税込みで1000円を下回る新料金プランの「ミニプラン」を導入したソフトバンクのLINEMOですが、同ブランドは、開始当初からeSIMに対応していたのも特徴。IIJmioや楽天モバイルがいち早く導入したeSIMですが、ソフトバンクも大手キャリアとしては比較的対応が積極的で、LINEMOと同時にワイモバイルでもサービスが始まりました。また、7月14日には社名を冠するメインブランドであるソフトバンクでも、eSIMの対応がスタートしています。

LINEMO Junya Ishino
▲大手3キャリアの中ではeSIM対応が早かったソフトバンク。現在は3ブランドで導入済みだ

現状、LINEMOでは、eSIMを選ぶユーザーの割合は「2割ぐらい」(常務執行役員 寺尾洋幸氏)。サービス開始時点では今よりeSIM比率は高かったそうですが、新しい仕組みゆえにトラブルも相次ぎ、「上級者向けにしてしまった」といいます。例えば、APN設定やiPhoneでのプロファイルの設定、ネットワーク暗証番号の入力などはユーザーがつまずきやすかったポイント。スマホのヘビーユーザーには常識かもしれませんが、まだまだ一般のユーザーにはハードルが高かったようです。

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▲サービス開始直後は想定外のトラブルも多く、問い合わせが多数寄せられたという

LINEMOは、開始前から週単位で改善を繰り返していく方針を打ち立てていました。いわゆる通信サービスではありますが、ユーザーが直に接するWebだったり、手続きのフローだったりには、Webサービスのような柔軟性を取り入れていると言えるでしょう。結果、サービス開始から現状までに、「言葉の解釈から1つずつ直し、400項目を修正した」といいます。

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▲LINEMOではWebサービスのように高速な改善サイクルを回し、ユーザビリティを向上させているという。その数は大小合わせて400件を超えた

例えば、上記の“引っかかりポイント”だったAPNの設定やプロファイルの設定は、現状、すべて自動化されていてeSIMをインストールするだけで利用可能になっています。ワンタイムパスワード送信後のネットワーク暗証番号の入力も不要にしました。意外と多かったトラブルは、SIMロックの解除方法が分からないというもの。これも、「事前にSIMロックを解除してくださいという手順を入れ」、手続きを行えるサイトを案内しているそうです。

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▲ドコモやauのSIMロック解除方法を案内している

実際に、どこまで簡単になったのかを確かめるため、筆者もLINEMOのミニプランを契約してみました。最初にPCからLINEMOのサイトに飛んでみましたが、こちらからはeSIMでの契約ができませんでした。おそらく、PCからだとeKYCを実施するのが難しいからでしょう。スマホであればeSIM非対応端末からもアクセスできますが、eSIMを選択すると「上級者向け」との注意書きが出て、“初心者お断り”の雰囲気をこれでもかと醸し出してきます。eSIMは簡単と聞きかじっただけのユーザーを門前払いする効果はありそうです。

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▲eSIMを選択すると、上級者向けの注意書きが現れる。対象者を絞ることで、トラブルを減らしているようだ

その後は、基本的に画面の手順に従っていくだけ。eKYCで引っかかるかと思いきや、これもガイドに免許証や顔を合わせるだけで、ほぼほぼ自動で終わりました。重要事項説明では、eSIMに関してかなり詳しめの注意書きが表示されます。申し込みが完了した後は、待つこと約30分。登録したメールアドレスにQRコードを発行できるサイトのURLが届きました。これをiPhone 12 Proで読み込むとアクティベーションが完了し、通信が使えるようになりました。eSIMおじさんである筆者が引っかからないのはある意味当たり前ですが、これならある程度の知識があれば、迷うことなく契約できそうです。

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▲手順に従っていったら、あっさりと契約が完了。30分で使えるようになった

ただし、QRコードを用いた設定方法はまだまだ煩雑。iPhoneやAndroidにはアプリからeSIMのプロファイルを書き込むAPIが用意されているため、プラットフォーマーと密に連携を取っているソフトバンクには、ぜひこうした手法も検討してほしいところです。eSIMを発行できる時間が限定されており、24時間対応になっていないのもIIJmioや楽天モバイルと比べると見劣りします。

一方で、こうした改善を繰り返してきた結果、eSIMのサービスに対するNPS(推奨度)はうなぎのぼりに上がり、「直近の週では物理SIMを超えている」ほどになりました。先に挙げたようにeSIMを選ぶユーザーはまだ2割程度だといいますが、対応端末がiPhoneやPixelなどの一部モデルに限られていることを踏まえると、十分な結果と言えるかもしれません。

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▲改善を素早く繰り返していった結果、eSIMのNPSは大きく改善した

LINEMOのエピソードからは、eSIMならではの難しさがあることも浮き彫りになりました。eSIMは、契約がネット内だけで完結してしまうぶんキャリアにとって手離れがいい半面、すべてがユーザー任せになってしまうため、手続きのフローやサポート体制などが万全でないとトラブルが起きやすいと言えるでしょう。

似たような話は先行してeSIMを導入していたIIJからも聞いたことがありますが、キャリア側が想定しているユーザーのスキルと実態が乖離していることは原因の1つ。ショップを介さないぶん、今まで以上に丁寧な説明が求められるというわけです。総務省のアクション・プランに基づき、eSIMをMVNOに開放する方向が確定的になっていますが、勢いだけで導入してしまうとサポートが阿鼻叫喚になることが予想されます。あまりに酷いと、通信サービス全体の評判を落としてしまうため、先行事例をしっかり研究しておいてほしいところです。

一方で、こうしたトラブルを乗り越えると、eSIMはユーザー獲得の武器になります。店頭に出向く必要なく、思い立ったらPCやタブレットでサクッと契約し、その場でSIMカードの情報を端末に書き込んでしまえるからです。先の寺尾氏も、「eSIMが乗り換えの促進につながるか」という質問に対し、「一定量(の乗り換えは)あると思っている。チャンスが増えれば、当然乗り換えの需要が増える」と語っています。これで料金が下がるかどうかは別として、少なくとも、キャリアやMVNO同士の競争を促進する一助にはなるかもしれません。