ZHD代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎氏(左)とZHD代表取締役Co-CEOの出澤剛氏(右

3月1日、Zホールディングス(Yahoo!)とLINEの経営統合が発表されて新生ZHDの事業戦略が発表された。既報の通り、LINE PayとPayPayのコード決済統合が合わせて発表されているが、これについて誤解されている部分も含め、いま分かっていることを整理した

1. LINE Pay内にPayPayの決済機能が付与される

現在発表されているのは、LINEからの公式プレスリリースに「PayPayとLINE Payは、2022年4月にLINE Payの国内QR・バーコード決済事業をPayPayの事業へ統合することについて協議を開始しました」とあるように、2022年4月を目標に“日本国内”のコード決済事業をPayPayに集約することを発表している。

その取り組みの第1弾として、2021年4月下旬以降に全国300万ヶ所以上のPayPay加盟店のうち、店舗が掲示するQRコードを読み取るユーザースキャン方式(MPM)を採用する加盟店についてはLINE Payアプリによる支払いが可能になるという。これは「LINE PayアプリにPayPayのQRコードを読み取り、LINE Payで支払う機能を追加する」だけで済むため、実装が非常に容易だからだ。

2021年4月下旬以降にLINE PayでPayPayのQRコード決済を掲示する店舗での支払いが可能になる

一般に、コード決済では店舗側のQRコードを読み取るMPM方式と、ユーザーがアプリ上にQRコードまたはバーコードを表示して店舗側が読み取るCPM方式の2種類がある。CPM方式では加盟店側の処理機構に何らかの手を加える必要があり、ユーザー側のアプリを更新すれば済むMPM方式に比べて若干の時間を要する。

今後、2つのコード決済の仕組みをPayPay側に寄せていくのであるとすれば

  • 「加盟店数の多いPayPay側の負担を減らすため、LINE Payアプリに表示するCPM方式のQR・バーコードはPayPayベースのものとする」

  • 「既存のLINE Pay加盟店(CPMとMPM両方式ともに)については、交渉の末にPayPay加盟店へと移行してもらう」

という上記手順を踏む。つまり、LINE Pay加盟店についてはPayPay加盟店へとシフトしつつ、ユーザーのLINE PayアプリにはPayPayの決済機能を実装するという流れだ。LINEによれば「LINEのウォレット上にPayPayのアイコンが入るイメージ」だという。

ただし今回のZHDの発表によれば、「(移行にあたって)加盟店側の手続きは不要」「手数料などの変更は生じない」とのことで、大手加盟店などで特別の契約を行っていない限り、書面ベースでの確認程度の事務作業で済むものと考えられる。切り替え対象になった加盟店には、順次新しいアクセプタンスマークが発送されるという。

統合後の加盟店向けアクセプタンスマークとQRコード

2. LINE Payそのものはなくならない

今回の経営統合においてZHDから念を押されたのは、「LINE PayがPayPayと統合に向けて協議を開始したのはあくまでも『QR・バーコード決済部分のみ』で、LINEウォレット(NFC、送金、請求書払い等)は継続していく。LINE PayがPayPayに吸収されるわけではなく、アジア主要国での発展を目指していくので、LINE Payがなくなるわけではない」ということだ。

LINE Payそのものが提供していた機能は継続しつつ、コード決済部分のみユーザーの利便性を考えてPayPay側への統合を行う。PayPayも機能強化でLINE Payに近い機能を得ているが、チャットに紐付いた送金機能や各種請求書払い、カード事業など、完全にカバーしているわけではない。そのため、ウォレットの基本機能は維持しつつ、PayPayの決済機能をアドオンで載せる形で落ち着いたのだと思われる。

将来的には効率化のため両者の完全統合も考えているかもしれないが、ユーザーベースでいえば会員数が3900万のLINE Payの方が多く(PayPayは3600万人)、一度に消滅させるデメリットの方が大きいと判断したのだろう。

