言うまでもないが、WWDCは「デベロッパーに対し、最新のプラットフォームの情報を提供する場」だ。というわけで主役は「新OS」。毎年秋に登場する新OSの内容とその対応方法こそが、WWDCでAppleが伝えたいことなのである。

現在のAppleのOSはどれもコアそのものは同じ技術であり、デバイスごとにUIを定めて提供しているものとなっている。iOSやiPadOSの変化が目立つだろうが、もちろんmacOSも同時に変わっている。特にmacOSは、昨年「X」の呪縛が解き放たれ、バージョン番号が増え始めている。新しいフェーズに入ったわけだ。

さてここでは、WWDC21で明らかとなり、今年秋に登場する「macOS Monterey(モントレー)」の内容を詳しく見ていこう。

▲次期macOSの愛称は「Monterey(モントレー)」

▲Montereyの機能リスト。新機能も意外と多い

ちなみに、現行の「macOS Big Sur」のバージョン番号は11。新macOSのバージョン番号は「12」になる。

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iOS・iPadOSと「同じ機能」がMacにも増えていく

先に述べたように、AppleのOSは「同じ基盤で同じ機能を、色々なデバイスで連携して使えるようにする」というのが基本路線だ。なので各OSの新機能、といっても、その多くは他のデバイス向けの新機能とダブる。

例えば、FaceTimeの強化で搭載される「SharePlay」。同じコンテンツが視聴できる(要は、同じサブスクなどに入っている)人同士で同じコンテンツを見ながら会話できる機能だが、FaceTimeが搭載されているAppleのデバイス全てで同じように使える。

▲FaceTimeで繋がった人と一緒に映画などが楽しめる「SharePlay」は、macOSも含めてさまざまなApple製品で使える

集中して仕事する(もしくは遊ぶ)時のために、通知や着信が来ないようにする「集中」モードも各OSで同じように使え、各デバイスが連携して同時に「オン」になる。

▲通知などの状況を一括コントロールする「集中」モードは、1つのデバイスから操作すると、自分が使っている他の機器でも連携してモードが変わる

iPadOS 15ではメモを素早く取るための「クイックメモ」機能が付いたが、Montereyでも同じものが使える。

▲「クイックメモ」はiPadとMacの両方で使えて、もちろんデータも共有される

Appleが提供する翻訳サービスが、ウェブや特定のアプリ内からでなく「システムのあらゆるところから使える」ようになるのだが、これもまたiOSとiPadOS、そしてMontereyで利用可能だ。

▲OSに翻訳サービスがビルドインされたので、あらゆる部分でわからない言葉の翻訳が可能に

……と、まあそんな風に新機能の多くは「このデバイスでだけ使える」わけではない。利用する側から見れば「便利な機能はどこからでも使えるのが望ましい」わけだし、開発基盤が整ってきて共通性も高まってきた証拠だろう。

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「Appleシリコンでだけ使える」機能が増加している意味とは?

共通性という意味では、Macの主軸が「Appleシリコン搭載モデル」になってきたことも大きい。昨年まで、MacはIntel、iOSやiPadOSはAppleのプロセッサーで動いていて、構成要素も微妙に違っていた。だから、iOSやiPadOSではできることがMacでは……というシーンがいくつかあったわけだ。

それが今回、さらに減る。

例えば、iPhoneやiPadはAirPods ProやAir Pods Maxと組み合わせると「空間オーディオ」が使える。特に映画を観るときには、ヘッドトラッキングを生かした没入感の再現が特徴だ。この機能はMacでは使えなかったのだが、Montereyからは"M1搭載Macでは"利用可能になる。(音楽の空間オーディオは、Intel製CPU搭載モデルでも使える)

▲Dolby Atmos対応の映画をAirPods ProやAir Pods Maxと組み合わせて観る場合、M1搭載Macでは「空間オーディオ」対応になる

また、FaceTimeで背景をぼかす「ポートレートモード」も、M1搭載Macでのみ使える。

▲FaceTimeで自分の背景をぼかす「ポートレートモード」も、M1搭載Macのみ対応

このあたりは機械学習系コアの搭載状況や扱いがプロセッサーの種類によって異なることに起因している。Intel系でもAppleシリコンと同じことはできるはずだが、AppleはiPhone・iPad向けに作った技術をそのまま使いたいと考えていて、移行段階にあるIntel向けには「新たに作り込まない」方向にあるようだ。

