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2021年1月にオンラインで開催されたCES 2021のプレスカンファレンスで、LGは巻き取ることのできる「ローラブルディスプレイ」を搭載したスマートフォン「LG Rollable」をちら見せしました。しかしその一方でLGのスマートフォン事業は不振が続き、事業売却のうわさもされています。果たしてLG Rollableは2021年中にLGから発売されるのでしょうか?

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1月末には「LGがスマホから撤退かも」というニュースが広がりましたが、LG(LGエレクトロニクス)全体の事業は好調です。LGといえばTVや家電が有名ですが、美容家電も多数展開しています。また最近では新型コロナウィルスの感染防止用に電動ファンを内蔵したスマートマスク「PuriCare Wearable Air Purifier」も販売しています。このマスクはぜひ日本でも売ってほしいものですね。

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PuriCare Wearable Air Purifier

LGが1月29日に発表した決算によると、2020年は過去最大の成績を残しています。自宅に籠ることやリモートワークが進んだことで、TVや家電の消費が好調だったのです。しかしスマートフォンなどを手掛けるMC(モバイル・コミュニケーションズ)部門は赤字で、スマートフォン事業は不調のまっただ中にいます。

  • LG全体売上高:63兆2,620億ウォン(約5兆9864億円)- 前年比1.5%増

  • LG全体営業利益:3兆1,950億ウォン(約3022億円)- 前年比31.2%増

  • MC部門営業損失:8000億ウォン(約757億円) *韓国メディアによる推測

MC部門が好調ならば、LG全体の利益もさらに高まったはずです。赤字脱却のためには巨額な研究開発費がこれからも必要となりますが、万年赤字の部門をどうするかという議論が起きても不思議ではありません。LGのMC部門の不調は最近のことではなく、実は2015年第2四半期から「23連続4四半期」連続、5年以上も赤字を続けているのです。

LGは2009年にマイクロソフトとスマートフォンOSの戦略的提携を結びましたが、それによりAndroid OSスマートフォンの投入が他社より遅れました。この出遅れがそのまま今の状況につながっているかもしれません。2012年にフラッグシップシリーズ「Optimus G」をリリースしたとき、サムスンはすでに「Galaxy S III」を出していました。その後Optimusのブランドをやめ、「G2」「G3」では先進的な機能の搭載で市場で一定の存在感を認められていました。ディスプレイがたわむ「Flex」が出てきたのもこのころです。

しかしMC部門長期赤字の始まりとなる、2015年4月に投入した「G4」はUIの改良や本革ボディーなどを搭載したものの、エッジディスプレイ搭載とガラス&多層フィルム仕上げボディーとしたサムスンの「Galaxy S6 edge」を超える存在にはなれませんでした。カウンターポイントの調査を見ると、2015年第2四半期に前年同期比で最大のシェア下落となったのはLGだったのです。結果としてこのG4がMC部門失速を引き起こしてしまったといえます。

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翌年以降の製品を振り返ると、2016年「G5」の合体式はキワモノ止まり、2017年「G6」は世界初の18:9ワイドディスプレイを搭載しましたが、すぐにサムスンが18.5:9の「Galaxy S8」で追い抜きます。2018年はフラッグシップ機発表が5月に遅れたうえ、LGのスマートAIソリューション「LG ThinQ」の名前を冠した「G7 ThinQ」を投入。先進性をアピールしたかったのでしょうが、このネーミングはわかりにくく逆効果でした。

2019年は「G8 ThinQ」と「V50 ThinQ」のデュアルフラッグシップ路線で挑みましたがどちらも不振。G8 ThinQ搭載の「Z Camera」を覚えている人はいるでしょうか? V50 ThinQは5G国のみ投入だったことで販売先が限られてしまいました。

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2020年は「消費者に分かりやすいネーミング」そして「端末開発コストの削減」さらに「あっと目を引く機能」を考え「Velvet」「Wing」を投入しましたが、すでに中国メーカーが多数の製品を出す中では遅すぎたと思えます。T字型変形のWingは開発に時間がかかったとはいえ、美しいイメージ戦略で投入されたVelvetを2018年に出していれば市場は変わったのでは、とついつい思ってしまいます。なおどちらの機種もチップセットはSnapdragon 765Gを搭載しますが、MC部門不振の一員の一つはチップセットの供給不足もあったそうです。中国メーカーも同チップセットを積極的に搭載しており、競争力の低いLGはチップの予定数を購入できなかったのでしょう。

