月2980円で10GB。KDDIの『楽天モバイル潰し』でMVNOが窮地に(石川温)

『まず潰されるのは我々』と関係者

石川温
石川温
2020年06月9日, 午後 04:51 in news
0シェア
FacebookTwitter
engadget

KDDIの楽天モバイル潰しが始まった。

KDDI傘下のUQコミュニケーションズが手がける格安スマホ事業であるUQモバイルが、第4のキャリアとして参入した楽天モバイルを意識した料金プランを投入してきた。

6月より「スマホプランR」という料金プランを新設。月額2980円で10GB使え、データ容量を超過しても1Mbpsで使えるようにしてきた。

この月額2980円は、楽天モバイルの料金プランである「UN-LIMIT」を意識した値付けだ。楽天モバイルは使い放題をアピールするが「自社構築エリアのみ」という制限がつく。UQモバイルとしては、全国で10GB使えるという点を訴求することで、楽天モバイルに興味のあるユーザーを振り向かせるつもりのようだ。

関係者が恐れる「auショップがUQを扱う日」

ただ、業界関係者の中では、UQモバイルが仕掛けてきた新料金プランよりも、KDDIによるUQモバイルのサブブランド化を脅威に感じている人が多い。

KDDIはUQコミュニケーションズが運営していたMVNO・UQモバイル事業を10月からKDDI本体に吸収。これにより、UQモバイルはMVNOではなくなり、KDDIの中でauがメインブランド、UQモバイルがサブブランドになる。つまり、全国のauショップでUQモバイルが扱われ、auショップに三太郎と三姉妹が並ぶことになるのだ。

MVNO関係者は「UQモバイルのサブブランド化は、総務省がUQやワイモバイルを潰しにかかる議論が出た頃から予想できた話。今後、MVNOは公平な競争ができなくなるのが不安でしかない」と憤る。

このKDDIによるUQモバイルのサブブランド化は、ソフトバンクのワイモバイル対抗とともに、楽天モバイル潰しとも言われている。

しかし、まず潰されるのはMVNOだと、MVNO関係者は危機感を募らせるのだ。

「auショップでauを辞めてMVNOに移行しようとするユーザーをUQモバイルで引き留めることが可能になる。KDDIグループ内でユーザーを囲い込むことが容易になるのではないか。MVNOにとっては顧客獲得がやりにくくなる」(MVNO関係者)

 現在、ソフトバンクは、ソフトバンクのキャリアショップにおいて、サブブランドのワイモバイルも併存したショップになっている。ソフトバンクから他社にMNPしようというユーザーをワイモバイルで引き留めている。

iPhoneをメインに大容量プランはソフトバンク、小容量でいいからできるだけ支払いを安価にしたいユーザーにはサブブランドのワイモバイルを勧めるという、一つのショップでユーザーのニーズに合わせてブランドを使い分けているのだ。

KDDIとしてもauショップでUQモバイルを抱え込むことで「格安スマホを使いたい」というユーザーが、他グループのMVNOやワイモバイルに流出するのを阻止しようというわけだ。

 現状、UQモバイル事業は、実に中途半端なポジションにぶら下がっている。

立場上は、KDDIからネットワークを借りている「MVNO」という立場だ。

業界関係者からすると、どこからどう見ても「KDDIと蜜月な関係」のように感じるが、「MVNO」ということで、KDDIが他の会社に提供する同じ条件で回線を借りていることになっている。

回線を借りているときに支払う接続料なども、当然のことながら、mineoを手掛けるオプテージなどと同じ条件とされている。

ただ、逆にKDDIはUQコミュニケーションズから回線を借りている立場でもある。KDDIはiPhoneやAndroidなど複数の周波数帯を束ねて通信の高速化や安定化を実現するキャリアアグリゲーションをする際にUQコミュニケーションズの電波を使っている。このKDDIとUQコミュニケーションズに関係に総務省は目をつけた。

UQモバイルが豊富な資金で宣伝活動ができたりするのはKDDIから潤沢な資金が提供されている可能性が考えられ、KDDIがUQコミュニケーションズから回線を借りる際に有利な条件が設定しているのはないか、というのだ。

そこで総務省はUQコミュニケーションズに対して第2種指定通信事業設備制度を適用。これにより、UQコミュニケーションズは接続料や接続条件などの接続約款の策定、届出をしなくてはいけなくなった。結果としてKDDIとUQコミュニケーションズの関係が透明化されたが、KDDIとUQにとっては可視化されたことで動きにくくなり、結果としてサブブランド化に舵を切ったようだ。

「ワイモバイル vs. UQモバイル」戦争が過熱へ

UQモバイルは、これまで総務省の手前、KDDIからの接続料をベースに料金プランを設計していることになっている。UQモバイルだけが、KDDIから回線を借りている他のMVNOよりも明らかに有利な料金プランを設定すると「KDDIから優遇されているのではないか」と横槍を入れられる可能性があった。

しかし、この秋からはMVNOを卒業し、晴れてauのサブブランドに生まれ変わる。これまでのしがらみから解放されて、自由に料金プランを決めることができるはずだ。おそらく、スマホプランRも内容が強化されるだろうし、auの「データMAX」や「ピタットプラン」とも差別化されてくるだろう。

UQモバイルがサブブランド化することで、ライバルのワイモバイルと同じ立場になる。

ソフトバンクとしては、ワイモバイルはMVNOではなくサブブランドなので、接続料といったしがらみもなく自由に料金プランを設計できるという強みがある。

この秋以降、「ワイモバイルvs.UQモバイル」のサブブランド戦争が過熱していきそうだ。

MVNOはサブブランドに対抗できない可能性

ひょっとすると、接続料という足かせをはめらている他のMVNOはこの2つのサブブランドに太刀打ちできなくなってしまうかもれない。

「安価にiPhoneを使いたい」という人はワイモバイルもしくはUQモバイルを選ぶことになるだろう。一方で「5G対応のiPhoneを使い放題のプランで楽しみたい」という人はNTTドコモ、au、ソフトバンクに留まり続けることになるではないか。

UQモバイルがMVNOからサブブランドになる一方、MVNOは接続料に縛られるため、自由な競争がやりにくい。総務省の失策により、UQモバイルがサブブランドとなり、結果としてMVNOが窮地に追い込まれようとしている。

 
 

 

TechCrunch 注目記事「新型コロナのソーシャルディスタンス(社会的距離戦略)を強力に支援するビデオチャットアプリ8選

新型コロナウイルス 関連アップデート[TechCrunch]
関連キーワード: news, gear
0シェア
FacebookTwitter

Sponsored Contents