エンタメの救世主「ライブ配信アプリ」が人気のわけ(佐野正弘)

USTREAMが流行した時代にまでさかのぼって解説します

佐野正弘(Masahiro Sano)
佐野正弘(Masahiro Sano)
2020年05月30日, 午前 09:01 in Services
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Livers App Masahiro Sano

2020年5月25日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け日本政府が発令していた緊急事態宣言が、全国で解除されることとなりました。

それを受けて外出自粛が解除されるなど、再び日常生活に戻りつつある一方で、飲食店の時間短縮営業要請は緩和されたとはいえまだ継続されていますし、自治体にもよりますが休業要請解除の目途が立っていない事業もいくつかあることから、まだ完全に日常を取り戻したとはいえない状況が続くようです。

そうした休業要請の影響を強く受けている業界の1つに、芸能人やアーティストなどエンタテインメント業界が挙げられます。

特にエンタテインメントに関わる多くの人達が活躍していた場の1つであるライブハウスは、新型コロナウイルスのクラスターを多く生んだ影響もあり、まだしばらく自粛が続くようで、緊急事態宣言解除後も活動の場が制限されることに変わりありません。

そこで緊急事態宣言以降、そうした人達の多くが動画共有サービスやSNSなどインターネット上での活動を積極化しているようですが、中でも活動をしながら収益を得る場の1つとなっているのがいわゆる「ライブ配信アプリ」です。

これは「ライバー」と呼ばれる配信者が、スマートフォンなどを使い視聴者に向けて“1対多”のスタイルで映像を生配信し、視聴者から有料のアイテムを送ってもらう「ギフティング」でライブを盛り上げてもらうとともに、配信者も収益が得られるというものです。

ライブ配信アプリは国内ですと「LINE LIVE」「SHOWROOM」「17 Live」などが知られるところかと思います。ですが最近ではゲーム配信に特化した「Mirrativ(ミラティブ)」や、VTuberのライブ配信に特化した「REALITY」などサービスの幅も広がってきていますし、市場の盛り上がりを受けてか新規参入も増加傾向にあるようです。

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▲LINEの「LINE LIVE」もよく知られているライブ配信アプリの1つ。「ラインライバー」と呼ばれる個人のライバーが多く参加し、人気を獲得している
Engadget Japan

実際、ソニー系のソニーミュージックソリューションズは、2020年5月22日よりライブ配信アプリ「WACHAT」の提供を開始しています。

こちらは配信者を有名人に限定し、有名人同士の会話を楽しめるなどチャンネルの質を高める一方、あえて月額料金を支払わないとチャンネルが見られない仕組みを採用、配信者への収益源とすることを重視するとともに既存サービスとの差異化を図っているようです。

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▲ソニーミュージックソリューションズが2020年5月22日より開始した「WACHAT」。有名人のみが配信でき、視聴も有料に限定したライブ配信アプリとなる

ちなみにWACHATのリリース内容によりますと、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて当初予定より1か月早くサービス提供開始に至ったとのこと。こうした点からも、ライブ配信アプリが芸能人やアーティストにとって新しい収益源となりつつある様子を見て取ることができそうです。

ではそうしたライブ配信アプリがどのようにして誕生したのかというと、その源流となるのは2000年代中盤頃より提供されていたライブ配信サービスでしょう。

日本であれば「ニコニコ生放送」や「USTREAM」が注目された2007~2008年頃からライブ配信に関する取り組みと文化が急拡大し、ライブ配信者を指す「生主」などの言葉も生まれ注目されました。

とはいえ、この頃はまだライブ配信の利用スタイルが定まっておらず、ニコニコ生放送やUSTREAMも個人による配信だけでなく、企業の発表会やスポーツの中継、さらには定点カメラの映像など、その使われ方はかなり多岐にわたっていました。

現在のライブ配信アプリの潮流が明確に表れたのは2010年代に入ってからといえ、そこに大きく影響したのはスマートフォンの台頭です。

それまでのライブ配信サービスはパソコンが主体でしたが、2010年頃にはスマートフォンが急速に普及。これによってパソコン主体のインターネットサービス利用者とは異なる層が、動画などのリッチなインターネットサービスを利用するようになり、そうした人達のニーズにマッチしたサービスの登場によってサービスに変化が起きてきたのです。

