マイクロソフト フライトシミュレーター開発者インタビュー。VRやXbox対応など予定多数、「もうひとつの地球」目指す

すでに5年分の更新計画を策定中

Ittousai
Ittousai , @Ittousai_ej
2020年09月30日, 午後 01:10 in asobo studio
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Microsoft Flight Simulator
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マイクロソフト フライトシミュレーターに日本の名所を追加する「ワールドアップデート:日本」配信にあわせて、マイクロソフトの開発責任者 ヨーグ・ニューマン氏にお話をうかがいました。

内容は日本アップデートの詳細と見どころ、VRやXbox対応など次の更新予定について、現実の地球のデジタルな双子を目指すマイクロソフト フライトシミュレーターの長期的な計画まで。

マイクロソフト フライトシミュレーターの概要と、日本アップデートの主な内容についてはこちらをどうぞ。

MSフライトシミュレーター日本アップデート配信開始。東京から姫路城・軍艦島まで追加、再現度向上

Microsoft Flight Simulator 開発責任者 ヨーグ・ニューマン氏に訊く

‐‐ 日本ワールドアップデートの予告編を拝見しました。とても楽しみです。日本国内のランドマークとしては、具体的にはどれくらいの建造物が新しく追加されるんでしょうか。

Jorg Neumann, Microsoft Flight Simulator
Jorg Neumann / Microsoft

ニューマン:まず、都市についてはフォトグラメトリという技術で作成しています。飛行機で上空を通過しながら写真を撮影して、画像に含まれる建物をAI処理ですべて3Dメッシュに変換する方法です。生成するモデルの解像度は7.5センチメートルと非常に高精度になっています。今回のアップデートでは6つの都市をこのフォトグラメトリで再現しますので、空撮の範囲内ならば原則すべてが3D化されているはずです。

それ以外はプロシージャルな方法で再現しています(※)。衛星写真や地図データに対して機械学習処理をすることで、含まれるすべての木や建物(の位置や高さ)を検出する方法です。全世界では約2兆本の木、約15億の建造物がゲーム内に含まれています。うち日本がどれくらいかは正直分りませんが、原則として日本のすべての建物、すべての木がゲーム内にも存在するはずです。

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もう一点、今回のアップデートから追加したことがあります。すべての建物の場所が分かったとしても、大事なのはゲーム内で正しく見えるかどうか。そのため、アップデートではプロシージャル生成建造物のタイプを二つ追加しました。ひとつはパゴダ(塔)、もうひとつは寺院です。これで従来よりもずっと本物の日本らしく、文化的な遺産についてもより正しく再現できるようになったと思います。

(※ Procedural。英単語としては「手続きによる」。CG技術としては、主にモデリング等を一定のルール(手続き)で自動処理すること。たとえば自然の植生について、手動ですべての植物を植えるのは非現実的でも、植物の種類や頻度、育ち方等のルールを設定しておき、手続き的に自動生成すれば大量にそれらしい結果が得られる。

マイクロソフト フライトシミュレーターの場合、フォトグラメトリや手動で特別に3Dモデルを用意した場合を除き、検出した場所に「英国郊外の民家」や「オフィスビル」といったアーキタイプ(テンプレート)建造物を当てはめて生成している)

‐‐ ワールドアップデートは容量的にはどれくらいになるのでしょうか。

ニューマン:各都市の3Dデータは、クラウドのAzureサーバからストリームされる仕組みになっています。全世界分のデータは2ペタバイト、もしDVDに分割するなら何十万枚になりますね(笑)。ある程度のインターネット接続速度があればストリーミングが有効ですが、あらかじめダウンロードしてオフラインでも遊べます。この場合、おそらく10GB単位になるかと思いますが、現状はほとんどのプレーヤーがストリーミングで問題なく遊べています。

‐‐ 一部のランドマークについては、フォトグラメトリによる3Dモデルでもゲームエンジン側のジェネリックなモデル(アーキタイプ)でもなく、手動で作られた3Dモデルのようですね。こうした場所や建造物はどれくらいありますか?

ニューマン:20から25くらいだったと思います。たとえば姫路城や、人工島の風の塔、それから多くの橋も。日本には独特でアイコニックな外見をしている橋がいくつもありますので。また、追加の6つの空港も手動で作成しています。空港は長崎から北海道まで、さらに島嶼部も含めたので、日本中どこを飛んでも、作りこまれた空港からの離着陸を楽しめると思います。

そのうえで3つの着陸チャレンジと、ディスカバリーフライトも追加しました。プレーヤーにとって常にやることがあり、興味を惹かれるものが見つかるようにするためです。たとえば離着陸が難しいことで知られる八丈島空港の短い滑走路に、強風で煽られながらエアバスを着陸させるチャレンジもあります。ディスカバリーフライトは長崎から東京まで、日本という国がどれほど美しいのか伝わるように作りました。

