Visa東京2020オリンピック限定Visa LINE Payカード

さかのぼること2016年3月、LINE PayはJCBとの提携で「LINE Payカード」の発行を開始して決済分野へと参入した。ちょうど同時期、LINE(LINE Pay)内の残高を利用し、アプリ内に表示させたバーコードを読み取ることで決済が可能なオフラインでの店舗決済の仕組みの提供も開始している。2015年から2016年にかけては、2019年末にメルペイによる買収が発表されたOrigami Payがサービスインを行っており、LINE Payは、日本においてQRコードやバーコードを使った、いわゆる「コード決済」の口火を切ったサービスの1つとしても知られている。

2018年末には最後発として業界に参入し、100億円規模の大型キャンペーンを連発してPayPayが話題になるなか、2019年は業界各社がキャンペーン合戦を繰り広げる乱戦の模様を呈し、最終的に前述Origami Payのように退場を余儀なくされるプレイヤーが出現したことも話題になった。

そうしたなか、LINE Payは比較的早い段階で派手なキャンペーン合戦からはフェードアウトし、新しいビジネスモデルに軸を移しつつあるように見える。

その1つが、三井住友カードとの連携でスタートした「Visa東京2020オリンピック限定Visa LINE Payカード」の発行で、今年2020年4月下旬以降に申し込み受付を開始している。2021年4月30日までの期間限定ながらも、LINE Payアカウントへのクレジットカード登録で3%還元を受けられる点が特徴で、LINEアカウントのチャージ&ペイを利用した際のポイント還元割合が変化するマイランク制度利用の条件もこのクレジットカード登録が必須となっているなど、LINE Payというサービス自体がクレジットカード主体にシフトしている印象がある。

また、今年12月中には「Visa LINE Payプリペイドカード」の発行を開始し、これをApple PayやGoogle Payに登録することで、LINE Payの残高を使ってのiD加盟店でのリアル店舗決済が可能になる。

こうしたLINE Payの最新動向について、LINE Pay Business Development1チーム マネージャーの佐野真人氏に話をうかがった。

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LINE Pay Business Development1チーム マネージャーの佐野真人氏

──今年2020年に入ってからのLINE Payはクレジットカード事業に大きくシフトした印象があるが、どのような流れで現在のビジネスモデルに至ったのか?

佐野氏:Visa LINE Payカードを今年4月末から発行開始して10ヶ月が経過しましたが、初年度3%還元というのは業界でもトップクラスで好評を得ています。還元合戦からクレカ事業に転化したと言われますが、LINEは戦略を変えて差別化していきたいと考えました。

一般に、LINE Payはコード決済の事業者などと言われますが、サービス自体はオンライン向けのサービスが2014年に始まり、次にJCBのプリペイドカードを発行、コード決済に参入し、今回のクレカ事業へと至っています。われわれとしてはLINE Payはプラットフォーマーの位置付けで考えており、決済手段をいろいろ用意してお客様に選んでいただくという方向で考えています。

従来まで前払い式だったLINE Payが、クレカを事前の紐付けなしで利用開始して後払いが可能になりますが、さらにVisaプリペイドカード発行で生まれ変わる形になります。

──Visa LINE Payカードは当初、2020年夏に開催が予定されていた東京五輪に合わせる形で、2019年8月に先行案内が開始されていた(外部リンク)が、実際の申し込み予約開始が発表されたのは2020年3月のことで、発行主体もオリエントコーポレーション(オリコ)から三井住友カードに変更になっている。また、Visaブランドのカード推進にあたり、JCBとの提携が切れてプリペイドカードの新規発行も止まっている。このあたりの経緯は?

佐野氏:Visaさんと一緒にやっていこうと決まったのが去年の9月で、LINE Payが日本だけでなくタイと台湾でも事業展開していることも鑑みて、国際ブランドとしてのVisaをパートナーとして選ぶことになりました。オリコさんの件については、当初進めていくうちに方向性の違いからプロジェクトを停止しようという流れになり、1月の段階でプロジェクトから離れることになりました。Visaとはクレジット事業全般での協業を進めていたこともあり、三井住友カードさんとの協業に至ったのもVisaからの紹介になります。

──Visa LINE Payカード利用者のこれまでの評価は?

佐野氏:まずカードデザインの評価が高いです。3%還元で上限なしというのも評価点で、利用者の95%が満足しているという回答を得ています。まずカードデザインについてですが、五輪限定デザインは間もなく青の申し込みが終了します。

次に通常のVisa LINE Payカードですが、4色のうち一番人気は黒かなと思っていたのですが、意外と緑が人気で、やはりLINEで連想するコーポレートカラーが人気なのかと考えています。ユーザーからの声としては、決済の通知がアプリにやってくるというのは評判いいようです。

ただ、決済通知はあくまでわれわれが計画している機能の始まりでしかなく、将来的にもう少しLINEアプリと三井住友カードのVpassとの連携を深め、クレジットカードを決済ではなくサービスのように見せられないかと考えています。このVpassは非常によくできているサービスで、Webサイトへのリンクを置くのはもちろんですが、その機能をLINE内蔵できないかとも考えています。

4色が用意されている通常版のVisa LINE Payカード

──これだけ3%還元の評価が高いと、キャンペーンが終わったタイミングの反動が大きいのでは?

