モバイルノートPCで重要な、軽さとバッテリー駆動時間のバランス、そしてお買得度に優れた手頃な価格設定などで、Engadget読者にもファンの多いであろう、LGエレクトロニクス製『LG gram』シリーズ。その2021年モデル(日本版)が、ついに発表となりました。

発売時期は2月下旬。価格は上写真の14インチ版『14Z90P』が15万6000円前後から、16インチ『16Z90P』が19万7000円前後から、17インチ『17Z90P』は22万2000円前後から(なお、これは店頭向けモデルの仕様。他に販売店限定モデルがあります)。

▲店頭モデルのラインアップと価格はこの通り。なお価格は、実売ベースでは下がる傾向にあります


最大の特徴は、全モデルで画面のアスペクト比を16:10に“縦方向拡大”し、同時に(基本的には)シリーズ当初から共通だった筐体設計を初めて大変更したこと。CPUもTiger Lakeことインテル第11世代Core iへと世代交代し、Thunderbolt 4端子も2基に(やっと!!)増加するなど、ライバルに比べて不利だった点も大きく手が入りました。

またシリーズを通しての長所だったバッテリー駆動時間も、CPUや液晶パネルの世代交代などによりさらに延長。公称値(JEITA 2.0測定法)ながら14インチ版では最大37時間、17インチモデルでも最大27時間と、大きく伸ばしています。

なお2020年モデルでは、14インチと15インチ版は約22~22.5時間、17インチ版は約19.5時間でした。

▲製品発表会でLGエレ側が提示した、現行ノートPCの重量と駆動時間比較マップ。こうした点におけるgramシリーズの優秀性が際立ちます

こうした改良にも関わらず、シリーズ名であるgram(=キロを付けなくとも表現できる軽さの意)の由来にもなっている、軽さは継承。14インチモデルは999g、17インチモデルは1.35kgと、現行モデルと同等に。16インチでは1190gと世界最軽量になっています。

ただし一方で残念ながら、LG gramがヘビーユーザーから支持されていた「超軽量モバイルノートながら、RAMやSSDの増設が可能」という点では後退に。SSDこそ現行と同じくM.2×2スロット構成ですが、RAMはオンボードのみ、増設不可となりました。


さて、今回の店頭向けモデルのラインナップは、3サイズ3色、6モデル。

本体(画面)サイズと解像度は下記の通りとなります。

  • 14インチ……1920×1200

  • 16インチ……2560×1600

  • 17インチ……2560×1600

とくに注目は、15インチに代わって登場した16インチ。これはアスペクト比の変更に起因するもののため、サイズ感などは現行の15インチモデルとほぼ同じです。一方で画面解像度は、現行の15インチがフルHD(1920×1080)だったため、一気に向上した格好に。アスペクト比と合わせて、17インチ版と同一になっています。

本体カラーは、従来のシリーズ定番色である白系の『スノーホワイト』と銀系の『クオールシルバー』に加え、ついに黒系『オブシディアンブラック』が加わり、3色となりました。

▲液晶パネルでの注目点が、一気に拡大した色域。DCI-P3をほぼカバーする広さとなりました

また画面周りでは、色域(色の表示できる範囲)の拡大も大きな改良点。現行機を含めた従来モデルでは、公称「sRGB比96%カバー」という仕様でしたが、今回は「DCI-P3比で99%カバー」と大胆に拡大。もちろんパネル駆動方式は、LGお得意のIPSを採用します。

このあたり、そもそも現行モデルまでsRGBベースだったのが「液晶(と大型有機EL)パネルのLG」としては遅かった感もありますが、ともあれ、仕様の上ではMacBook Pro/Airなどに並ぶ数値となったことは特筆すべき点でしょう。LGエレ側も、このあたりを「プロフェッショナル(グレード)ディスプレイ」とアピールします。

▲4辺ナローベゼル化に合わせて底面積も縮小。一気に“最新モバイルPC感”が増しています
▲正面から画面を見た状態。底面側ベゼルが目立たなくなりました。なおWebカメラは、しっかりと天面側搭載です

合わせての改良点となるのが、現行モデルでの3辺ナローベゼル設計から4辺ナローベゼル設計となり、底面側のベゼルがすっきりした点。この点は、昨今ライバルモデルでの進化が著しく、現行モデルでは若干目立ってきたところだけに、一気に魅力が増した格好です。

