外観ではわからない MacBook Air 2020年モデルの進化ポイント(西田宗千佳)

2018年の復活時からこのキーボードがほしかった……

西田宗千佳
西田宗千佳
2020年03月20日, 午後 09:30 in MacbookAir
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MacBook Air

「なんでこれを前に出しててくれなかったの!?」新MacBook Airに対する感想は、ひとことでいえばこれだ。上記画像はMacBook Air(2020年モデル)。テストしたのは上位機種にあたる、4コアCPUと512GBのストレージを搭載したモデルで、価格は13万4800円(税別)。MacBook Airは、多くの人に求められて2018年に「復活」した製品だ。あれはあれでいいものだった。実際、筆者は仕事に使っている。不満もあるが、まあ、そこまで大きなものでもなかった。

なのに、新型を触ると「ああ、全然違うじゃない......」とびっくりする。外観は同じなのに、中身が違うのだ。

MacBook Air
▲シルバーが筆者私物の2018年モデル(左)で、スペースグレイが貸出を受けた2020年モデル。こうやって並べても差がぜんぜんわからない。

どう違うかを解説してみよう。

買い換える価値のあるタイプフィールの進化

率直にいって、今回のMacBook Airを、外観だけで旧モデルと見分けるのは困難だ。重量は40g重くなっているが、インターフェースの数も位置も同じ。CPUなどのスペックはともかく、ディスプレイやスピーカーなどにも変更はない。試用機材が私物のMacBook Air(2018年モデル)と色違いだったから良かったものの、同じだったら戸惑っていたことだろう。

だが、キーボードは全然、本当に「全然」違う。

写真でご覧いただこう。

MacBook Air
▲2020年モデル

MacBook Air
▲2018年モデル

シルバーが2018年モデル、スペースグレイが2020年モデルだ。どちらもわかりやすいように、キーボードバックライトは一番明るい状態にしている。2020年モデルはキーが2018年モデルより持ち上がっていて、光が少し漏れているのがわかるだろうか。

新MacBook Airに搭載された「Magic Keyboard」ではキーのストロークが1mmになり、タイプフィールがずいぶん変わった。

せっかくなので、以下に、タイプ音を録音したデータを公開する。どちらも非常に静かな室内で、計測する機器の横に高音質録音ができるソニーのリニアPCMレコーダー「PCM-A10」を置いて録音している。

MacBook Air
▲リニアPCMレコーダーでタイプ音を記録。


比較したのは、「iPad Pro用Smart Keyboard(2018年モデル用)」「MacBook Air(2018年モデル)」、そして新MacBook Air。

もう、本当に違うのだ。

このところのアップル製品のキーボードは、「ぺたぺた」という擬音がよく似合う。キーの沈み込み範囲が狭いぶん、底にあたる時に大きな音を立てやすく、底打ちの際に逃げる力で疲れやすかった。

筆者はキーのタイプに力がこもる。いわゆる「カチャターン!」な人だ。だから、筆者が取材したり記事を書いたりしている横にいる人は、ひたすら「ペタペタペタペタ、パチーン!」という音を聞き続ける事になる。ごめんなさい、この際謝っておきます。それはともかく、この辺の「ぺたぺた」具合は、MacBook Airでも、iPad ProのSmart Keyboardでも変わらない。外付け製品として売られている「Magic Keyboard」はストロークがあってタイプ感は良くなるが、「ぺたぺた音」が目立つ点に違いはない。

だが新MacBook Airは「ぺたぺた」しない。「とすとす」だ。

ストロークが長くなったぶん、チャカチャカ・ぺたぺたという高い音がしなくなり、非常に音が小さくなった。前出の録音だとそれなりに聞こえるが、カフェやオフィスなどの回りに騒音がある環境では、もうほとんど気づかないのではないか。スタバであろうが会見場であろうが存在感を発揮したこれまでのキーボードとは比べものにならない。

この構造のキーボードは、昨年発売された「MacBook Pro 16インチモデル」から採用されたもので、5月に発売予定のiPad Pro用の「Magic Keyboard」でも採用される。「MacBook Pro 16インチモデル」は筆者ももちろんすでに触れており、変化は体感していたものの、日常使い慣れたMacBook Airに搭載されるとこんなにインパクトがあったのか、と改めて驚いた。

構造変化で「押す力」は必要に。それでも快適さはプラス

もちろんトレードオフはある。

これは本音だが、前のキーボードも嫌いじゃなかった。音はかなり残念だし、指先が痛くなる感じはあったのだが、手首の動きは少なくて済んだからだ。

アップルは、キーが沈み込む範囲を薄くし、指の押し下げ量を減らすことによって、「力がいらないキーボード」を指向していた。

この効果は確かにあって、特にMacBook Airや13インチMacBook Proのキーボードは、他のPCのキーボードに比べ「押すのに力がいらない」印象が強い。

今回のMacBook Airのキーボードは、構造を見直して、沈み込みの深さを「1mm」にし、ラバードームでキーを支える形にすることで、底打ち感を軽減し、キーの音が目立たない形にしている。要は「わりと一般的な構造」のキーボードに戻したのだが。