現状、MontereyはIntel版Macでも動くが、動作対象機種はBig Surよりも狭いものになった。そして、「全ての機能を使うにはAppleシリコンで」という方針は今後さらに強くなっていくだろう。

▲Montereyの動作保証機種。Big Surより狭くなっているのでご注意を。

こういった意味でもMontereyは、Big Sur以上に「Appleシリコンが基本の世代」に近づいたOSと言えるわけだ。

「ユニバーサルコントロール」はこう動く

そんな中で、"Montereyにしかない"機能として注目なのは、やっぱり「Universal Control(ユニバーサルコントロール)」だろうか。

▲MacとiPadを連携させる「ユニバーサルコントロール」が登場

筆者はまだベータ版を実際にテストしていない。また、デベロッパーから聞こえてくる話によれば、ユニバーサルコントロールはまだ実装されていないようだ。なので、以下は「映像と取材から得た情報に基づくもの」とご理解いただきたい。

ユニバーサルコントロールは、「1つのキーボードやタッチパッドから、つながった別のデバイスを操作する」ものだ。Sidecarはサブディスプレイ化するものだったが、こちらはあくまで「それぞれがそれぞれのアプリを動かす」もので、UIとデータだけが機器の間を行き来する。

▲タッチパッドやキーボードを共有し、MacとiPadの間での操作を改善する

具体的には、Macからスタートして、他のMacもしくはiPadを含む"3つのデバイス"をつないで動作する。だから、「MacBook AirとiMacとiPadを並べて使う」とか、「Macの両脇にiPadを1つずつ並べて使う」なんていうこともできる。ただし、並べ方は"横方向のみ"で、iPadをMacの上にといった置き方には対応していない。なお、iPadは横置き(ランドスケープモード)だけでなく、縦置き(ポートレートモード)でもOKだという。

▲連携できるのは合計3台まで

要はキーボードとタッチパッド(マウス)をデバイス間で共有しているようなもので、ロジクールが提供している「Flow」に似た概念と言っていい。違うのは、MacとPCでなく「MacとiPad」であること、そして、iPad側のキーボードとタッチパッドも使える……ということである。

このあたりは間違った理解がされていることもあるようなので、少しちゃんと説明しよう。

ユニバーサルコントロールは「MacからiPadへと接続」するところからスタートする。要はMacの画面から隣のiPadへと、マウスカーソルを動かすのだ。マウスカーソルがある側=今入力を受け付けている機器となり、キーボードの操作もタッチパッドの操作も、「マウスカーソルがある側の機器」に渡されることになる。

ここでポイントは、一度つながってしまえば「iPad側からMacを操作することもできる」ということだ。だから、iPad ProにつけたMagic KeyboardでMacを操作する、ということだってできる。

データのドラッグ&ドロップなども同様で、「Macから接続をスタート」しておけば、あとはどのデバイスからでも行き来できる。

アイデアとしては決して奇抜なものではないのだが、UI的にうまくできている(ように見える)のが、ユニバーサルコントロールの美点だ。

▲「上下」の矢印でMacと連携する際の「画面の高さ」を合わせ、操作をより快適なものに調整できる

例えば上の画面をよく見てほしい。iPad側の境界に「上下」の矢印があるのがわかるだろうか。これ実は、操作して「画面の高さを合わせる」ためのものである。デバイスごとに画面の高さは少しずつ違うが、このUIで微調整することで、操作を移行する時の違和感を減らせるのである。

こういう部分も含め、いつかは「すべてのApple機器で使えるようになる」のだろう。その第一歩がMacから、というのは久々な気がする。

冒頭から述べているように、「色々なApple機器に同じ機能がある」「それぞれの機能が連携して動く」のがAppleのOSの基本になっている。ユニバーサルコントロールもその1つなわけで、「いかにユーザーが買うものをApple製品でまとめさせるか」ということを、便利な機能の側から追い込んでいるわけだ。

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