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音の速度と言えば、われわれの認識ではそれが空気中を伝わってくる速度、つまり秒速340m前後(気温15℃のとき。1℃毎に秒速0.6mずつ増減する)です。ところが音の速度は媒介する物質によって変化し、たとえば15℃のヘリウムガス中であれば秒速997mになります。

ケンブリッジ大学とロンドンのクイーン・メアリー大学の研究者らは、音が最も高速に伝播できる物質を調べ、その速度が毎秒36kmもの速度に達することを突き止めました。これは空気中の速度に比べて100倍も高速に伝わるということです。

では、それほど音を高速で伝えられる物質は何かが、気になるところですが、研究者らはそれが非常に高い圧力で縮退させられ、金属状になった水素だと説明します。たとえば木星のような巨大ガス惑星の中心は非常に高い圧力がかかっており、そのような場所では水素が圧縮されて導電性のある金属的性質を持つ固体になっていると推測されています

研究者は荷電粒子間の相互作用の強さを表す微細構造定数と、電子の質量に対する陽子の質量の比という二つの定数を用いた資産によって、今回の結論を得たと説明します。ロンドン・クイーン・メアリー大学のKostya Trachenko氏は、「たとえばダイヤモンドは最も硬い物質として知られているため、音の伝播もダイヤモンド中を通過するのが最も速いというのが一般的な常識でしたが、それに理論的かつ基本的な限界があるかどうかはわかりませんでした」と述べます。

この理論ならば原子質量が大きくなればなるほど伝播する音の速度が低下することが予測され、逆に考えれば固体金属水素中ならもっとも音が速く伝わるということになります。研究者らは音が物質の中をどのくらいの速さで移動するかをコンピューターによって試算し、その速度が理論上の本質的限界に近いことがわかったとのことです。

こうした研究はわれわれの生活になにか影響を与えるかと言えば層でもありませんが、純粋な知的欲求を満たすものとして魅力的です。一方、研究者目線で言えば、こうした基本的な定数や理論的限界への理解を深めることで、いろいろな科学的モデルを改善できます。

Trachenko氏は「今回の研究結果は、高温超伝導、クォークグルーオンプラズマ、ブラックホール物理に関連する粘性や熱伝導率の関係といったさまざまな特性の限界範囲を発見し理解するのに役立つことで、さらなる科学的応用が可能になると考えられます」と述べています。

ただし、エジンバラ大学のGraeme Ackland氏はもっと慎重で「これらの基本定数を使用して、速度の単位で何かを取得できますが、それが限界に近いとする根本的な理由はまだはっきりしておらず、完全には確信できない」と自身の考えを表明しています。Ackland氏はより重い元素中を伝わる音に今回の試算がどう適用されるかを正確に理解するにはさらなる研究が必要だと述べました。

source:Science Advances
via:New Scientists, New Atlas