ダイレクトオーバーライトによる高速性が魅力だった光磁気ディスク「HS」:スイートメモリーズ File014

技術的には興味深い製品でした

宮里圭介(Keisuke Miyasato)
宮里圭介(Keisuke Miyasato), @miyasa
2020年05月19日, 午前 07:00 in sweetmemories
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removable media
[名称] HS
[種類] 光磁気ディスク
[記録方法] レーザーストローブ磁界変調方式
[サイズ] 約88mm
[容量] 650MB
[登場年] 1996年頃~

今や淘汰された懐かしの記録メディアたちに光を当てるこの連載企画では、ゆるっと集めているリムーバブルメディア・ドライブをふわっとご紹介していきます。

「HS」は、ソニー、日立製作所、3Mとで共同開発された光磁気ディスク。MOと同じく常温では磁化されにくく、高温で磁化されやすい記録素材が使われており、データ記録にレーザー光と磁気、読み出しにレーザー光を利用します。

カートリッジは角がちょっと丸いくらいで、MOとソックリ。これだけ見れば、「あれ?MOって640MBじゃなかったっけ?」と不思議に思う人の方が多いのではないでしょうか。

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大きな違いがあるのは、その中身。記録方法に「レーザーストローブ磁界変調方式」という、MOの「光強度変調方式」とは異なる方法を採用していたことです。

具体的にどう違うかというと、光強度変調では、先に磁気の向きを揃えて(消去)から、記録したい部分だけレーザーで温め極性を変える、という方法で記録していました。加える磁界の向きは一定のまま、レーザーの強弱(オンオフ)で記録するわけです。

これに対して磁界変調方式は、最初からレーザーで記録素材を温め、磁界の向きを変化させることで記録していきます。記録手順として消去が不要になっているぶん短時間で書き込めるため、HSの高速性を支える技術のひとつとなっていました。この消去がいらない方式が、ダイレクトオーバーライト(オーバーライト)と呼ばれています。

「レーザーストローブ」部分が抜けてしまいましたが、これはレーザーを常時照射するのではなく、高速にオンオフすることで一部重ねて記録し、レーザー光の照射径よりも小さい記録部(ピット)を作るというものです。雑にいえば、円を普通に並べるより、半分ずらしで重ねた方がいっぱい書けるよね、という感じでしょうか。これにより高密度化が可能となり、3.5インチという小さなメディアで、650MBというCD並みの容量が実現できたわけです。

これ以外にもMOとはいくつか異なる点があり、例えば内周からではなく高速な外周から利用することや、マークポジション記録ではなくマークエッジ記録を採用しているなど、230MBまでのMOで課題となっていた部分がしっかりと修正されていました。

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記録面を見てみると、データ記録エリアが一定角度ごとに放射状に分割されており、128MBのMOと同じCAVかなと思うわけです。しかし、HSディスクユニットとなる「HS-1」のリリースを見ると、「ZCAV」と書かれてるんですよね。

考えられるのは、ドライブ自体はZCAV対応として開発されたものの、この初代HSメディアはCAVだったという可能性です。後に1.3GBや2.5GBの大容量化の予定があったという話ですし、そのときにZCAVを採用するつもりだったと考えると、ありえそうな話です。まー、単なる誤記かもしれませんし、完全な妄想ですけどね。

HSがユニークな点はまだあって、サンプルサーボ方式を採用していたこともそのひとつ。これは、制御信号やクロック信号が書き込まれたサーボ領域が、データ記録エリア内にも一定間隔で用意されているというものです。気になったので記録面をさらに拡大してみたところ、データ記録エリア内がさらに細く分割されているのが確認できました。

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このメリットは何だろうと調べてみたところ、共同開発した日立製作所の資料(PDF)に、光学系が簡単になり制御性が向上するというメリットが書かれていました。これによると、どうやらROMとRAMのどちらでも制御しやすくなるようです。ROM/RAM混在メディアにも言及されていますから、HSがもし一定の支持を得ていたら、なかなか変態な面白いメディアが登場していたかもしれませんね。

なお、HSが一般販売された1996年2月には、すでに640MBのMOが発売されていたこともあり、3.5インチで650MBという容量はあまりインパクトのあるものとはなりませんでした。また、ダイレクトオーバーライトによる高速書き換えも、MOが1996年中に対応。こちらもスグに大きなアドバンテージとはいえなくなってしまいました。当然ながら128MBや230MBのMOとの互換性もありません。

技術的には面白いものでしたがユーザーからすればメリットが薄く、普及することなく消えていきました。


追伸:
HSは「Hyper Storage」の略語というのが有力ですが、根拠となる資料が見つかりません。私が確認できたものは、ディスクユニットとなる「HS-1」の箱に「HYPER STORAGE DRIVE」という記述がある事だけでした。どなたか知っていたら教えてください......。

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