かつて携帯電話のコミュニケーションに欠かせない存在となっていた携帯電話のメールサービス、いわゆる「キャリアメール」。そのメールアドレスを他社に移行しても使い続けられる持ち運びサービスが、2021年末に相次いでスタートしています。

実際、NTTドコモとKDDIは2021年12月15日に「ドコモメール持ち運び」「auメール持ち運び」を相次いで発表。ソフトバンクも2021年12月20日に「メールアドレス持ち運び」のサービス開始を発表しており、キャリアメールを提供してきた3社の持ち運びサービスが相次いで始まったことが分かります。

▲NTTドコモが2021年12月16日にサービスを開始した「ドコモメール持ち運び」のWebサイトより。他社回線だけでなく、「ahamo」などドコモメールが利用できない料金プランへ移行してもドコモメールを使い続けられる

各社のサービス内容を確認しますと、いずれも税抜きで月額300円前後の料金を支払うことで、回線契約解約後もメールアドレスを使い続けられる仕組みのようです。

「OCN」「@nifty」など固定系の大手インターネットサービスプロバイダーなども、契約解除後メールアドレスだけを使い続けられるサービスを提供しているのですが、それらの金額がおおむね税抜き月額250円であることを考えると、料金的には妥当な水準といえます。

▲固定回線のプロバイダーも、他社に乗り換えた後メールアドレスを使い続けられるサービスを提供しているケースがあり、その多くは税抜きで月額250円程度のようだ。画像はNTTコミュニケーションズの同種サービス「OCNバリュープラン」のWebページより

一方で、持ち運びサービスを利用するには解約後31日以内の申し込みが必要とのこと。NTTドコモの場合、ahamoユーザーがドコモメール持ち運びを利用する際は、プラン変更と同時のみの受付となるほか、auやソフトバンクは回線解約後にオンライン上で契約する必要があるなど、利用には注意が必要な部分もいくつかあるようです。

とはいえ、スマートフォンの登場以降は「LINE」をはじめとしたインターネット上のコミュニケーションサービスが広く普及したのに加え、SMSの使い勝手も向上。最近では電話番号を通じてLINEのようなコミュニケーションができる「+メッセージ」も利用できるサービスが広がってきており、キャリアメールを使わなくなって久しいという人も多いことでしょう。

▲携帯大手3社が2021年、電話番号を用いてコミュニケーションできる「+メッセージ」のサービス対象拡大を図るなど、徐々にキャリアメール離れを進めている様子がうかがえる

そもそもキャリアメールの持ち運びは、携帯料金引き下げを政権公約に掲げていた菅義偉前内閣総理大臣時代の2020年10月に総務省が打ち出した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」で提示されたもの。事業者間の乗り換え障壁を減らして競争を促進する重要な取り組みの1つと位置付けられ、政治主導で実現が進められたものになります。

そしてキャリアメール持ち運びの議論は、菅前政権下の2020年11月から2021年5月にわたって実施された総務省の「スイッチング円滑化タスクフォース」でも積極的になされており、、取りまとめられた報告書では「2021年中を目処に、できる限り速やかに実現することを目指すことが適当」とされています。

実は当初公開された報告書案では「2022年夏頃までには実現することが適当」とされていたのですが、菅前政権の意向があってなのか、最終的な報告書では実現時期が突如、半年近く早められているのです。

▲総務省「スイッチング円滑化タスクフォース」第5回会合資料より。総務省が5000任に実施したアンケートで、キャリアメールが現在も利用されており、持ち運びのニーズも多く存在するとして、持ち運び実現に力を注いでいた

それだけ菅政権はキャリアメールが乗り換えのネックになっていると捉えており、早期の持ち運び実現が競争促進の切り札と考えていた様子がうかがえます。ですが一方で、2020年時点では既にキャリアメールを使っている人も大幅に減っていたことから、キャリアメール持ち運びの実現に並々ならぬ意欲を見せる総務省と菅前政権の姿勢には疑問の声も少なからず挙がっていました。

実は需要のあるキャリアメール

では、キャリアメールの持ち運びに本当に需要はないのか?と言われると、実は結構需要があるのではないかと筆者は見ています。その理由は1つに、キャリアメールが長きにわたって生活に浸透した存在となっていたため、多くのWebサービスでキャリアメールを使って登録している人が多いことです。

実際キャリアメールが使えない携帯各社のオンライン専用プラン開始直前、プラン変更の際に登録メールアドレスの確認・変更をするようユーザーに告知したWebサービスが多数に上ったことで話題となりました。裏を返せばこのことは、それだけ現在もなお、キャリアメールをサービス登録用のアドレスとして使っている人が多いことを示したといえます。

そして自分で把握できないほどキャリアメールを使ってWebサービスに登録していた人であれば、全てのサービスをチェックしてメールアドレス登録をし直す手間をかけるよりも、月額300円程度を支払ってメールアドレスを維持した方がいいと考える人も少なからず出てくるのではないかと考えられる訳です。

そしてもう1つの理由はシニアを中心とした年配層にあります。年配層は現在もなおフィーチャーフォンを利用している人や、スマートフォンに乗り換えてもフィーチャーフォンと同じ使い方を踏襲している人が多いのですが、そうした人達にとってキャリアメールは今でも現役のコミュニケーション手段です。

それゆえ長きにわたって同じメールアドレスを使い続けている人も多く、他の料金プランやサービスに移行しても従来通りメールアドレスを使い続けたいというニーズが根強くあるのではないかと考えられる訳です。

▲ソフトバンクの「メールアドレス持ち運び」の対象メールアドレス一覧。傘下となったウィルコム、イー・アクセスのほか、ソフトバンクの前身となるボーダフォン日本法人、さらにその前身となるJ-フォンのメールアドレスまでもが対象となっている

適切なサポートを提供できるかが鍵に

最近では携帯各社が3G端末の利用者を4G、5Gへと巻き取る動きが加速している一方、巻き取り対象ユーザーはデータ通信量が少ない傾向にあることから、キャリアショップでキャリアメールを維持できないサブブランドやMVNOの利用を勧められるケースも増えています。それだけに今後一層メールアドレスの持ち運びニーズは大きく高まってくるのではないでしょうか。

ただその一方で、各社のサービス内容を見ると気になるのがサポートの部分です。メールアドレス持ち運びサービスを利用した場合、基本的には回線契約とメールサービスの提供元が違ってくることから、当然ながらサポートの窓口も別々になります。それだけに、スマートフォンやメールサービスの仕組みなどに知識を持たない人がこれらサービスを利用した場合、サポートの切り分けをちゃんとしてくれるのか?という点にはかなりの疑問があります。

各社のメールアドレス持ち運びサービスを確認しますと、回線解約後にWebで手続きすることが基本となっているようですが、サービス利用の主体となりそうなのはスマートフォンに詳しくない年配層となりそうなだけに、そうした人達がスムーズに契約してメールアプリの設定をしてくれるのかという点には疑問が残りますし、サポートの現場で混乱を招きかねないのでは?という点が非常に気になる所です。