5Gと性能強化で今度こそクラウドゲームの時代は到来するのか(佐野正弘)

通信とクラウド性能強化で再注目

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年04月10日, 午前 09:10 in gaming
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新型コロナウイルスの影響で家から出ない日々が続いている人も少なくないかと思いますが、そうした自宅で楽しめる娯楽の定番の1つとなっているのがコンピューターゲームです。コンピューターゲームは従来、専用のゲーム機、あるいはパソコンやスマートフォンなど、手元ある何らかのコンピューター上で直接ゲームを動かすものが一般的でしたが、最近その常識を変えようという動きが加速しているようです。

それは「クラウドゲーム」の台頭です。これは要するにゲームのストリーミング配信サービスと言うべきもので、プレーヤーの操作をインターネット経由でクラウドに伝え、クラウドがゲームの処理をした結果を映像としてプレーヤーの端末に配信することにより、ゲームプレイを実現するというのが大まかな仕組みとなります。

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▲フィンランドのHatch Entertainmentが提供するクラウドゲームサービス「Hatch」。NTTドコモの出資を受け、日本でもスマートフォンやSTB向けのサービス提供がなされている

クラウドゲームの最大のメリットは、インターネットに接続さえできていれば、ハードウェアを選ぶことなくゲームを提供できることです。クラウドゲームで実際のゲーム処理をするのは端末ではなくクラウドであり、手元のデバイスは、極端なことを言えばネットワークに接続しており映像を表示できれば何でもいいということになるので、テレビでもパソコンでもスマートフォンでも、デバイスを問うことなく同じゲームをプレイできる訳です。

またクラウドの性能さえ向上すれば、手元のハードウェアの性能を問わず高いクオリティのゲームを提供できるのもメリットです。例えば従来、3Dによる高精細なグラフィックを駆使したリアルなゲームを楽しむには、非常に性能が高く、しかも高額なハードを用意する必要がありました。ですがクラウドゲームでは手元のデバイスの性能が低くても、そうしたゲームを快適にプレイできる訳です。

最近になって注目されるようになったクラウドゲームですが、その取り組み自体は2000年代頃から続いているものでもあります。実際これまでにも「G-cluster」や「OnLive」、「Gaikai」「G CLOUD」など多くのクラウドゲーミングサービスが登場し、何度か注目を集めたことがありますし、現在でもソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が、独自のクラウドゲームサービス「PlayStation Now」を提供しています。

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▲クラウドゲームに関する取り組みは古くから続いており、例えばNTTドコモは2011年、LTE対応タブレットの発売に合わせてNHN Japanが当時提供していたクラウドゲームサービス「G CLOUD」の提供を打ち出していた

ですがクラウドゲームで大成功を収めたものがあるかと言われると、残念ながら「ない」というのが現状であり、既にサービスを終了してしまったものもいくつかあるようです。クラウドゲームに対する認知も決して高まっているとは言えないというのが正直な所ではないでしょか。

なぜ多くの人がクラウドゲームではなく従来型のゲームを選んでいるのかといえば、その理由は大きく2つあると考えられます。1つはネットワーク側の問題で、先にも触れた通り、クラウドゲームはゲームの映像をストリーミング配信する形となるため、快適なプレイには高速かつ安定した通信速度が求められます。

ですがより問題となるのがネットワーク遅延です。クラウドゲームでは、プレーヤーの操作をクラウドに送るまでの距離や、クラウドでの処理時間などによってどうしても遅れが生じてしまうことから、プレーヤーの操作と実際の動きにずれが生じやすいのです。それゆえシビアな操作が要求されるアクションゲームなどはネットワーク環境が悪いとプレイが難しくなるなど、クラウドゲームには向き不向きがあったのも事実です。

そしてもう1つはクラウド側の性能の問題です。従来提供されてきたクラウドゲームの内容を見ますと、カジュアルゲームや旧作が主体となっているサービスが多く、最新のゲームをプレイしたいユーザーのニーズにはあまり応えられていない様子がうかがえます。