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鉄道は存在しない?データセットの追加予定

‐‐ 実際に飛んでいて気づいたのは、ほとんどの道路が再現されて自動車も走っているのに、どうやら線路は認識していないことです。鉄道を追加する計画はありますか?日本の風景にとっては、都市でも地方でもかなり重要だと思います。

ニューマン:まったくその通りだと思います。まずシーナリー(マップ)を作るうえで、衛星写真と航空写真に加えてOSM、オープンストリートマップの地図データも使ってるのですが、そちらには線路のデータも含まれています。開発にあたっては、世界のすべての線路と列車を再現して正しいスケジュールで走らせる構想もありました。しかしその過程で、鉄道についてはグローバルなデータセットというものが存在しないことが分かったんです。

ですが、目標としてはぜひ導入したいと思っています。というのは、われわれにとっては木や地形や建物だけの静的な世界ではなくて、ダイナミックな生きた世界を作り出すことが重要だからです。なので道路の交通状況や空の運行状況だけでなく鉄道も、さらには船舶についても、現実と同じ場所を航行しているようにしたいと考えています。長期的な目標なのでいますぐというわけではありませんが、ロードマップにはしっかりと掲載済みです。

このプロジェクトの一番エキサイティングなところは、実際にまだリリースしたばかりでもありますが、プロジェクトが本当に始まったばかりということです。現実の世界は日々刻々と変化しています。われわれにとっても、シミュレーションに新しく追加できるもっと良いデータは常にあります。鉄道のデータについてすでに調べていますし、船舶についても手を付けるつもりです。組み込めるデータセットはまだまだたくさんあるので、現実の地球のデジタルな双子として、どこまでも現実に近づけてゆけると思っています。

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VRやXboxにも対応。5年先の更新まで策定中

‐‐ 現実に限りなく近いデジタル地球のシミュレートは壮大な目標ですね。でも、実現には膨大なリソースが必要になりそうです。計画倒れになる心配はないのか、今後の計画について何か教えていただけると安心できます。

ニューマン:ありがとうございます(笑)。われわれ、マイクロソフトもAsobo Studioも本当にまだ始まったばかりだという認識です。開発者は一人残らず、これを仕事というよりむしろ趣味と捉えていて、趣味として取り組むからにはの責任感を持っています。全員、これは10年仕事になるぞと。

実際に、マイクロソフトのゲーム事業担当役員のフィル・スペンサーにフライトシミュレーターの新作を作らせてほしいと最初に売り込んだときから、長期的な計画も込みで提案しています。スペンサーも長期プロジェクトになると同意してくれました。

現時点では、すでに5年先までの計画を策定中です。たとえばワールドアップデートの第一弾は日本になりました。ずっとやりたかったことなので、リリースできるのを本当に楽しみにしていますが、これから約二か月ごとにこうしたワールドアップデートを無料で提供してゆく予定です。世界中を地域ごとに分けて、もっと良いデータを組み込んでゆきます。

いま具体的にお話しできなくて歯がゆいのですが、これからは毎月、大型の更新を予定しています。まずは日本ワールドアップデート(イェーイ!)で、次はごく近いうちにVR対応も追加します。その次はワールドアップデートの第二弾、それからシミュレータのアップデート、そしてXbox対応など、来年も大型で超クールなアップデートが続きます。プレーヤーからのフィードバックについてもしっかり耳を傾けています。ヘリコプターも追加してほしいだとか。だから仕事は山積みです。

‐‐ 超期待しています。では最後に日本のパイロットたちに向けて、アップデートのなかでも特にここを見てほしいという場所があったら教えてください。

ニューマン:このワールドアップデートのために数か月かけて日本について学んで、とても楽しい時間を過ごすことができました。誰でも知っている富士山はもちろんですが、個人的には北日本の美しさに打たれました。とても美しい湖がいくつもあって。

また私は知らなかったのですが、日本の南には離れた島がいくつもあるんですね。この島々も素晴らしくて、妻と二人の娘に見せたら、これはいつかみんなで現実に旅行しなくては、となりました。日本には美しい風景が実に多くて、調べてゆくうちに恋に落ちてしまいました(笑)。なので、プレーヤーの皆さんにも日本をめぐって、お気に入りの場所をぜひ発見してみてほしいと思います。

‐‐ ありがとうございました!

おまけ。配信された日本アップデートからごく一部、東京のフォトグラメトリ化による差の例。

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更新前。これはこれであまり違和感のない、見知らぬ黒い高層ビルが建つ場所。ビルの根本あたりに微妙に見える赤い部分に注目。なにかが隠れているような?

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更新後。隠れていたのは東京タワーでした。スカイツリーは出荷時から手動モデルでランドマークなのにこの格差。

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更新前。どことなく殺風景な大通り。

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更新後。フォトグラメトリで看板が貼られると一気に東京らしくなります。秋葉原・万世橋から中央通り。


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