Magic Keyboard+iPad Proは高価だが、圧倒的な快適さで過去のキーボードケースを遥かに凌駕する(西田宗千佳)

2018年モデルでも使用可能

西田宗千佳
西田宗千佳
2020年04月20日, 午後 10:00 in IpadPro
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新型iPad Pro同時に発表された「Magic Keyboard」がついに発売。さっそくレビューをお届けする。

3月の新iPad Proに合わせて発表されたMagic Keyboardだが、当初はずいぶん先の5月発売とされていた。それがいきなり1か月の出荷前倒し。うれしい反面、「2か月あると思って、Smart Keyboard Folioを買っちゃった」という怨嗟の声も聞こえてくる。Appleも罪作りなことをしたものだ。



それはともかく。

Magic Keyboardはそのデザインの特異さから、発表と同時に話題となっていた。では、実際の使い勝手はどうなのか? ガリガリと原稿を書いて確かめてみた。なお、本記事は、文章はもちろん画像から動画まで、全てiPad Pro + Magic Keyboardで作っている。加えて、トータルで1万5000字ほどの文章を実際に実機で書いたうえでのレビューとなる。

ipad pro magic keyboard
▲12.9インチiPad ProとMagic Keyboardのセット。写真のiPad Proは2020年モデルだが、2018年モデルでも使える

テスト機材として提供してされたのは12.9インチ版となるため、11インチ版とはサイズ面を理由とした使い勝手に違いがある可能性もある。機構・機能に差異はないはずだが、その点をご了承いただきたい。

巧みなヒンジ構造で「iPadが宙に浮く」デザインを実現

Magic Keyboardの特徴は、まるでiPadが浮いているようなデザインにある。Appleの公式写真をみて「どんな構造になっているのだろう」と気になった人も多いのではないだろうか。

まず、そのあたりの答え合わせからいこう。

「iPad用」を謳うキーボード+ケースの組み合わせは意外と多い。だが、それらは基本的に「ケース」である。ほとんどの場合はケースにキーボードがくっついていて、「ケースにiPadをはめる」ような構造になっている。ロジクールの「Slim Folio」などはその典型だ。

一方、Magic KeyboardはSmart Keyboard Folio同様、「マグネットでiPadの背面に貼り付ける」構造となっている。

違うのは、本体の背面に張り付く側が下3分の1くらいから「折り曲がる」構造であること、そして、キーボード側と張り付く側をしっかりとしたヒンジがつないでいることだ。

この構造の場合、本体の傾きを決めているのは「張り付く側」であり、中央のヒンジはほぼ「角度が決め打ち」になる。どんな動きになるかは、言葉で説明するより写真で見る方がわかりやすい。

ipad pro magic keyboard
▲iPad Proをつけずに曲げてみる。どんな構造なのか、よりわかりやすいはずだ

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▲横からみるとこんな感じ

Smart Keyboard Folioとの最大の違いは、iPadの傾きを調整できることだ。傾きは好きなところで安定して止められる。ただ、傾きは奥に130度くらいまでで、ノートPCでいうと「あんまり奥までは倒せない」くらいである。

ipad pro magic keyboard
▲iPadの傾きは調節可能。自由な角度で止められるうえに、かなりしっかりしていて安定感がある

そして、他のキーボードとの違いは、キーの面から本体まで、2.5cm程度の「空間」があることだ。ノートPCと比較すると、そのぶんディスプレイ部が上に配置される印象となる。これはiPadのようなデバイスではプラスだ。最上段のキーをタイプする時に画面に指が当たることもないし、画面の最下部を触る時にキーを意識する必要もない。また、ディスプレイ面が体により近い場所に来ることになるので、ほんのちょっとだが「手を伸ばす距離」が減る。

この辺はいかにも「専用設計」的な配慮だ。よくできている。

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▲左側のヒンジ部には、USB Type-Cのコネクタが。ただしこちらは電源供給のみとなる

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▲メモリーカードリーダーなどを使う時は、iPad Pro本体にあるUSB Type-Cのコネクタを併用することになる

本体下部左側のヒンジの中には、電源専用のUSB Type-Cのコネクタがある。ここに電源を繋いでおけば、本体をマグネットでパチンとくっつけることで一体化し、充電が始まる。これが思いのほか快適だ。ケース脱着に関わる手間は一切ない。卓上ではMagic Keyboardをつけて使いつつ、離席するときに本体だけをサッと外して持ち運べる。
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▲Magic Keyboardと本体の接続部をアップで。マグネットでくっついており、ちょっと力をかければ簡単に外れる。2020年モデルの場合、こんな風にカメラ部が穴にぴったり収まる。構造上、角などは保護されないので、落とさないように注意を

iPad Pro本体より重い! 「重いがゆえに安定する」部分も

ただその性質上、できないこと・厳しいこともある。

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▲たたんでディスプレイを保護することはできるが、つけたままキーボードを背面まで持っていくことはできない。合わせて1.3kgを超えるのでこう持つとかなり重い

まず、「キーボードの面を裏返してiPadの背面に持っていき、ディスプレイ面だけにして使う」ことはできない。2-in-1タイプのPCにはそうしたことができるものもあるし、Smart Keyboard Folioではできたが、Magic Keyboardではできない。

