Mobile Masahiro Sano

2021年9月15日に実施されるアップル発表イベントを直前に控えてか、携帯各社の動きが慌ただしくなってきました。実際、2021年9月13日にはKDDIが、翌14日にはソフトバンクが、相次いで新サービスの発表を実施しています。

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▲2021年9月13日にはKDDIが、翌14日にはソフトバンクが相次いで発表会を実施。業界の動きが急に慌ただしくなっている

中でも大きなインパクトをもたらしたのはKDDIの発表でしょう。その1つがオンライン専用料金プラン「povo」を「povo 2.0」にアップデートし、大幅なリニューアルを図ったことです。

その詳細は既に各種報道でなされている通りですが、注目を集めたポイントの1つは、やはりベースとなるプランの月額料金が0円だということ。もちろん0円で利用できるサービスはかなり限定されており、実際にはpovoの特徴でもある「トッピング」で通信容量を追加する必要があるのですが、そのトッピングも従来とは大きく異なり「7日間1GBで390円」「90日60GBで6490円」など、通信容量も期間も、料金も異なるトッピングの中から必要に応じたものを選んで随時適用する仕組みとなっています。

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▲「povo 2.0」は月額基本料は0円で、データ通信量をトッピングで追加する仕組みへと大幅に変更がなされた

必要に応じて必要な通信量を追加するというpovo 2.0の仕組みは、ある意味プリペイド(前払い)方式に近いものともいえます。日本ではプリペイド方式のサービスがほとんど普及していないことからpovo 2.0が画期的なように見えますが、海外でプリペイド方式のサービスは非常にポピュラーなもので、低所得層や新興国ユーザーなどからの支持が大きいことから、低価格実現のためにプリペイド方式の仕組みを取り入れたことは理にかなっているといえます。

ただ単にプリペイド方式を導入してしまうと、ポストペイド(後払い)方式と比べ収益性が低くなるという懸念もありますが、それをカバーしようとしているのが「#ギガ活」です。これはパートナー企業のサービスを利用すると通信量を増やすクーポンがもらえる仕組みで、KDDIは#ギガ活でパートナー企業にpovoユーザーを送客して収入を得る、マーケティングビジネスを展開してトッピングにとどまらない収益手段を確保することも狙っていると考えられます。

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▲パートナーの店舗でau PAYによる支払いをしたりすると通信量のトッピングがもらえる「#ギガ活」は、トッピング以外の収入を得る狙いもありそうだ

そしてもう1つ大きなインパクトを与えたのは、イーロン・マスク氏が率いるSpace Exploration Technologies(SpaceX)と提携したこと。KDDIはSpaceXが提供する衛星ブロードバンドサービス「Starlink」をauの基地局のバックホール回線に活用し、通常バックホール回線に用いている光ファイバーの敷設が難しい山間部や離島、あるいは災害時に用いる移動基地局車などで、従来より高速な通信を提供できるようにするとしています。

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▲KDDIはSpaceX社との提携も発表。衛星ブロードバンドサービスの「Starlink」を基地局に活用し、山間部や離島などのエリア高速化を図るとしている

それゆえ楽天モバイルなどが実現を目指している、衛星を基地局にして直接スマートフォンと通信する施策とは違って現実的な取り組みにはなるのですが、6Gでは成層圏や宇宙から広範囲のエリアをカバーすることが求められているだけに、衛星通信の本格活用が進みつつあるという意味でも大いに注目される施策であることは確かでしょう。

こうして見るとKDDIの発表は確かにインパクトがあるのですが、povoはそもそもスマートフォンに詳しい若い世代にターゲットを絞ったサービスですし、Starlinkの活用も、直接恩恵を受けられる人は限られています。実際に多くの人が恩恵を受ける施策が少ないと感じてしまったのも正直な所です。

一方でその翌日に実施されたソフトバンクの発表会の内容を振り返りますと、「Pixel 6 Pro」の独占販売や、同社が独占販売するというバルミューダのスマートフォンが2021年11月以降に発売されることが明らかになる、注目される要素はいくつかあったもののKDDIの発表と比べるとインパクトの弱さは否めません。

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▲ソフトバンクはグーグルの「Pixel 6」シリーズの販売を、発表会に先んじて発表。「Pixel 6 Pro」は独占販売するとしている

ですが発表内容からは、ソフトバンクがインパクトよりマス層に対する王道のアピールに力を入れている様子も見えてきます。その象徴的な例が「スーパーPayPayクーポン」です。

これはかつてソフトバンクが実施していた、契約者に対して金曜日に特定の店舗で利用できるお得なクーポンを配布する「SUPER FRIDAY」の後継とされるもの。SUPER FRIDAYは、その対象となった吉野家やサーティーワンアイスクリームなどで大行列ができるなど、色々な意味で話題を振りまいた注目度の高いサービスであり、それをスマートフォン決済サービス「PayPay」と組み合わせて復活させたのが、スーパーPayPayクーポンとなるようです。

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▲かつて大きな話題を振りまいた「SUPER FRIDAY」の後継サービス「スーパーPayPayクーポン」を発表。ソフトバンクユーザーがPayPayを使って特定店舗で決済すると、最大50%のPayPayボーナス付与が受けられるという

具体的にはソフトバンクのスマートフォン利用者に対し、特定の店舗で利用すると最大で50%のPayPayボーナス付与が受けられるクーポンを配布するとのこと。SUPER FRIDAYと違って何らかの商品がタダでもらえる訳ではありませんが、その分金曜以外でも利用できるほか、対象店舗の幅も広く、2021年10月は「ガスト」「ローソン」など、11月は「ウエルシア」「東急ハンズ」などが対象となるようです。実施の狙いはソフトバンクユーザーのPayPay利用促進といえますが、50%の還元は決して小さくないだけに、幅広い層が関心を寄せる可能性が高いと考えられます。

また5Gに関しても、マス層へのアピールに力を入れている様子を見て取ることができました。ソフトバンクは2021年10月末には基地局数が2万局、人口カバー率が80%を達成するとしていますが、エリア展開よりも時間を割いて説明していたのが、SNSなどで多くのユーザーが指摘し不満要素となっている、5Gの電波が入っているのに通信ができない、いわゆる「パケ止まり」の対策だったのです。

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▲ソフトバンクは5Gのエリア拡大に向けた施策だけでなく、ユーザーからの不満の声が多い5Gのパケ止まり対策にも言及している

パケ止まりは基地局からの5G電波が弱いエリアの端で、いつまでも5Gの電波をつかもうとすることで発生しがちなことから、ソフトバンクではエリア端の通信品質を改善。エリア端にいる場合はダウンロード、つまり基地局から端末への通信する際は高速な5Gを使いながらも、アップロード、つまり端末から基地局に通信する際にはより遠くに届きやすい4Gの電波を使うことで、通信ができなくなるという事態を避けるようにしているそうです。発表会でその対策をアピールする姿勢からは、5Gに対する不安を払しょくしてより多くの人に5Gを使ってもらう狙いがあるといえそうです。

こうして両社の発表内容を比べてみると、それぞれが注力するポイントと、戦略にはかなりの違いがあることが理解できるのではないでしょうか。ただKDDIは、メインブランドの「au」に関する発表は後日実施する方針のようで、まだ全ての手の内を明らかにしている訳ではない点は気になります。まだ動きを見せていないNTTドコモや楽天モバイルも含め、今後しばらくは携帯各社の動きが大きな関心を呼ぶこととなりそうです。


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