その理由にはもちろん、サービス提供者の側がゲームのラインアップを短期間で多く揃える狙いも大きいでしょう。しかしながらやはり最新のゲーム機やゲーミングPCなどと比べると、個々のユーザーに割り当てられるクラウドの性能がそこまで高くないことも背景にあるといえそうです。

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▲2017年に7月に実施した、ヤフーのWebゲームサービス「ゲームプラス」の発表会より。クラウドゲームの提供もなされているが、やはり「FINAL FANTASY X」など旧作が主だ

ではなぜ、そのクラウドゲームが注目されるようになってきたのかといえば、クラウドゲームが抱える2つの課題が解消に向かいつつあるからでしょう。ネットワークに関して言えば、特に多くの人が利用するモバイルネットワークの進化が、クラウドゲームの広がりを後押ししようとしている様子がうかがえます。

それが次世代モバイル通信規格「5G」の登場です。5Gは理論値で最大20Gbpsを実現するなど4Gより一層の高速大容量通信を実現するのに加え、ネットワーク遅延が1ミリ秒と非常に小さく操作のずれがより起きにくいことから、クラウドゲームとの親和性が非常に高いとされているのです。

実際世界的な傾向を見ても、携帯電話会社は5Gの性能を生かす目玉サービスの1つとして、クラウドゲームをアピールする傾向が強いようです。国内でもKDDIとソフトバンクが、5Gサービスの開始に合わせてエヌビディアのクラウドゲームサービス「GeForce NOW」を提供すると発表していますし、NTTドコモも独自のゲームサービス「dゲーム」にて、「真・三國無双8」や「FINAL FANTASY XV」などコンシューマーゲーム機のタイトルを、クラウドゲームとしてスマートフォン向けに提供することを打ち出しています。

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▲NTTドコモは5Gのサービス提供開始に合わせる形で「dゲーム」を強化。「真・三國無双8」や「FINAL FANTASY XV」など、高性能を要求するコンシューマーゲーム機向けのゲームをクラウドゲームとして、スマートフォン向けに提供するとしている

一方のクラウド性能の進化という面で、注目されたのが2019年にサービスを開始したグーグルの「Stadia」です。StadiaはChromeが利用できる端末であればプレイできるというクラウドゲームサービスですが、ゲーミングPC並みの性能を持つクラウドをプレーヤー1人ずつに割り当て、HDR対応の4K映像を秒間60コマで配信できるクラウドゲーム環境を実現できることを打ち出して大きな話題となりました。

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▲グーグルが2019年に提供を開始したクラウドゲームサービス「Stadia」は、ゲーミングPC並みの性能を持つクラウドを1人ずつに割り当て、Chromeさえあれば高度なゲームが楽しめるとして大きな話題となった

グーグルがクラウドゲームに参入したということにも驚きがありましたが、それ以上に、非常に高い性能を持つクラウドを活用するとしたことが、ゲーム業界全体に与えたインパクトは大きかったといえ、ライバル他社もクラウドゲームの強化に向けた動きを加速しているようです。

特に大きな動きを見せているのが「Microsoft Azure」を持つマイクロソフトで、独自のクラウドゲームサービス「Project xCloud」のプレビューの本格サービス開始に向けた準備を進めているのに加え、ゲーム機でライバルとなるソニーと提携し、ソニーのクラウドゲームにMicrosoft Azureを活用する取り組みも進めています。また現状では噂に過ぎませんが、やはりクラウドサービスで大手のアマゾン・ドット・コムも、クラウドゲームサービスの提供に向けた動きを進めているのではないかという報道もいくつか見られます。

こうした環境面での大きな変化があるからこそ、クラウドゲームはいま大きな注目を集めるに至ったといえるでしょう。とはいえ国内の動向を見ていても、5Gのネットワーク整備が進むのはまだまだ先のことですし、クラウドの性能に関しても、既に一部の国でサービスを開始しているStadiaの評価があまり芳しくないことから、まだ改善の余地が大きいように感じます。

そうした状況が長く続けば再びクラウドゲームへの関心が薄れてしまうことにもなりかねないでしょう。真にクラウドゲームの時代が訪れるかどうか、まだ当分予断を許さない状況が続くといえそうです。
 
 

 

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