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ソフトバンクは2021年7月15日、オンライン専用ブランド「LINEMO」の新料金「ミニプラン」を発表。3GBで月額税込み990円と、低容量ながら割引なしで1000円を実現する価格を実現したことが大きなポイントとなります。

一方、オンライン専用プランは20GBと比較的大容量で、なおかつシンプルなワンプラウであることが大きな注目を集めてきただけに、なぜミニプランを追加したのか? という疑問もわくところです。その理由と狙いについて、ソフトバンクの常務執行役員である寺尾洋幸氏が記者向けに説明しました。

▲LINEMOの新料金プランについて説明したソフトバンクの寺尾氏

寺尾氏はまず、LINEMOの現状について説明。LINEMOはかつて子会社だったLINEモバイルが、MVNOとして展開していた「LINEモバイル」を取り込んで提供するに至ったサービスですが、寺尾氏によるとLINEMOの契約者数は既にLINEモバイルの2倍くらいに達しているそうで、「圧倒的に強い」と寺尾氏は評価しています。

また、その加入者についても、「7割近くが30代以下」と寺尾氏は回答。ソフトバンクは同じ低価格のブランドとして「ワイモバイル」も抱えていますが、ワイモバイルは実店舗による契約やサポートが提供されていることから年配層の顧客が中心で、うまく棲み分けが図られているようです。

なお、LINEMOはサービス開始当初よりeSIMを提供したことから、eSIM利用比率は「足元では2割くらいだが、最初はもっと高かった」とのこと。ですが、eSIMによる契約はQRコードの読み取りやAPN設定、SIMロック解除やネットワーク暗証番号の入力などが必要で、知識を持たない人には用語や手順がわかりにくく、eSIM利用者の評判が非常に明らかに悪かったとのこと。

それを400項目以上、毎週改善を進めたことで、物理SIMの当初の評価と同じくらいの水準にまで改善したとのこと。そうした加入者改善に向けた努力も、若い世代にサービスが評価され加入者獲得へとつながっているようです。

▲LINEMOはeSIMをサービス開始当初より提供しているが、必要な要素や用語を理解しないまま契約し、うまくいかないケースが多発したとのこと

ただ一方で、寺尾氏はLINEMOが、加入者が100万を超えたとされるNTTドコモの「ahamo」にはまだ及んでいないとしており、それが今回新たにミニプランを投入するに至ったようです。その内容は、先に触れた通り通信量3GBで月額990円というものなのですが、なぜスマートフォンを積極的に利用する若い人の利用が多いLINEMOに、小容量のプランを追加することとなったのでしょうか。

その理由として、寺尾氏は「月額2480円で20GBというプランが、市場にマッチしているのか」と話しています。寺尾氏が用いたMM総研のデータによりますと、月当たりの通信量が3GB以下の人が6割以上に達しているとのこと。またLINEモバイルの契約者を見ても、3GB以下のプラン契約者が82%に達していたとのことで、小容量プランのニーズが非常に高いことから、そのニーズに答えるプランを提供するべく、3GBのプランを追加するに至ったようです。

ミニプランは20GBプランと違って、データ通信量を使い切った後の通信速度は1Mbpsではなく300kbpsとより低速になるほか、「LINEスタンププレミアム」のポイントバックキャンペーンが受けられないといった違いはあります。ですがそれ以外の特徴は共通しており、LINEのトークや通話の利用時に通信量はカウントされませんし、オプションで5分間通話定額や、完全通話定額を追加することも可能。そして何より、20GBプランと同様ソフトバンクのネットワーク品質で通信が可能で、5Gも利用できるなどネットワーク面での優位性もそのまま維持されています。

▲「ミニプラン」の概要。3GBの通信量を使い切ると通信速度は300kbpsに落ちるが、LINEのカウントフリーやソフトバンク品質のネットワークといった特徴は維持されている