佐野氏:3%還元が4月30日までということで、その後どうなるか、2年目を戦略的にどうしていくのかについて、発表は年明けになります。クレカといえばカードで決済ですが、それをサービスにしていくのが我々の考えです。ポイントだけの魅力では、それが終わった瞬間にお客様が使うのを止めてしまいますが、それがサービスであれば止めません。

事業として3%還元をずっと続けていくのは難しいですが、LINEならではのカードが出てきて、それを人に勧めたくなるようなサービスを作り、使い続けてもらうのが重要です。いろいろなアイデアはありますが、例えばキャラクター入りデザインを出すとか、バリエーションを増やす方向性です。JCBのプリペイドカードは実際に人気があり、Visa LINE Payカードについてもそういったものがほしいという声があります。

──コード決済での還元合戦から一歩引いて、クレカとポイント中心の経済圏を作りつつある事業者として楽天があるが、このあたりの競合との差別化は?

佐野氏:その意味では、すでに8400万人のユニークユーザーを抱えるLINEのポテンシャルがありますので、「LINEといえばこのクレカ」というイメージを作っています。「LINEを使うんだったらLINE PayとLINEクレカ」というわけです。ただ、LINEのコミュニケーションと決済のサービスには壁がありますので、そのあたりが課題になります。

実際のブランディングですが、例えばLINEモバイルとの共同でのキャンペーンがあります。クレカでいう友達紹介キャンペーンですが、LINEつながりで評価の高いLINEクレカを紹介してもらうというもので、年明けすぐの提供に向けてシステムを準備中です。

ほかに、LINEはコンテンツをいろいろ持っていますので、そうしたコンテンツとの連携も進めています。過去にはLINEマンガからのクレカ募集を行ったことがあります。楽天さんとの比較でいえば、LINE PayはLINEのメンバーシップとポイントクラブがあり、それを稼ぐのがLINEクレカという位置付けです。

──クレカ中心で話が進んでいるが、若年層や女性層を中心にクレカを持たない、あるいはあまり利用しない層もいる。JCBプリペイドカード発行を止めるいま、LINEの中心層であるこうした若者ユーザーをどのように自身の経済圏に取り込んでいくのか?

佐野氏:そうした若年層向けの施策はコンテンツもそうですが、いろいろ仕込んでいるところです。LINEアプリ内で発行できるバーチャルプリペイドカードの「Visa LINE Payプリペイドカード」が今年12月に登場するほか、Apple PayとGoogle Payについても順次対応していき、全国のiD加盟店で利用できるようになります。

これらは三井住友カードとの戦略的業務提携の一環ですが、ANAカードやプロパーカードを含む三井住友カード発行のクレカについても、LINE Payのファンディングソースとして登録してチャージ&ペイが利用できる仕組みが来春スタートします。これまでLINEクレカを申し込まないとできなかったサービスが、三井住友カード発行のクレカさえあれば利用できるようになります。9月に「LINE DAY 2020」を開催してさまざまな施策を発表しましたが、これらの仕組みの提供を経てLINE Payはほぼ完成形を迎えます。

実際、アプリを開いてコードを出して……というのはどうしても手間ですので、Apple Payが利用できた方が満足度が高いです。満足度が高ければリテンション率も高くなりますから、LINE経済圏の面でもプラスに働きます。冒頭で「LINE Payといえばコード決済」と言いましたが、世間的にそう見られていたLINE Payがクレカとポイントを得てモデルチェンジし、社内的にも生まれ変わった形になるのです。

──「Visa LINE Payプリペイドカード」が12月中提供とありますが、今年12月はあと10日間ほどしかありませんが?

佐野氏:はい、必ず12月中にリリースします。

──今回は三井住友カードとの提携が大きかったが、今後はLINE銀行の話題やZホールディングス(Yahoo!やPayPay)との合併もある。このあたりの展望は?

佐野氏:LINE銀行については現時点で言えることはありませんが、既存のLINEサービスとシームレスに連携できるものを目指しています。

Zホールディングスの件については、個人的意見ではありますが、PayPayは加盟店などの面で強みを持つ一方で、LINE Payは三井住友カードとのアライアンスがあり、今回のタイミングではApple PayとGoogle Pay対応が行われます。これは先方にはない強みではないでしょうか。

またLINEクレカにはVisaタッチが載っていて利用できる場面が増えているほか、ユーザー自身がApple Payに登録してiDとして利用していたりします。LINEクレカのユーザーは決済事業者の視点で見ても優良顧客であり、利用率が非常に高い傾向にあります。こうしたユーザーを抱えている点で、合併後もこのあたりがポイントになるのではないかと考えています。

(更新:2020/12/21 14:10)オリコの提携解消時期について、初出時は今年3月と記載していましたが、正しくは今年1月でした。訂正しお詫び申し上げます。