Nature
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植物のなかには、繁殖地を拡大するために種子を風に乗せて遠くへ運ぶ "風散布" と呼ばれる方法を利用するものがあります。この仕組みを模倣し、非常に小さな人工的電子デバイスを大量に風散布式に飛ばして何かの目的に利用しようとする研究を米ノースウェスタン大学のチームが考えています。

Nature誌に掲載された論文によると、この風散布式マイクロチップは病気や大気汚染の追跡など、さまざまな用途に利用できることを想定しているとされます。大気中に無数に人工物をまき散らすとなるとそれ自体が何らかの害を引き起こしそうにも思えますが、研究者らは材質に生分解性のものを使う可能性を示しています。

研究者は、植物の風散布のメカニズムを模倣するアイデアを思いつき、タンポポなどキクの仲間が使う、わた毛パラシュート型、ユリの仲間が使うグライダー型など、実際に自然界に存在する様々な風散布モデルを研究しました。そして、回転することで滞在時間を最大化する、カエデなどの種子にみられるプロペラ型の風散布モデルに注目、極小の電子機器を飛ばすのに適していると考えました。

そのなかから、三枚の羽根で回転するユウシュンカズラの種子をモデル化、人工のプロペラをミリメートルサイズまで小さくしました。天然の種子の場合はそんなに小さくはないものの、研究者いわく電子チップや微細な電源などを積み込むには十分なサイズなのだそう。なお、ミリメートル未満の大きさになると今度はプロペラが機能しなくなり、形状が空気力学的に意味をなさなくなることもわかりました。

チームはミリサイズの微細な風散布モデルを作りテストを実施、有効な結果を得ました。さらに、今後もいくつかの自然界に存在する種子をモデル化することを考えています。

もちろん、まだこの微小な風散布デバイスはコンセプトの域を出てはいませんが、研究者はたとえばスマートフォンと通信するアンテナや、光波長、pH値、水質など環境測定に利用できる様々なバージョンを考えています。なかでも有望な活用のしかたとして、細菌・ウイルスやエアロゾルなどバイオハザードの検知・監視のために利用することが提案されています。

いずれは大量に一定のエリアに散布し、限られた期間だけ機能を提供したのち、分解されて自然に帰る(つまり後処理がいらない、人畜無害な)風散布メカが利用される日がくるかもしれません。

Source:Nature