「ユーザーにメリットのない統合は行わない」とZHD代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎氏は述べているが、許認可などの問題もあり、少なくとも今後数年は両者の完全統合はないと筆者は考える。同様に、台湾やタイなどの市場でLINE Payが一定のシェアや加盟店を獲得している事情もあり、海外事業についてはLINE Payの戦略は引き続きブランドが継続される。「『海外はLINE Payが継続するが、国内はPayPayに吸収される』という考えも誤解」とZHDでは念を押しており、国内外ともにあくまでLINE Payは維持されるというスタンスだ。

ZHDの説明会のスライドではこのように書かれているが、「これで『国内のLINE Payは消滅』とは判断しないでほしい」としている

だが現時点での疑問点もある。仮に決済部分を統合したとしても、送客プラットフォームとしてのLINEとYahoo!、そしてPayPayを含むポイントなどのロイヤルティプログラムの扱いがどうなるかだ。

ユーザー属性が異なるため送客プラットフォームが複数のブランドで分散するのは分かるが、ポイントの相互融通の仕組みなど現時点では不明だ。例えば、LINE Payカードで決済したポイントなどはLINE Payに付与される形となるが、これがYahoo!などの旧ZHD側のプラットフォームで活用されるのかは今回の発表時点では見えていない。

最終的にロイヤルティプログラムは統合されるとZHDでは説明しているが、LINE側で用意していたステージ制度も含め、今後擦り合わせるべき事項はまだまだあると考える。

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送客と決済は2つのブランドをまたいで交互に行われる

将来的にロイヤルティプログラムは統合されるとしているが、具体的な姿はまだ見えていない

3. まだ見えないLINE銀行(LINE Bank)の姿

LINEでは2022年度内を目標に銀行免許を取得して「LINE Bank」の設立を目指していたが、これはZHDとの事業統合を経ても継続される。

旧ZHD傘下には「ジャパンネット銀行」があり(今年2021年4月5日以降は「PayPay銀行」)、こちらも新ZHDの体制に引き継がれる。つまり2つの銀行が同じグループ内に共存することになる。

ZHDでは『PayPay銀行とLINEの新銀行は、ユーザー1人1人のライフスタイルや利用シーンに応じてより便利に、よりお役にたてるように、それぞれのサービスを展開していく予定。金融パートナー戦略に影響や変更ははないと捉えており、ユーザーにより良いサービスを提供するため、個々に最適なパートナーと協働していく』と説明している。LINE BankについてはLINE Financialが管轄しており、ZHD内でもジャパンネット銀行とは別組織での運営となる。

興味深いのは、ジャパンネット銀行は「さくら銀行」時代の三井住友銀行が設立したネット銀行であり、後の第三者割当増資を経て資本上はZHDの連結子会社となっている。対するLINE Bankは設立準備にあたり「みずほ銀行」の支援を仰いでおり、同一グループ内に2つの異なる銀行グループのネット銀行が同居する形となる。

「パートナー企業は適時必要なところと提携していく」ということで、ある意味でZHDが掲げる「マルチパートナー戦略」に沿ったものになるが、LINE Bankで何を目指しているのかはまだ見えない。

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ZHDが金融分野で掲げる「マルチパートナー戦略」

超低金利時代において銀行の収益源が細り、その存在意義が問われつつあるなか、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が「みんなの銀行」を5月下旬からスタートするように、新たなビジネス機会を求めてチャレンジャーが銀行業に参入を進めていたりする。

「みんなの銀行」では当初から「データビジネス」や「銀行機能の外販(BaaS)」を打ち出していたりするが、このタイミングであえて市場参入を目指すLINE Bankはどのようなビジネスモデルを描いているのだろうか。これについてZHDやLINE関係者からは現時点で何もコメントが出ていないが、少なくとも「3年以内の黒字化」が銀行免許取得の条件の1つといわれており、これを実現するためのビジネスモデルがどのようなものか早く知りたいところだ。