「風と太陽と花と」とか「雨と風と花と」あまつさえ「風と嵐と……え~と何だっけ?」などと、タイトル名がうろ覚えで、このゲームを話題にする際にふにゃふにゃしてしまいがちな私だったのであるが、人の名前と同様、作品に対して失礼にならぬように、ゲームタイトルもしっかり覚えたいものだ。

そんなわけで、以前の非礼を詫びつつ、以降の人生においては間違わずに発声していこうという決意を新たに、本作「花と太陽と雨と」について少し語らせて頂きたいと思う。

物語の概要はこうだ。幻の楽園、トロピカルムード満点のリゾートアイランド、ロスパス島。そして島にたったひとつあるホテル「フラワー・サン・アンド・レイン」。島を訪れたプロの探し屋モンド・スミオは、スーツケースに収められた万能暗号入力機、通称キャサリンと共に、終わらない1日をくり返しながら様々な謎に挑んでゆく。

舞台はのんびりムード漂いまくる観光地、照り付ける太陽、どこまでも青い空、登場人物はみな一癖も二癖もある人々。開発当初はアップにするつもりではなかったというキャラクター造形は、クローズアップになった際に妙に間延びした表情を見せる。そしてくり返される1日。

そんな要素全てが相まってか、私には、のんびりしたというか、どこか他人事のようなというか、まるで絵空事のような印象が強く心に残っているのだが、本作の醸し出す雰囲気は実にリアルに迫って来る。南国の乾いた空気、ホテルという非日常の空間と踏みしめるカーペットの感触、狭い島だが、どこまでも続くアスファルトの道を走るモンド。そう「のんびりした」と前述したが、実際、主人公モンドは謎を解くために様々な人々と会話をし、駆けずり回って情報を収集、謎を解くための鍵である数字を入手しキャサリンに入力する……と大忙しなのだ。

ゲームをプレイしたのが20年程昔の事とはいえ、印象が矛盾している。絵空事なのにリアルに感じ、のんびりしているのに大忙しとはどういう事だろう? それは本作が持っている様々な要素にも当てはまる印象なのかも知れない。モンドを始めとする登場人物達は一様に深刻な状況下においてもどこか他人事の様な感じだし、交わされる会話もどこかとぼけている。大体モンドがキャサリンを携帯し走る姿も何だかすっとぼけていて決して格好の良い走りではない。そして謎解きの場面で必ず演出的な見得を切るのが、まるで特撮ヒーロー物の変身シーンを模しているようなのだ。

「ガイドブックに隠されたヒントを解読して謎を解明する 謎は果てなく続き 獲物は魂を守り 狩人は真実を狩る 時に探すだけの鎮魂歌 真実は一つだ 仕事だキャサリン! 探索はここに集う」(モンドは立っているだけなのだが、セリフごとに代わるカメラワーク!)

真剣なのかふざけているのかがよくわからない絶妙なバランスで成り立っている。それこそが本作の魅力なのかも知れず、私はまんまと創り手の術中にはまっていたという事か。

ところで本作発売当時の2001年に「花と太陽と雨とオフィシャルファンブック+ガイドブック」が発売されたのだが、半分は攻略本の作り、半分はロスパス島のガイドブックという作り。ガイドブックの部分がゲーム内で重要な役割を果たすアイテムであるロスパス島のガイドブックの現物になっているという趣向だ。

ゲーム内のガイドブックは小さくて記事の細部までは読みづらかったものだが、実物は隅々まできちんと読めて、読み物としても面白くきっちり作り込まれているし、この本を開きながらゲームの謎に挑むというのもまた一興で、立体的なプレイが楽しめるという一冊である。

本作は後にDS版に移植され新たな要素が追加されたので未プレイの方はそちらをプレイしてみるのもいいだろう。南の楽園でおおいに翻弄されて欲しい。


うえけんWiki

上野 顕太郎(うえの けんたろう、1963年4月18日 - )は、かなりアナログな漫画家である。デジタルなEngadgetとの接点は編集長が20年前、ゲーム誌編集者であったとき連載を担当したからと言われる。よく使うフレーズは「暇だからな!」......というわけで、かつてプレイした方もいるだろうマニアックなゲームを掘り起こし、あの当時を偲んでいただきます。


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