KDDIとauじぶん銀行は、住宅ローンと通信回線の優遇割を発表した

KDDIとauじぶん銀行は、21年3月から、auの携帯電話回線と住宅ローンのセットで金利を引き下げる、「住宅ローンauモバイル優遇割」の提供を開始します。引き下げられる金利は0.07%。auじぶん銀行の電力サービス「じぶんでんき」で受けられる0.03%の金利引き下げと合わせると、合計で0.1%、通常より低金利で住宅ローンを借りられるようになります。

元々、auじぶん銀行は、都銀などと比べたときはもちろん、ネット銀行の中でも、住宅ローンは低金利な方でした。20年12月1日時点の金利は、変動金利が0.41%、固定10年が0.53%で、最安ではないものの、トップクラスと言ってもいいレベル。無料でつけられるガンや入院保証の団信もかなり手厚く、住宅ローンを借りる利用者からは、高い支持を得ていました。

KDDIの金融事業を統括する、auフィナンシャルホールディングスの勝木朋彦社長は、「お陰様で、これまでも大変ご好評をいただき、累計貸付実行額は1兆円を突破した」と語ります。「死亡、疾病時の返済保証や低金利によって、住宅ローンの人気ランキングでも20年上期に1位を獲得した」(同)といい、話題性の高さがうかがえます。

手厚い保証や低金利で、auじぶん銀行の住宅ローンは人気商品になっていた

21年3月から提供される住宅ローンauモバイル優遇割を使うと、この低金利がさらに低くなります。12月1日時点でのauじぶん銀行の住宅ローン金利は上記の通りですが、この割引とじぶんでんきの優遇割を組み合わせると、最低で変動金利が0.31%、固定10年金利が0.43%まで下がります。0.1%というとわずかな数字に聞こえますが、金額が大きく、かつ利息が利息を生む複利の住宅ローンの場合、これが効いてきます。

優遇割を組み合わせると、変動金利は0.31%まで下がる

勝木氏によると、3000万を35年ローンで借り入れた場合、0.1%の割引を適用すると、完済までの返済額が55万円安くなるといいます(借入利息が変動しないと仮定した場合)。1年あたりに直すと1万6000円弱といったところですが、必需品である携帯電話回線と電気をauとauじぶん銀行にまとめるだけでこれだけお得になるのは、決して小さくないでしょう。auの料金が2カ月分程度浮くと考えることもできるため、値下げを迫る総務省もビックリの安さになります。

35年で55万円もお得になる計算

途中でキャリアを変えても違約金があるわけではないため、厳密な意味での“縛り”ではありませんが、自ら縛られにいきたくなるような割引制度。「気持ちのいいキャッシュバック」という、田中プロ(KDDI前社長)の名言を思い出してしまいました。囲い込みと言えば囲い込みですが、むしろ積極的に囲われにいきたいと思える点は評価できそうです。

実際、複数のサービスを契約、利用しているユーザーは、解約率が大幅に下がることが数値によって証明されており、KDDIはこれを「エンゲージメントの深化」と呼んできました。金融・決済サービスや、住宅に紐づいた電気サービスは、特にその効果が高く、例えば19年5月の決算説明会では、auでんきとau回線をセットで契約しているユーザーの解約率が、au回線単独のユーザーに比べて半減していることが紹介されています。

複数のサービスを契約することで、解約率は低下する傾向にある

ただし、KDDIの東海林崇副社長は、「auじぶん銀行にとって、金利がどれだけ安いかは競争優位性になる」とした一方で、「KDDIにとっては、auをお選びいただけるところがある」と語っています。auじぶん銀行は、他行よりも金利を抑えることができ、KDDIはそれを目的にしたauユーザーを獲得したいという思惑があるようです。どちらかと言うと、既存のユーザーの囲い込みではなく、長期間auを使ってもらえる新規ユーザーを獲得するところに力点が置かれていることがうかがえました。

優遇割提供の狙いを語る、KDDIの東海林副社長

もっとも、よくよく条件を読んでいくと注意点もあり、住宅ローンauモバイル優遇割は、適用されるプランが限定されています。もっとも引っかかりそうなのが、回線です。適用条件には、「auの家族割プラスに加入していること」と記載されており、最低限、2回線が必要になるようです。夫婦や子どもなど、家族をau回線でそろえている場合はいいのですが、家族内でキャリアが違うようなケースでは、揉めごとになりそうな心配があります。KDDI運営でも、au以外のブランドも対象外のため、利用を検討している人は、注意しましょう。

適用条件を見ると、2回線以上必要なことが分かる

35年かけてローンを返済している間に、この条件が変わる可能性もあります。例えば、総務省から、「家族割は囲い込みでケシカラン!」と言われてしまった場合、適用の条件を変えざるをえなくなります。家族割プラス自体も、始まったのは19年5月で、まだ2年も経っていません。総務省からのチャチャ……ではなく、指摘で料金プランはここ数年、コロコロと変わっているため、条件の変更がないかどうかは、しっかり確認していく必要があります。

そもそも、10年1世代と言われる通信の世代交代の速度を踏まえると、35年後には8Gが始まっているわけで、今の料金プランがそのまま残っている可能性は、限りなくゼロに近いでしょう。35年という期間を考えると変動要素が非常に多いため、とりあえず、目先の数年間お得になるぐらいの考えで利用した方がいいかもしれません。