MacBook Pro 16インチモデル、最高性能GPUオプションRadeon Pro 5600Mの価値は?(本田雅一)

Core i5に対するCore i9のような存在?

本田雅一
本田雅一, @rokuzouhonda
2020年06月22日, 午後 04:15 in Macbook
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昨年登場したMacBook Proの16インチモデルは、拡大されたRetinaディスプレイ、低音までしっかり再生できる高音質な内蔵スピーカー、米航空法で認められる最大容量100Whの搭載バッテリー、それにモバイル機向け初のMagic Keyboardが投入され、モバイルコンピュータを使うクリエイターから熱狂的に受け入れられました。

搭載するプロセッサこそ第9世代Intel Coreと、前モデルから大きな変更はなかったのですが、内蔵するスピーカーの音質やiMac並の性能を持つGPUなどは特に進化の幅が大きく「これでiMacが必要なくなった」と、デスクトップ機との使い分けをしなくなったユーザーからの声も耳に届いています。

そんなMacBook Proの16インチモデルに追加されたのが、AMDのRadeon Pro 5600Mを搭載したモデル。8GBのHBM(High Bandwidth Memory)2メモリを搭載しています。

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これで16インチのMacBook Proは、GPUに4つの選択肢が提供されることになります。RDNAと呼ばれるアーキテクチャを採用する最新世代のRadeon Proである事はいずれも同じですが、下から順に5300M(4GB GDDR6)、5500M(4GB GDDR6)、5500M(8GB GDDR6)、5600M(8GB HBM2)となり、価格差は5300Mを基準に、+1万円で5500M、+2万円で5500Mの8GB、+8万円で5600M。新たな選択肢となった Radeon Pro 5600Mが際立って高価です。

16インチMacBook ProでオプションのGPUを選ぶならば+1万円で5500M(4GB GDDR6)にするのが費用対効果が高く、個人的にはおすすめです。GPUが扱うデータ量が多い場合は8GBにした方がいいかもしれませんが、それでもさらに1万円を積み増すだけですみます。

果たしてそこからさらに6万円を積んで5600Mにするべきなのでしょうか? ということで、構成が多少異なるのですが、5500M(4GB GDDR6)と5600M(8GB HBM2)で、どの程度のパフォーマンス差があるのかを検証してみました。いずれもCPUは2.4GHzで最も高速なもの、ただし、メモリは前者が16GB、後者が32GB、SSDは前者が1TB、後者が2TBとなります。

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定番のGeekBench 5スコアでは約1.5倍

高性能なGPUは特定のアプリケーションを加速させますが、それはアプリケーションの作り方や使い方次第で影響が異なるため、絶対的なベンチマークスコアでの評価が難しいものです。

定番のクロスプラットフォームベンチマークGeekbench 5のスコアをデータベースから拾って見ると、Compute(GPUによる演算性能)のMetalスコアは5300Mが24359、5500Mが28750ですが、改めて実測すると32000でした。これはMetalのドライバなどが改良されているためかもしれません(おそらく5300Mもスコアが上がっているはずです)。

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5600Mはコンスタントに45000を超えるスコアを出します。スコアの比率だけで言えば5500Mに対して140%程度のパフォーマンスアップですが、ベンチマークも行っている処理によって改善の度合いが異なります(詳細は画面ショットの中身を見比べてください)。

したがって、実際のアプリケーションではベンチマーク値よりも大きな差になることもあれば、あまり差が出ないものもあります。ここがGPU評価の難しいところ。3Dゲーム(ならばWindowsの方がいいでしょうから、ここでは掘り下げません)や3DのモデリングツールならばGPUの恩恵を直接的に受けることができます(Photoshopの3Dレイヤなども含む)。AppleがUnityEditorやMaxon Cinema 4Dといったツールのパフォーマンス向上データを公表していますから、それらを参考にするといいでしょう。

しかし、写真の現像処理や動画編集の場合は、使っているツールや行いたい処理に依存します。特にMacBook Proの16インチモデルが搭載するプロセッサは強力ですから、8コアのCore i9モデルの場合は、CPU処理でかなり頑張ってくれます。そのため、必ずしもGPUが優位というわけではありません。

Appleは「最大75%向上」とアナウンスしていますが、果たしてどうでしょうか?

動画編集アプリの性能向上は明らか

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3Dアプリケーション以外で、明らかな恩恵があったのは動画編集ソフトです。貢献度が大きい事は確認できました。中でもBlackmagic designのDaVinci Resolve、Adobe Premiere Proの動画書き出し処理は大幅に高速化されています。

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映像制作、特にカラーグレーディングでの利用が多いDaVinci Resolveではその効果が体感できます。フルHD/30Pの動画2本を合成し、片方のストリームにフィルムグレイン効果とカラーグレーディングを施し、ワイプを合成した約16分の映像をH.264で書き出してみました。結果は5500Mが58分49秒に対して5600Mが44分21秒。3割以上も高速化されていることになります。

エフェクトをかけている時のライブプレビューのフレームレートも向上するため、全体に操作性が高まることもメリットと言えるでしょう。

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一方、動画編集のデファクトスタンダード的な存在であるAdobeのPremiere Proでも極めて良好な結果が出ています。Premiere Proの場合、プレビュー用データの生成時間が短くなることもストレス低減につながります。

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2ストリームのフルHD/30p動画をワイプ合成し、片方の映像にフィルムグレインと色調補正を行った上で、25分の動画を書き出すテストを行いました。5500Mでは19分50秒かかりましたが、5600M搭載モデルでは12分18秒。改善率は60%を超えています。