日本でその変化をもたらすきっかけとなった代表的なサービスは「ツイキャス」ではないでしょうか。ツイキャスは元々、Twitterと連動するライブ配信サービス「TwitCasting」として提供されたサービスです。

Twitterとの親和性が高いというだけでなく、早い段階でスマートフォンから配信・視聴ができるアプリを提供していたことで、10~20代の若い利用者を獲得。自己顕示欲が強い年代の彼ら・彼女らがライブ配信をするハードルを大きく下げることにつながったのです。

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▲ツイキャスの2010年プレスリリースより。サービスを開始して間もない2010年5月にはiPhone用のビューアーアプリを提供、スマートフォンで利用しやすい環境を整えたことが現在のスタイルの確立へとつながっている

パソコンの利用が主体だったニコニコ生放送やUSTREAMが総合サービス化を進めていったのに対し、ツイキャスはそうしたユーザー傾向を受けてスマートフォンへの注力を加速し、ライブ配信サービスとしては独自のポジションを獲得するに至りました。それが現在のライブ配信アプリに近い、ライブ配信文化の定着へとつながっていったといえるでしょう。

そうしたライブ配信が、配信者に向けた収益化へと明確に結びついたのには、2013年に開始した「SHOWROOM」が大きく影響したと考えられます。SHOWROOMは元々ディー・エヌ・エーの社内ベンチャーとしてスタートした事業であり、当初は芸能事務所に所属するアイドルやタレントライブ配信でコミュニケーションができるサービスとして提供されていたことから、現在のように誰でも配信ができる訳ではありませんでした。

ですがそれゆえ、当初より有料アイテムによるギフティング機能で配信者が収益を得る仕組みが用意されるなど、現在のライブ配信アプリにつながるビジネススタイルが整えられていたのです。

それまでのライブ配信サービスは、広告や配信者に場を提供するための課金がビジネスの主体で、ギフティングで配信者が収入を得る仕組みを提供することは視聴者とのバランスを崩しかねないことから慎重な姿勢を取っていただけに、当初からその仕組みを整備できたのはSHOWROOMが最初から従来と異なるビジネスを志向していたからこそといえます。

そしてこの仕組みが、アイドルなどのコアファンと結びついて収益化へとつながり、2014年に一般ユーザーにも配信機能が解放されて以降、ギフティングで一般の配信者も収益が得られるようになったことから、他のライブ配信サービスにも影響を与えギフティングの定着に至ったといえるのではないでしょうか。

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▲「SHOWROOM」はライブ配信にギフティングを明確に組み合わせて提供したことで急成長。同社は2020年3月にKDDIのファンドからの出資も受け、縦型動画の新サービス「smash.」を打ち出している

そしてここ最近、ライブ配信アプリの盛り上がりを加速させているのが海外勢の台頭です。実はギフティングで収益が得られるスタイルのライブ配信アプリは、日本以上に東アジアで大きな盛り上がりを見せており、中国などではライブ配信で高額な収入を得るライバーが多く登場しているほか、テレビショッピングのライブ配信版というべき「ライブコマース」も盛んになっています。

そうした国や地域での実績を基に2016年頃から日本進出を図るアプリがいくつか現れ、中国の「LiveMe」や台湾の「17 Live」、シンガポールの「BIGO LIVE」などが日本でのサービス展開を積極化してきました。現在はそうした既存・新規の国内サービスと、市場開拓に積極的な海外のサービスが争う形で拡大が続いているわけです。

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▲日本進出している海外ライブ配信アプリの中でも、最近特に積極的なのが「17 Live」。テレビCMやイベントなどを積極展開してライバーや視聴者の拡大を進めている。写真は17 Media Japanプレスリリースより

今後もライブ配信アプリの市場は拡大が続いていくと思われますが、その盛り上がりに加え、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響などもあってライバー自体が増加傾向にあり、ライバー同士の競争も激しくなっているようです。

かねてより「YouTuberで稼ぐのは難しい」と言われていますが、ライバーも決して甘い世界ではないということは、知っておく必要がありそうです。

 
 

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