LiquidPiston
LiquidPiston

おむすび型のハウジング内をまゆ型ローターが回る「あべこべロータリーエンジン」を開発するLiquidPistonが、米陸軍向け小型ポータブル発電機を開発、技術革新研究プログラムの契約を獲得しました。

ロータリーエンジンといえば、ドイツの技術者フェリクス・ヴァンケルが発明した、三角形のローターがピーナッツの殻のような形にくりぬかれたケース内で回転する内燃機関。発明者の名前を取ってヴァンケルエンジンとも呼ばれます。

ロータリーエンジンの特徴としては、構造が単純なため軽量コンパクト化できるところや、一般的なレシプロエンジンに比べて回転数を上げても振動が小さく、また出力軸1回転あたりの燃焼回数が2倍になるため、小排気量でも高出力が得られるところなどが挙げられます。

一方で、レシプロエンジンに比べて低回転での燃焼の安定性が低く、熱効率も落ちることなどから、トルクが細く燃費も落ちてしまうのは(自動車用エンジンとしての)弱点と指摘されます。また摺動面のシールと潤滑のためのオイル消費が激しいところも、レシプロエンジンに比べると注意が必要です。

しかしLiquidPiston操業者アレック・スコルニック氏によると、LiquidPistonのあべこべロータリーエンジンならばディーゼルエンジンの高圧縮比と直接噴射、オットーサイクルエンジンの定容燃焼プロセス、アトキンソンサイクルエンジンの高膨張比をすべて組み合わせ、ロータリーの弱点である潤滑とシーリングも改善してサイズによらない巨大なパワーと高効率を引き出せるとのこと。思わず「ホンマかいな」と唸らずにはいられません。

LiquidPiston
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スコルニック氏はさらに、ハウジング内に設けた丸みのある固定式燃焼室は、その大きさを調整するだけで高圧縮駆動が可能になり、通常のロータリーエンジンではできなかった場所へ直接燃料を噴射することでディーゼルエンジン的な燃焼が可能になると説明。ロータリーエンジンの弱点とされるアペックスシールは、LiquidPistonのエンジンではハウジング側にあるため、固定が簡単でなおかつハウジング内から直接、潤滑油を供給でき、これらのポイントによって「古いロータリーが燃焼と潤滑で抱えていた主要な課題を解決」したと豪語します。

LiquidPistonは、すでに米軍が使用するM777榴弾砲のデジタル射撃統制システム向けの小型発電ユニットを構築し、米陸軍の要求に応えられることを示しています。これは従来の発電ユニットに比べてサイズを20%まで小型化、ゲーミングPCほどのサイズに仕上げました。これが軍の眼鏡にかない、2~5kWの小型戦術発電機の開発を行う中小企業技術革新研究プログラム(SBIR)契約の獲得に結びついたとのこと。

気になるのは、このエンジンなら小型で環境負荷も低い高性能な自動車エンジンを作れるのではないかと言うこと。これに対しスコルニック氏は、「将来、間違いなく自動車の世界をターゲットにするだろう」と述べています。スコルニック氏はこのエンジンが一般的な自動車エンジンとは「熱力学サイクルからアーキテクチャーまですべてが異なるため、いきなり自動車の世界には足を踏み入れないというビジネス上の決定をした」と述べています。そして「まずニッチなアプリケーションでその技術を証明したいと考えており、そこから自動車の世界への扉を開けられるようになるだろう」としています。

なお、内部構造があべこべとはいえこれはロータリーエンジンの一種出あることに違いはありません。となると、ロータリーエンジン搭載車を所有したことがある人なら絶対気になるのはこのエンジンの耐久性はいかほどか…という点。

LiquidPistonはこの疑問に対してはまだ具体的な回答を持ってはいないようです。スコルニック氏はこれまで、デモンストレーションのため技術的な利点について証明することに重点を置いた試作品を開発してきたと述べ、いまやそれが機能することが明らかになったので、2021年以降はその耐久性についての検証をしていくと述べました。そのため今後はこのエンジンを10基程度構築し、耐久性試験に時間とリソースを投じていくとのこと。

ちなみにLiquidPistonは9月にもUAV向けハイブリッドエンジンの開発においてSBIR契約を獲得しており、その技術で着実に足場を固めつつあります。

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source:LiquidPiston
via:New Atlas