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前置きが長くなりましたが、ではLG Rollableは出てくるのでしょうか?LGはコンシューマー向けビジネスだけではなく、子会社のLGディスプレイがディスプレイの開発も行っています。iPhoneの一部モデルのディスプレイがLGからの供給であることは知られているように、LGディスプレイは独立したディスプレイメーカーとして最新のディスプレイを開発しています。

LG RollableがCES 2021で公開されたということは、LGディスプレイが巻き取り式のディスプレイを開発しているということのアピールでもあったでしょう。サムスンが折りたたみディスプレイをいち早く商用化できたように、スマートフォンメーカーがディスプレイメーカーも持つことは新機種の開発に大きなメリットとなります。OPPOやシャオミが折りたたみやローラブルスマートフォンの開発を行っているものの、ディスプレイは別メーカーが開発しているため、スマートフォンの製品化はどうしても遅くなります。

LGディスプレイは65インチの大型ローラブルディスプレイを開発済で、LGから「LG Rollable OLED TV R」として発売されています。LG Rollable OLED TV RはTVを使わないときはディスプレイ全体を隠すことができ、また天気予報やテキストニュースだけを流しておきたいときは全体の1/3程度だけを引き延ばして使うこともできます。TVの新しい使い方を提案してくれる製品です。

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スマートフォン向けのローラブルディスプレイも、片手で持てるスマートフォンを左右に引き延ばすとタブレットになるという「1台2役」を実現してくれます。5G時代は動画視聴が増える時代とも言われていますから、SNSのタイムラインで気になる動画を見つけて大画面で視聴する、といった使い方が日常的になるでしょう。ローラブルディスプレイの開発はディスプレイメーカーにとって最重要事項であり、開発したディスプレイをいち早く製品化するためには、同じ企業内でスマートフォンの開発を行っていることが優位に働きます。

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LGのスマートフォンは現在ベトナムで製造されており、ベトナムのコングロマリットであるVingroupがLGのスマートフォンのODM生産も行っています。実はこのVingroupにLGのスマートフォン事業を売却するという話も出ています。Vingroupは今やベトナムでサムスン、OPPOに次ぐ「Vsmart」ブランドのスマートフォンを展開しています。とはいえハイエンドモデルの開発ノウハウはまだ未知数です。

スマートフォンはスマート家電のコントローラーとしても有用であり、スマート家電を展開しているLGとしてはスマートフォン事業を簡単には手放したくないところでしょう。とはいえ現状ではMC部門の赤字脱却は難しいところ。そこでミドルレンジ以下のモデルはVingroupに売却し、LG本体としてはハイエンドモデルに特化し、AI機能やローラブルディスプレイなど新技術を搭載したモデルをプレミアム価格で出していく、という選択肢もあるでしょう。

幸いなことにLGにはプレミアム家電「SIGNATURE」ブランドがあり、ヨーロッパなどでは高い人気を誇っています。LGブランドのスマートフォンはVingroupに任せ、ローラブルディスプレイスマートフォンは「SIGNATURE Rollable」のように、SIGNATUREブランドで展開していく、そんな生き残りもあるように思います。もちろん価格は数十万円レベル、20万円、あるいは40万円かもしれません。しかし全く新しい技術を搭載し、さらにプレミアムな質感で仕上げた製品を求める層は必ずいます。

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数を稼ぐエントリーやミドルレンジモデルの競争力がなくなった今、新技術の開発に特化し、ローラブルスマートフォンなど上位モデルに特化することがLG本体に唯一、残された生き残りの道と考えられます。もしもLGがスマートフォン事業を売却したとしても、ローラブルスマートフォンはLGが自ら販売すると考えられます。そしてCESというテクノロジーイベントで大々的に発表したのですから、LG Rollableは今年中に発表されることは間違いないでしょう。