結果として、ラバードームでキーを押さえる構造であるためか、「キーを押し下げる」ために必要な力は大きくなったように感じる。だから、これまでのMacBook Airから移行すると一瞬「キーが重い」と感じるはずだ。

ただこれは、他のノートPCでも同じようなところがある。

一方で、キーを押す力、指を押し下げる力がいらないことは、「快適なタイプ」においてそこまで重要なものではない。「快適なタッチ」「静かなタイプ音」「明快なタイプ感」といった要素の方が重要だ、と思う人の方がずっと多いだろう。

だから、新MacBook Airのキーボードは、「著しく改善した」と断言していいだろう。このキーボードだけで買い換える価値はある。

もちろん、「2018年の復活時から、このキーボードが採用されていれば......」とは思うのだが。

旧モデルに対し「倍」の性能、ファンがさらに静か

もう一つ、今回のMacBook Airの重要な進化が「性能アップ」だ。

今回テストに使った機材は、CPUにインテルCore i 5(4コア、クロック周波数1.1GHz/最大3.5GHz)・メモリー8GB・ストレージ512GBのもの。カタログモデルとしては上位機に当たる。

それに対して、比較対象として用意した筆写私物のMacBook Air(2018年モデル)は、Core i5(2コア、クロック周波数1.6GHz/最大3.6GHz)・メモリー8GB・ストレージ256GBのもの。こちらも上位モデルだ。

2018年モデルは正直なところ、CPUの非力さが気になっていた。もちろん、ウェブを見たりオフィスアプリを使ったり、といったレベルでは不満がないし、動画編集などもできなくはない。

それより気になっていたのは「性能に余裕がない」ことだ。ちょっと裏で重い作業(例えば、大量のファイルの転送)などを始めるとファンが激しく回り始める。低負荷状態と高負荷状態の間に段階が小さく、すぐに高負荷へと移行することになった結果、「ファンが回る時間が意外と長い」と感じていた。動作音という意味ではマイナスだ。

それに対して2020年モデルは、明確に処理に余裕を感じる。なかなかファンが回り始めない。もちろんフルに高負荷な処理を行うとファンの音は目立つのだけれど、2018年モデルよりすぐにファンが止まる印象だ。なので、使っていて「静かになった」感が強い。触った時に極端な速度差を感じるか......というとそういうわけではないのだが。

Mac用の定番ベンチマークソフト「GeekBench 5」でのテスト結果を以下に示す。

2020年モデルのCPUの値は「シングルコア/981、マルチコア/2460」。2018年モデルでは「シングルコア/590、マルチコア/1380」だったから大幅向上だ。アップルが広告で言う通り「2倍」といっていい。同じ4コアのCPUを採用したMacBook Proにも迫る。

MacBook Air 2020MacBook Air 2020
▲白(上)が2018年モデルでの、黒が2020年モデルでのCPUテストの値。おおむね倍といっていい。

GPUは、第10 世代Core iシリーズ(通称「Ice Lake」の特徴でもある「Iris Plus 」になった。結果、「3483」が「7330」(ともにMetalでのテスト)へと向上している。ただしそれでも、iPad ProのGPU性能には敵わないし、NVIDIAやAMDのディスクリート型GPUに比べると差は大きい。「GPUをゴリゴリ回すゲームにはまだ能力が不足しているが、Apple Arcadeで提供されるような比較的規模の小さなゲームなら大丈夫だ。

MacBook Air 2020MacBook Air 2020
▲MetalをターゲットとしたGPUテスト。2018年モデル(上)からは大幅に性能アップしている。

その代償としてか、バッテリー動作時間はちょっと減っている。2018年モデルでは「最大12時間のワイヤレスインターネット利用、13時間の動画再生」という形になっているが、2020年モデルでは「最大11時間のワイヤレスインターネット利用、12時間の動画再生」になっている。

GeekBench 5の表示によれば、上位モデルの使っているCPUは「1030NG7」という見慣れないモデルナンバーのものになっている。「1030G7」はインテルのデータベースにもあるのだが、「1030NG7」がどういう特徴のものかは不明だ。

MacBook Air 2020
▲GeekBench 5の表示。CPUはCore i5の「1030NG7」となっている。

新MacBook Airには、Core i3採用でストレージが256GBの下位モデル(10 万4800円)と、試用した上位モデル(13万4800円)の2モデルがある。もちろん、ストレージのCTO は可能だ。

どちらも2018年モデル・2019年モデルから価格が下がっており、とにかくコストパフォーマンスは上がった。

問題は下位と上位、どちらを選ぶかだが、「下位モデルでも何割か速度アップしているが、上位モデルからはかなり落ちる」のではないか、と予想できる。

ストレージが同じ価格帯で倍になり、キーボードが劇的に変わったことを考えると、「とにかく安く下位モデルを」というのはアリな選択だが、「3万円程度の差で倍のストレージと大きな速度差」だと思えば、上位機種のコスパはさらに上。悩みどころだが、本誌読者になら上位機種をおすすめしたい。

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