理由はおそらく「持ったままタブレットとして使う」ことを想定していないから。シンプルに重いのだ。

実機の重さを計測してみたところ、12.9インチ版のMagic Keyboardは、キーボードだけで約700gもある。iPad Pro本体(643g)より重い。両方を合計すると、MacBook Air(1.29kg)を超える。細かい数字はともかく、MacBook Airなどの「ちょっと重い13インチクラスのノートPC」に持った感覚はほぼ近い。

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▲MacBook Air(2020年モデル)と並べてみた。印象がかなり近いが、ディスプレイの縦横比などの違いから、全高はiPad Pro+Magic Keyboardの方が高くなる。

重い理由は間違いなく、キーボードとしてしっかりしたものを採用したからだ。他の「キーボード重視のiPadケース」も、結局はみな重量級になっている。前述のように、Magic Keyboardは凝った良いギミックを搭載しているので、さらに重くなっている。「できる限り軽い機器を持ち歩きたい」と思っている人にはこの時点で魅力が薄い、と感じられるかもしれない。この欠点は否定しようがない。

一方で、重量級になったことでプラスの面もある。それは「グラグラしない」こと、「膝の上で使っても安定する」ことだ。

2-in-1のPCやタブレットは、ディスプレイ側が本体になり、重さがそちらに集中する関係上、安定性に問題を抱えやすい。ディスプレイ側がグラグラ揺れたり、膝の上で使う時に倒れやすかったりする。

だが、 iPad Pro + Magic Keyboardの組み合わせではそれが生じない。ヒンジの強度がしっかりしていることも大きいだろう。タイピングするうえでこれは非常に重要だ。間違いなく、Appleは「重くなるのをわかった上で、あえてこのバランス」にしているということなのだろう。

タイプ感は上々、トラックパッドは「素晴らしく快適」、残る課題は「価格」


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▲キーを上から。ファンクションキーがない以外は標準的なキー配列。タッチパッドはMacBook系よりサイズが小さいが、操作感は同等だ

問題は操作性だ。

タイプ感は非常にいい。新しいMacBook Airと同じくシザー式のキーボードを採用しているが、本当に打ちやすい。キーボードバックライトも入っていて、暗闇でも打てる。ただし、キーボードバックライトの強さの調節はできない。

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▲Smart Keyboard Folio(11インチ用)と並べてみた。キーの形状などがまったく異なることに注目

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▲キーボードバックライトも内蔵する

ではタイプ音はどうか? 自分の感覚で言えば、「少し目立つ音で、MacBook Airより大きい。だが、他のノートPCより目立つほどではないし、Smart Keyboard Folioよりはずっといい」というものだ。このあたりは比較動画を作ってあるので、そちらをご覧いただきたい。

▲iPad Pro用のSmart Keyboard Folio、新しいMagic Keyboard、そしてMacBook Air(2020年モデル)のタイプ音を比較。後者2つは同じような傾向のタイプ音だが、MacBook Airの方が音は小さい

キーボードの仕様としてちょっと気になるのは、音量や明るさの調節などのMac用キーボードにはある「ファンクションキー」がない、ということだ。iPadアプリではファンクションキーをほぼ使わないのでなくてもいいが、音量調節や音楽再生の停止がキーでできないのは、ちょっと不便とも感じる。

タイプ感と同等以上に重要なのは、「iPadでこれだけの重いキーボードを使う意味」だろう。PCやMacと同じような重さなら、PCやMacの方がいいという意見もあろうかと思う。しかも、Magic Keyboardは「高い」。12.9インチ用は税別で3万7800円もする。

Magic Keyboardは、これまでにあった「iPad用キーボードケース」をすべてを遥かに凌駕する、圧倒的に完成度の高いものだ。しかし結局は、「この高価なキーボードをつけてまで、iPad ProでPC的な使い方をしたいのか」という点に帰ってきてしまうのだ。ただその点について、iPadOS 13.4によって「これならアリになった」と筆者は思う。

まず、「ライブ変換」が快適であること。キーをタイプしてから文字が表示されて確定されるまで、一連の動作の遅延が小さく、変換効率も悪くない。ガンガンと文字を入力していくことに集中できる。ちょっと直感的な物言いで恐縮なのだが、「脳との直結感」がより高い。

いやまじめに、物書きにはいい環境になってきたのではないか。集中するためにポメラで書く人がいるように「遅延の少なさによる直結感」「全画面での執筆作業による集中」を求めてiPadを選ぶ人がいてもいい......そんな風に思っている。

トラックパッドの操作性もいい。というか「Magic Keyboardの存在を前提にOSをチューニングしたのではないか」と思うくらい快適だ。

iPadOS 13.4からはマウス/トラックパッドに対応しているが、「ジェスチャー操作」が重視されており、マウスよりもタッチパッドでの操作の方が快適だ。特に、「指を3本同時にタッチしてスワイプ」という操作が重要。上にスワイプすると「ホーム」に移り、左右にスワイプすると「アプリの切り替え」になる。指の操作では煩雑になりがちなアプリの切り替えも、Magic Keyboardならトラックパッド上で短く指を動かすだけでいい。

とはいえ、こうした部分の評価は人によって相当意見が分かれるだろう。「PCやMacを一切持たず、iPadだけでいいか」と言われると、強くお勧めはできない。IT機器全体にどうお金を使うのか。その中でiPadの位置づけはどうなのか? Magic Keyboardの価格は、そうした価値そのものへの大きな問いでもあるのかもしれない。


 
 

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