる」と期待できる一方で、とはいえ「iPadって文字入力変換がクソすぎる」なんていう罵詈雑言も耳にする。確かにiPadの日本語変換がイマイチ過ぎて原稿を打つと結構、骨が折れる。

しかし、iPad OS 13.4では、なんと日本語入力の「ライブ変換」に対応する。macOSでも賛否両論のあるライブ変換ではあるが、これまでに比べればサクサクと日本語入力ができそうなので、こちらは期待しておきたい。

かつてスティーブ・ジョブスは他社が採用していたペン入力やキーボード入力を酷評し「タッチこそ直感的で優れた操作体系」として、iPhoneを発表していた。確かに常に持ち歩くiPhoneにおいてはいまだに指で直感的に操作した方が快適だ。

しかし、ジョブズも天国に召されて10年を待たずして、アップルがiPadで、ここまでキーボードやペン入力を推してくるは思わなかっただろう。この10年間、デバイスは様々に進化したが、使う側の人間の方がその進化に追いつけなかったと考えると納得がいく。

結局、無駄にキーボードで薄型化を極めたりするよりも「絵を描くなら指先よりペンを使った方が効率がいい」「キーボードを打つなら、ペタペタよりストロークがあった方がいい」「マウスの使い勝手から逃げられない」という、人に染み付いた「心地よいと感じる操作性」に寄り添った方がいいという結論にアップルは達したのではないだろうか。

まさに今回のMacBook AirとiPad Proは人間が使いやすいと感じる入力方法への原点回帰と言えそうだ。


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