「Mate 30 Pro 5G」日本投入から考える、ファーウェイの5G市場戦略:山根博士のスマホよもやま話

海外メーカーの5Gスマートフォン投入の道を切り開く

山根博士 (Yasuhiro Yamane)
山根博士 (Yasuhiro Yamane), @hkyamane
2020年03月24日, 午前 10:30 in huawei
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ファーウェイが「Mate 30 Pro 5G」を日本で販売します。これから5Gが始まるという絶妙なタイミングで、しかも通信キャリアからではなくSIMフリー端末としてオープンマーケットで販売されます。日本のSIMフリースマートフォン市場はiPhoneを除けばミッドレンジや低価格なエントリーモデルが多く、売れ筋モデルは5万円以下あたり。一方Mate 30 Pro 5Gは税別12万8800円(税込み14万1600円)とかなり高価です。

3キャリアの5Gサービスが出そろい、5Gスマートフォンも様々なものが出てきます。10万円を切る「低価格」なモデルもありますが、スペックを見てみると価格相応というところでしょうか。8K録画やミリ波対応が必要ならば高価な上位モデルを選べばよく、5Gの開始に際して端末をある程度選べるように各キャリアはラインナップをうまく揃えています。

ファーウェイはこれまでドコモやKDDIに4Gスマートフォンを納入してきました。しかし5GのハイエンドモデルとなるMate 30 Pro 5Gは採用されてません。その理由はグーグルサービス(GMS)非搭載により、既存のアプリがすんなりと導入できないからでしょう。ファーウェイ独自のサービスとなるHMSで提供されるアプリストア「AppGallery」は、日本で利用される主要なアプリがまだ提供されておらず、キャリア側としては売りにくい状況なのでしょう。

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とはいえファーウェイが提供する「Phone Clone」アプリを使えば、現在使っているファーウェイや他社のAndroidスマートフォンからある程度アプリをコピーすることが可能です。またAppGalleryでもFacebookなど一部のアプリはダウンロードできるようになっています。筆者の環境ではPhone Cloneを使いLINE LiteをファーウェイP30 ProからMate 30 Pro 5Gへコピーすることは可能でした。ファーウェイとしては今後もメジャーアプリのAppGalleryへの対応を働きかけており、いずれGMS非搭載のファーウェイスマートフォンでもある程度自由にアプリを落とせるようになると思われます。

このようにアプリの問題はありますが、ファーウェイが5Gスマートフォンを日本のSIMフリー市場で出してきたことには大きな意義があると筆者は感じます。今では4Gスマートフォンも数多くの製品がSIMフリーで販売されており、通信キャリアとの回線契約とは別にスマートフォンだけを買うことも自由にできるようになりました。一方5Gに関しては通信キャリアとの相互接続性試験(IOT)が4G以上に複雑になることもあり、5Gスマートフォンは基本的にドコモ、KDDI、ソフトバンクと5G契約を行い購入するのが一般的な買い方になります。

しかしファーウェイのMate 30 Pro 5Gのように、5GスマートフォンがSIMフリーで販売されるとなると、他のメーカー、特にMNO 3社に端末を納入していない会社の5Gスマートフォンが今後日本市場に参入しやすくなります。もちろん各キャリアとのIOTを済ませることは重要となりますが、キャリアの要求仕様、たとえばFelicaや防水などを満たしていない5GスマートフォンをSIMフリーとして日本市場に出す道が開けたわけです。

海外市場を見ると、5Gスマートフォンは昨年すでに30機種以上出ており、今年に入ってからも20機種以上が発表・発売されています。これに対して日本で発売になる5Gスマートフォンは3キャリア合わせても10機種程度。SIMフリー市場が立ち上がる前と同じ状況で、日本で5Gスマートフォンを買おうと思うとMate 30 Pro 5G以外はキャリアが選んだ端末だけという状況です。

たとえば5Gではクラウドゲームがより実用的になりますから、5G対応のゲーミングスマートフォンへの注目も高まるでしょう。TAKUMI Japanが出している「Black Shark」や、YSTが代理店となって販売している「Red Magic」といったゲーミングスマートフォンの5Gモデルはすでに中国で発売・発表になっています。

日本の5Gスマートフォン市場が「キャリア販売の5Gスマートフォンのみ」という状況になったなら、これらの5Gゲーミングスマートフォンが日本で発売される可能性は限りなくゼロに近かったでしょう。しかしMate 30 Pro 5Gがキャリアを通さず販売を始めることで、5GスマートフォンのSIMフリー端末市場が早々に立ち上がろうとしているわけです。

ファーウェイは3月26日に「P40」(仮称)を発表します。すでに海外市場では折りたたみスマートフォン「Mate Xs」を順次発売していますし、中国では「nova 6 5G」も販売されています。いずれも5Gに対応しており、日本でMate 30 Pro 5GのSIMフリー販売がうまく流れてくれれば、これらの端末の今後の日本投入もありうるでしょう。

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Mate 30 Pro 5GがHMSではなくGMS対応なら、すんなりとドコモから発売になったかもしれません。しかしドコモが販売を見送った結果、ハイスペックな5Gスマートフォンをキャリアを通さないルートで販売するという英断に踏み切ったわけです。GMS/HMSの話を抜けば、Mate 30 Pro 5Gのスペックは3月に日本で発表された各メーカーの5Gスマートフォンの上位モデルに並びます。5Gスマートフォンの購入を考える層にとっては選択肢の一つとして悩ましい存在になるでしょう。

なお2月のMate Xs発表会後にファーウェイののリチャード・ユーCEOにインタビューを行った時、同氏はHMSの機能やAppGalleryへのアプリ追加をこれからも強化すると話しました。しかしアメリカの制裁が無くなれば、GMSの搭載も充分あると、グーグルとの距離を置こうとしているようには感じられませんでした。ファーウェイが目指しているのは完全なる「脱・グーグル」ではなく、アプリストアのエコシステムを自社構築することで、新たなマネタイズの道を考えていると思われます。

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すなわちファーウェイのスマートデバイスは今後、
1.Android OS(EMUI)+HMS+AppGallery
2.Android OS(EMUI)+GMS+AppGallery
3.HarmonyOS+AppGallery
のように、どのOS/モバイルサービスを採用したとしても、アプリケーションの展開は自社のAppGalleryへと移行していく、と考えているように筆者は感じました。

どんなに優れたハードウェアを搭載していても、ソフトウェア・アプリケーションが無くてはスマートフォンとしては成り立ちません。Mate 30 Pro 5Gの10万円を超える価格は5Gスマートフォンとしては決して高くはなく、性能を考えると妥当だと筆者は思います。日本の5G SIMフリースマートフォン市場を盛り上げるためにも、AppGalleryへのLINEなどメジャーアプリの対応を急いでもらいたいものです。

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