▲ライカが全面監修したLeitz Phone 1。製造はシャープが行い、ソフトバンクが独占販売している

ソフトバンクが独占販売する「Leitz Phone 1」は、ライカが初めて全面監修したスマホとして、大きな話題を集めました。1インチセンサーや、すべての画角を19mmの超広角レンズ1つでカバーする設計などは、ベースになったシャープの「AQUOS R6」と同じですが、Leitz Phone 1の佇まいはカメラそのもの。この端末専用のレンズキャップも、カメラ的な発想で開発されたスマホならではです。そんなLeitz Phone 1の開発メンバーに、このモデルのコンセプトや狙いを聞くことができました。

元々ライカは、スマホ業界を「注意深くモニタリングしてきた」(モバイルサービス グローバル・ディレクター ジェーン・ツイ氏)といいます。「スマートフォンとしての単なる電話やコミュニケーションの手段だけではなく、カメラデバイスとして使われていることが多い印象」(同)だからです。実際、スマホメーカー各社ともカメラ機能に磨きをかけることに注力しており、新製品が発表される際にも、その説明にかなりの時間が割かれています。

▲ジェーン・ツイ氏

デジカメとスマホのカメラでは、商品特性が違い、性能の差もありますが、「写真の撮影という観点では、(カメラとスマホの)垣根がなくなってきている」(同)というのがライカ側の認識です。であれば、ライカがスマホを手がけた方がいいのではないか——これが、自社ブランドでのスマホを開発した理由の1つだといいます。ツイ氏が「元々自社ブランドで(スマホを)出したいという気持ちがあり、温めていた考えを実現できた」と語っていたように、Leitz Phone 1は、ライカとして念願の自社ブランドスマホになりました。

▲Leitz Phone 1は、ライカとして初めてトータルで監修したスマホという位置づけ

Leitz Phone 1で狙ったのは、「ユーザーができる限り最高の品質で撮影できるようにデザインすること」(フロリアン・ヴァイラー博士)。スマホでありながらも、「日々の生活を切り取るだけでなく、撮った写真を大きく引き伸ばして壁に張ることも想定している」(同)といいます。また、カメラではなく、スマホとして開発することで「昔ながらのカメラ好きだけでなく、若い人や女性などにもLeitz Phone 1を喜んでいただけている」(ツイ氏)といい、ライカ自体のユーザー層のすそ野を広げる役割も担っているようです。

▲ユーザーが最高品質で撮影できることに注力して開発されたという。カメラのUIには、レンジファインダーからインスパイアされた「ブライトフレームを採用 (c)Anju

▲フロリアン・ヴァイラー氏

もっとも、冒頭で述べたように、Leitz Phone 1にはAQUOS R6というベースがあり、ゼロベースで設計されたスマホというわけではありません。AQUOS R6のカメラもライカが監修し、その画質は「ほぼ同じ」(ヴァイラー氏)。「工業デザインと材質の触感、UI、UXや(モノクロ撮影ができる)Leitz LooksはLeitz Phone 1のユニークなところ」(ツイ氏)というように差別化ポイントはありますが、ハードウェアスペックは共通しています。では、なぜライカはシャープをパートナーに選んだのでしょうか。

▲ベースになったAQUOS R6。画質面はほぼ共通だという

ツイ氏はその理由を、「同じようなエンジニアリングや企業文化を持ったメーカーと組みたいと思った」と語ります。シャープが日本のAndroidスマホメーカーとしてトップシェアであることや、技術力の高さから、「我々の哲学を理解・共感していただけるのではないか」(同)と考え、パートナーシップを結ぶことになったといいます。また、ライカが重視したのは、「一番美しい写真が撮れること」(同)。開発経験のないスマホをゼロベースで作るより、「クオリティが高く、我々が求めていたものがすでに入っている」(同)AQUOS R6をベースにしたことは、ある意味自然な流れと言えます。

一方で、製品を見れば分かるようにAQUOS R6とLeitz Phone 1では、デザインは別物と呼んでいいほどの差があります。これは、Leitz Phone 1の開発にあたり、「ライカのデザインヘリテージをしっかり踏襲した形に立ち返ってデザインを始めた」(シニア・インダストリアル・デザイナー ディビッド・スー氏)からです。「見た目や触感など、細かいところまでこだわり抜き、圧倒的にほかの製品と違ってライカだと分かるものにした」(同)という点が、Leitz Phone 1とAQUOS R6の大きな違いです。

▲筐体のデザインや手触りなどが、AQUOS R6とは大きく異なる。ライカが力を注いだのはここだ

▲ディビッド・スー氏

誤解を恐れず言えば、AQUOS R6より前のシャープのスマホは、カメラに強みがある端末とは言えませんでした。ディスプレイなどにはシャープの技術が凝縮されていたものの、画質面では他社の後塵を拝していたのも事実です。ここにライカが加わることで、「シャープとは最高品質のイメージング技術を搭載するというゴールを共有できた」(ヴァイラー氏)といいます。こうした目標設定があったため、「過去に培った経験や知見をすべて投入して、結果としていい製品ができた」(同)とのこと。シャープ側にも「カメラを積極的に強化したいという思いがあり、尽力いただいた」(ツイ氏)結果、AQUOS R6の画質は大きく向上して、Leitz Phone 1の投入にも結び付きました。

ただ、AQUOS R6をベースにしたことで、同機のカメラに対する不満点もそのままLeitz Phone 1に受け継がれてしまっています。具体的には、シャッターラグの大きさやオートフォーカスの遅さがそれに当たります。その理由について、ヴァイラー氏は「大型のセンサーには大型のレンズが必要になり、強力なアクチュエイターを搭載しなければならない。さらにF1.9ということもあり、フォーカス合わせの厳密さが求められるため、それが影響してシャッター速度に多少の遅れが生じている」と語ります。

▲Leitz Phone 1やAQUOS R6が搭載する1インチのイメージセンサー。大判化したことで、処理能力が求められた結果、シャッターラグは大きめになった

一方で、「継続的に進化させようとしている」(同)といいます。例えば、オートフォーカスについては、ToFを使うことでスピード感を高める工夫をしているといいます。画像の処理も、「より短時間でできるよう、進化は常にしていく」(同)としています。こうしたフィードバックはライカ側も把握しており、「まだまだ発展途上でやるべきことがある」(ツイ氏)という認識。ツイ氏が「日本のお客様に完ぺきに満足していただける製品を作り続けていきたい」と語るように、今後のアップデートにも期待が持てそうです。

ちなみに、Leitz Phone 1はソフトバンク独占で、日本限定の端末です。ライカ全面監修ということで発表時にはグローバルで注目を集めましたが、ツイ氏が「今は日本市場にフォーカスする」と語っているように、現時点での海外展開は予定していません。「スマートフォンは単に製品を投入するだけでなく、オペレーター(キャリア)との関係も大事」(同)と認識しているからです。その意味で、本機は独占モデルをアグレッシブに開拓するソフトバンクの戦略があってこそ実現した端末と言えるのかもしれません。