ミニプランでLINEMOが狙うのは、1つにはLINEモバイルの利用者の取り込みでしょう。既にLINEモバイルからLINEMOに移行したユーザーは多くいるそうですが、小容量プランの契約者にとって現状の20GBプランはオーバースペックで、料金が高くなることもあって完全な受け皿とはなっていないこともまた確か。寺尾氏はLINEモバイルからの「強制移行は考えていない」としていますが、LINEモバイルは他社回線も使用しているサービスだけに、利用者を早く自社回線に移したいと思っていることは確かでしょう。

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▲LINEモバイルは約8割が3GB以下のプランの利用者で、LINEMOの20GBプランだけでは受け皿が足りないという問題もあったようだ

そしてもう1つは競合、より具体的には競合が持つMVNO(格安SIM事業者)に対抗する狙いも大きいといえるでしょう。KDDIはサブブランドの「UQ mobile」に加え、傘下にMVNO事業を展開するビッグローブやJCOMを持ち小容量・低価格の領域にはかなり強みを持っていますし、NTTドコモもまだ小容量の取り組みを打ち出せていないとはいえ、MVNOの「OCNモバイルONE」を展開するNTTコミュニケーションズをグループに持っているのでこの領域ををカバーできていない訳ではありません。

一方ソフトバンクは、LINEモバイルからLINEMOへ移行したことで、小容量を求める顧客に応える料金プランはワイモバイルのみとなってしまいましたし、そのワイモバイルも店舗サポートがあるだけに、割引なしで1000円を切るプランの提供に踏み切るのは難しいでしょう。そうした料金プランの穴が競合への顧客流出につながる可能性があったけに、LINEMOを使ってそれを防ぐ狙いも強かったといえそうです。

ですが寺尾氏はさらに「楽天モバイルも意識している」と話し、ミニプランの投入は楽天モバイルに対抗する狙いも強いことを示しています。実際新料金プランの検討に当たっては、楽天モバイルのように月当たりの通信量によって料金が変化する段階制プランの導入も検討されたそうですが、採用に至らなかったのには、あまり通信量を使いたくない人が必要以上に通信量を使ってしまい、多くの料金を取られてしまう可能性があるため「顧客がコントロールできない部分が出てくる」(寺尾氏)との懸念があったからだそうです。

その結果、3GBのプランを追加して容量別のプランを複数揃えるに至ったそうですが、今後のニーズによっては3GBと20GBの中間のプラン、あるいは20GBを超えるプランの提供を検討する可能性もあるとのことです。

▲LINEMOのプラン比較。楽天モバイルも意識したそうだが段階制ではなく容量別のプランを提供するに至ったとのことで、今後のニーズによってはプラン追加の可能性もあるとのことだ

今回のLINEMOの動きを受けて、他の携帯3社がどう動くかは注目されるところですが、より注目されそうなのが独立系MVNO、そして総務省ではないかと筆者は見ます。なぜならミニプランを独立系MVNOの立場から評価した場合、MVNOの領域でもある小容量プランに高品質のネットワークと音声通話、そしてLINEのカウントフリーまで付いてくる至れり尽くせりの内容で、しかも1000円を切る低価格を実現してしまっているのですから脅威以外の何物でもありません

しかも独立系のMVNOはつい最近も、ahamoなど携帯各社のオンライン専用プラン投入で“成す術なし”という状況が生まれ、危機的状況に立たされたことがあります。この時は「とても競争できない」と総務省に訴えたことで、携帯大手がネットワークを借りる際の接続料が大幅に下がり、それをベースに小容量プランの料金を引き下げることでなんとか競争力を維持することができました。

ですがミニプランはMVNOが最も得意とする小容量の領域で、同等の価格を実現しながら圧倒的優位性を発揮しているだけに、独立系のMVNOに再び壊滅的なダメージをもたらすことなるかもしれません。もしそうなれば再び総務省が大きな動きを起こす可能性もあるだけに、落ち着きつつある通信行政にも一波乱もたらすことにもなりそうです。