なお合わせて、本体全体のデザインも“角を残す”方向にシフトするなど、シャープさを印象づける傾向に路線変更。現行モデルまでは抑えられていたハイテクガジェット感を増しています。

一方で、マグネシウム合金をふんだんに採用した外装素材や、米軍調達基準『MIL-STD-810G』準拠テスト7項目をパスする堅牢性などは、現行モデルを継承します。


▲CPUはTiger Lake+Iris Xeグラフィックスの構成。インテルのEVOプラットフォーム認証も受けています

続いての特徴となるCPUでは、今年のモバイルノートが一斉に採用するインテルTiger Lakeに世代交代。特筆すべきは、内蔵GPU(グラフィックス)性能に優れた『インテルIris Xeグラフィックス』搭載モデルを集中して採用している点。また、グレード(パッケージ種類)としては「UP3」タイプとなります。

UP3は性能と発熱と消費電力を大きく支配するTDP(熱設計電力)レンジは15から28Wに設定可能なモデル。従来の分類ではUシリーズに相当する、ノートPC用の標準グレードです。

実際のモデルとしては、17インチ版と16インチ版上位が『Core i7-1165G7』、14インチ版と16インチ版下位が『Core i5-1135G7』という鉄板構成。従来のインテル製CPUに比べた際の、Tiger Lakeの速度的優位性を存分に発揮できるモデルです。

LG gram 2021 日本版
▲2基のThunderbolt 4端子は左側面に搭載。ACアダプタからの電源入力も兼ねる仕様となりました

また、Tiger Lakeの特徴として「Thunderbolt 4(TB4)コントローラーの一部をCPUに内蔵している(TB4を安価に搭載できる)」点が挙げられますが、本機もそれを活かし、全モデルでTB4端子を2基搭載します。ただしその代わり、現行モデルまで備えられていた丸型電源(DC)入力は廃止されています。

▲筐体一新に合わせて当然ながら冷却能力も増加。全般的なエアフロー(空気の流れ)にも手が加えられています

Tiger Lake UP3搭載機種では問題となりがちな、高速処理ゆえの発熱増大に関しては、冷却機構の強化により対処。とくに今回は、最終的な熱処理となる廃熱方向に関しても見直しが行なわれた点が特徴。現行モデルまでの底面側への廃熱に加えて、天側(液晶パネル側)への廃熱も合わせて行なうことにより総合的なエアフロー(空気の流れ)を強化。高負荷時でも動作音を抑えています。

▲仕様の「メモリ」欄(最下段)には、ついに「増設不可」の文字が……
▲RAMとSSDに関しての解説も、SSDのみ増設可能という紹介となっています

一方でLG gramシリーズのファンとして残念なのは、ついにマザーボード上からRAM増設の手段(SO-DIMMソケット)がなくなった点。

標準搭載容量こそ8GB(Core i5搭載機)、16GB(Core i7搭載機)と水準で、速度的にもTiger Lake公式サポートでは最速となる『LPDDR4X-4266』タイプとなりますが、購入後のRAMアップグレードサービス(そして保証消失覚悟の自己責任ですが、ユーザーの手による増設)が不可能となったのは残念なところ。

実はこうなったのは、Tiger LakeのRAMにおける速度制限にも関連した仕様。というのも、オンボードでの搭載であれば本機のように4266MHz相当のRAMが使えますが、スロットを搭載すると3200MHz相当と、1GHzもの転送クロック低下となってしまうため。

この速度低下はとくにグラフィックスなどで顕著となることから、こうしたデメリットを避けるために「オンボードのみとして高速RAMを搭載する」という方針に転換したものと思われます。

なお現行モデルでは、Ice Lakeこと第10世代Core iを搭載しつつ、RAM速度が3200MHz相当に抑えられるというデメリットがありながらも(実質標準は3733MHz相当なので500MHz相当の低下です)SO-DIMMソケットでのメモリ拡張をサポートしており、RAM増設に対するこだわりを見せていました。

関連記事:LG製モバイルノート gram2020年版が日本発表。Ice LakeでもRAMスロットを継承 (2020年1月)