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ただし処理が軽いアプリケーションではその恩恵がやや少ないのか、同じAdobeの製品でもPremiere Rushで同じ素材に対して「SLフジ」というカラー調整を加えた状態での書き出しで、5500Mの6分31秒に対して5600Mの5分49秒と差が大きく縮まりました(処理時間も短いのですが)。

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また、動画エンコードを変更するツールであるAdobeのMedia Encoderで25分48秒の4K動画をH.264でエンコードしてみると、5500Mの18分23秒に対して5600Mでは15分21秒と高速化が確認できましたが、CPUエンコードも並行してテストしたところ12分58秒とさらに短縮。つまりGPUを使わない方が速いという結果に。この辺りは使いこなす上で、よく調べておいた方が良いかもしれませんね。

カメラRAWの処理での優位性評価は難しい

メディア系の重い処理と言えば、高画素カメラのRAW現像もあります。しかし、RAW現像ソフトの多くはGPUをあまり有効に使ってくれません。アプリケーションごとに、どの程度速くなるのかをより見極める必要があります。

結論から言えば、Adobe系の写真用アプリケーションを使っている方は、Radeon Pro 5500M(GDDR6 4GB)で十分です。Lightroomでのディテールの強化や、Photoshopでの3Dレイヤーなど、一部機能以外でGPUは活躍してくれません。

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一方、積極的にGPUをRAW現像に使うのがプロ向け現像ソフト「Capture One」。初回起動時には、使用できるGPUの能力を計測するプロセスが走り、可能な限りGPUでの加速を試みようと準備します。

以前にLuminar 4というRAW現像ソフトでのベンチマークを取ったことがありますが、Luminar 4はCPUとGPUを両方使うものの、比重としてはCPUへの依存度が高く、今回のようなケースでは違いがほとんど出ませんでした。

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テスト結果はグラフを見て欲しいのですが、動画書き出しほどの違いは出ません。しかしながら、大量の高画素なカメラRAWを扱うのであれば、この差は無視できないでしょう。というのもサムネイルやプレビューの画像を作るためにもGPUが使われるからです。というわけで、Capture Oneユーザーならば扱う枚数やカメラの画素数よっては6万円の価値を見出せるかもしれません。

ただ、AdobeのMedia Encoderの場合と同じく、絶対的な速度ではCPU演算に分がありました。これはCore i9のハイエンドモデルだからということもあるでしょう。では意味がないのか? というと、RAW現像を行いながらバックグラウンドで別の作業を行う場合などに、CPUをオフロードしながら高速現像できるという点で利はありそうです。

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YouTubeの16インチ版MacBook Pro紹介動画に寄せられたコメントから思うこと

16インチ版MacBook Proを最初に見たとき、iMacクラスのパフォーマンスや体験レベルが、このサイズに入ったのかと素直に感心しました。もちろん、安い価格設定ではありませんし、GPU性能だってノート型ゲーミングPCならもっと安価な選択肢もあります。

しかし、実際に持って歩ける重さと大きさ、薄さと言ったフォームファクタをクリアし、100Whのバッテリーを内蔵し、よく調整されたDisplay-P3対応ディスプレイや高音質スピーカーを備えるノート型コンピュータとなると、実は比較する製品が他にないのです。

もし持ち歩くこともなく、ディスプレイの品質も"ちゃんと映っていればいい"ものであればいいなら、動画編集のアプリはWindowsとMacで共通のものが多いのですから、安価なゲーミングPCを買えば性能的には満足できるはず。CPUやGPU性能はコンピュータを評価する上での、ごく一部の要素でしかありません。コンピュータは、WindowsとMacの操作感の違いや機能の違い、それぞれのハードウェアが持つユーザーインターフェイス(ディスプレイやキーボードなど)の違いなどを加味して、トータルで"これがいいね"と判断するものでしょう。

さて、僕のYouTubeの16インチ版MacBook Pro紹介記事へのコメントに「MacBook Proの価格が高くても欲しい人がいる理由は、薄さや軽さなんですね」というものがありました。とても本質を突いていると思います。

同程度か少し上回るぐらいのGPUパフォーマンスが欲しいのであれば、17万円程度のゲーミングノートPCでもRadeon Pro 5600Mと競合する性能のGPUを搭載する製品が手に入ります。単に高性能なゲーム用パソコンを求めるならば、Macにこだわる必要はありません。

もっとも賢い選択肢ではなく、もっとも高性能な選択肢

macOSでの作業を望む人が、ここで紹介してきたようなGPUを多用するアプリケーションをモバイル環境で使う場合、もっとも高い性能を発揮する選択肢が生まれましたよ。ということ。Apple自身も、「史上最高性能のMacBook Pro」という言い方をしています。

そこでサブタイトルの文言につながります。Radeon Pro 5300Mは、いわばIntel Coreでいうところのi3のような存在です。そしてもっともコストパフォーマンスが良いi5は5500Mの4GB GDDR6搭載機が相当すると思います。では5600M搭載機は? というと、i7を突き抜けてi9搭載機といったところでしょうか。

費用対効果ではなく絶対性能。実際に出先でバッテリー運用もでき、持ち運びが苦ではない、しかし高性能なノート型Mac。それはもっとも賢い選択肢ではないかもしれませんが、クリエイターにとっては最も魅力的な選択肢です。とりわけ、動画編集向けならば投資の価値がある、という人も多いでしょう。

 
 

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