1人1台iPadを2016年から実践、上越教育大学附属中学校に学ぶICT教育で効果を上げる仕組み

どんな制度も関係者の理解があってこそですね

田沢梓門
田沢梓門, @samebbq
2020年03月20日, 午後 03:30 in education
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文部科学省が2019年の12月にGIGAスクール構想を発表しました。GIGAスクール構想を簡単に説明すると、生徒1人に対して1台の端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備する構想です。この環境整備によって、公正に個別最適化された学びを全国の学校現場で持続的に実現させることが目的です。

こういった事情から、教育関係者のICT教育に対しての関心度が高まっています。GIGAスクール構想向けにWindowsのPCやChromebookが文教市場向けに展開されていますが、AppleのiPadもICT教育の選択肢として有力であることを新潟・上越教育大学附属中学校の事例をもとにお伝えします。


上越教育大学附属中学校は2016年から生徒1人に対して、1台のiPadの制度を導入しています。同校のICT教育に対する取り組みの歴史は古く、1988年から学校教育におけるコンピューターの活用についての研究を実施しています。2019年にはAppleがICT教育に優れた学校として認定する「Apple Distinguished School」に選ばれました。これは国内で初の国立校での認定となります。

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iPadの導入については保護者負担の買取式で、機材はiPadであればiPad miniでもiPad Proでも大丈夫だそうです。アクセサリに指定はありませんが、生徒たちは必要に応じてキーボードやApple Pencilなどを購入しています。

多くの授業で積極的にiPadの活用をしており、紙のノートと併用して板書を書き込んだり、iTunes Uで配信された教科書に先生の話で重要な点をメモを書き込むなど生徒によって活用法は様々です。学校の指導の方針も板書を写すことよりも考える時間を増やすことに重きを置いています。

中学校教育では単語や知識の暗記も必要となります。上越教育大学附属中学校では、「Google フォーム」や「Kahoot!」といったツールを利用してより効率的にゲーム性を持って学習に取り組めるような工夫を施しているそうです。

ツールについては先生達がSNSにてEdTech関係者から情報を仕入れて、色々試した上で実際の授業に導入します。私立ほど予算が潤沢ではないので、無料かつ使い勝手のいいものを選んで取り入れているそうです。

Engadget▲休校期間の朝学活の様子。先生も生徒も遠隔でも交流ができます。

また、コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて上越教育大学附属中学校も1か月の休校期間ができてしまいました。同校はiPadを活用して、Zoomでの朝学活、授業動画の配信、iTunes Uでの学習プリントの配布などを実施しており学力保証(未履修分の授業)と学習習慣の確立を実現しているそうです。同校が長年ICT活用に力を入れてきた姿勢とノウハウが、こうした有事に生きています。

■iPadを授業でフルで活用


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▲美術担当の寺田寛教諭(左)、理科担当の大崎貢教諭(右)。

休校時期ということもあり、実際の授業風景は取材できませんでしたが上越教育大学附属中学校で教鞭をとる2人の先生にiPadを活用してどういった授業を実施しているのかを伺いました。


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理科を担当する大崎貢教諭はまず、「AI時代を主体的・共創的に生き抜く生徒の育成」という研究主題をもとに上越教育大学附属中学校の教育のビジョンを説明しました。文部科学省の学習指導要領のに加えて、同校のオリジナリティとして「創造性」「人間性」「自己調整」のある生徒を育てることを目標にしています。


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▲天気の単元で大崎教諭が実践している授業内容。

上記画像の「Step 2」までが学習指導要領に則った内容で、「Step 3」以降はオリジナルの授業です。気象データの読み解きかたの知識を応用して、グループで天気予報番組を制作する課題が用意されています。

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▲グループでの課題作成風景。番組内容を考えることはもちろん、BGMをiPadで作曲している生徒もいます。

「どうやって予測したらいいのだろう?」と制作の手が止まってしまった生徒向けにiTunes Uで各種データを用意しています。これにより、課題作成時に根本的な知識の面で迷ってしまった場合でも改めて制作に向き合えます。この番組作成の課題を通して、天気予報のTVの価値観、発信の仕方、伝えるということの重要性を学ぶことができます。

Engadget▲生徒がiPadで作成したお天気番組。

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▲グループ同士での課題評価の時間も設けられています。北海道や愛媛の学校とオンライで発表会を開き、リアルタイムで評価がグラフに反映されます。

大崎教諭は、iPadを利用した課題学習について以下のようなコメントをしています。
「僕たちが今まで受けてきた授業はどうしても画一的で筆記試験などの言語的活動に偏っていました。もちろんそういった学習も重要ですが、苦手な分野で悩んでいる生徒などに活躍や考える場を我々が提供することで、子どもたちがもっと輝けたらと思ってこういった課題を1単元に1つ用意しています」。

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続いて美術を担当する寺田寛教諭の授業紹介。普段の美術の授業では、iPadのみで創作するというシーンは少なく、カメラを利用しての作成過程の記録だったり、検索でモチーフとなる素材を選んだりと、補助的なツールとして活用しているそうです。

今回、寺田教諭が紹介した授業は絵巻物「鳥獣人物戯画」を元にKeynoteを利用して動物を動かしたり、音声を入れたりしてアニメーションを作成する課題です。生徒達は、動物がどの順番で話しているのかなどを物語の展開を予想しなが課題に取り組みます。

iPadをこの課題で利用するメリットとして、鑑賞と創作の2つの面が優れていることが挙げられます。スクロール操作で実際の絵巻物を読み取るように鑑賞できて拡大・縮小が容易です。また、作品の作成時に修正や変更が容易なのでより効果的な表現を試行できるとしています。

寺田教諭によると、コロナウイルスによる休校の影響で、ウェブ上で展覧会を開催して生徒同士での交流を図る予定とのことです。

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▲創作という目的を持って作品に向き合うことで様々な気付きを得られます。

「いきなり1人1台PCといわれてもどうしたものか...」と不安に思う教員の方は少なくないかもしれません。上越教育大学附属中学校はICT教育を通して、どういった生徒に育成するのかという目的をはっきり持った上でiPadを活用しています。GIGAスクール構想の定着には、保護者も含めた教育関係者のICT教育への理解と、目的に沿った適切な機材選びが重要だと感じた取材でした。

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