この点に関しては残念ですが、Tiger LakeはIce Lake以上にメモリ速度が性能に与える影響が大きく、あまつさえ1GHz差ともなるとさすがのLGエレクトロニクスもやむを得ないと判断したのかもしれません。

一方でストレージに関しては、現行モデルと同じくM.2スロット×2基仕様、かつ標準でNVMe-PCI Express接続SSDという構成。ということで、ストレージは購入後の交換や増設に耐えられる仕様です。

とくに昨今は高速SSDでも大容量モデルが安価になっており、たとえば4TB×2枚での8TB構成でもある程度は実用的な価格に収められるようになってきました。こうした点は、ノートPCでも大容量・高速ストレージは当然というヘビーユーザーには嬉しいところでしょう。


そして、現行モデルにて評価の高かったタッチパッドやキーボードも、筐体設計の一新に合わせて新設計に。タッチパッドは画面に合わせてアスペクト比を16:10に変更するという、目立たないながらも嬉しい改良となっています。

そしてキーボードは、昨今のモバイルノートでは非常に珍しいキーストロークを深くする変更を導入。1.65mmと10%の増加となっています(現行モデルでは1.5mm)。

そしてキートップが、あえてのフラット形状になっている点にも注目。現行では僅かなお椀型のくぼみを付けた流行のタイプとなっていました。昨今のノートPCでフラットなキートップというのは珍しいだけに、打鍵感への影響が気になるところです。

▲17インチと16インチ版はテンキー付きの配列。右奥(右上)には指紋センサー兼電源ボタンを搭載します。なおキーの色は現行と同様に、ホワイトではこのように本体と同色、ブラックとシルバーでは黒となります
▲14インチ版はテンキーなし配列。右奥(右上)に指紋センサー兼電源ボタンこそありますが、その他はJIS配列準拠として比較的素直なレイアウトです

Thunderbolt 4以外での拡張端子は、全モデル共通でフルサイズHDMI(4K/60Hz/30ビットカラー対応)とUSB Type-A(10Gbps)×2基、マイクロSDカードスロットと3.5mmヘッドセットジャック。

現行モデルに比べ、Thunderbolt端子が1基増えただけ(減った端子は専用電源[DC]入力のみ)という布陣です。

▲14インチ版の左側面。端子構成と配置は14/16/17インチすべてで共通です
▲こちらは右側面。Type-A端子はこちらの面に集中して配置します

USB Type-Aが右側面のみになった(現行までは左右ともに1基)点は若干残念ですが、弱点として指摘の多かったThunderbolt(USB Type-C)の少なさが改善されたのは嬉しいユーザーが多いのではないでしょうか。


▲今回の注目株となる16インチ版。14と17の間に隠れがちだった旧15インチ版の魅力がグッと増した格好です

なお、画面サイズごとの基本仕様差は、画像の通り(「新しいタブで開く」で拡大表示できます)。こうした点を見る限り、画面解像度が高くなった16インチのバランスが優秀に見えます。

もちろん他のサイズも、「17インチ大画面ならではの使いやすさ」や「14インチの軽さとバッテリー駆動時間の両立」といったそれぞれのキャラクターを現行モデルから継承するため、より“サイズで選びがいのあるシリーズ”になった、と評価できそうです。

▲発表会では歴代シリーズ改良点の振り返りも。歴代モデルの弱点を解消した2021年版は『すべてをかなえるPC』とアピールします

このようにLG gram 2021年版は、シリーズが継承してきた軽さや長時間バッテリーといった長所を引き継ぎつつ、実質シリーズ初となる筐体レベルでの新設計や液晶パネルの超広色域化、ナローベゼル化などによりイメージを一新した、非常に気合いの入った製品。

返す返すもRAM増設が不可能になった点や、若干ながら価格が上昇基調となっている点は残念ですが、ライバルに対しての弱点とされていた箇所を丁寧に潰したことによるメリットなどは、そうしたデメリットを十二分に補えるレベルと評価できるものでしょう。

2021年も、「持ち運べるレベルの大画面ノートPC」「手頃な価格で性能が充実したノートPC」といった立ち位置を備えた注目モデルとなりそうです。

Source:LGエレクトロニクス(LG gram公式サイト)