MIT、数万の人工シナプスを1チップ化した新しいメモリスター設計を発表。金属工学の知識を応用

スパコン(の性能)がスマホサイズになるかも?

Munenori Taniguchi
Munenori Taniguchi, @mu_taniguchi
2020年06月9日, 午後 06:30 in news
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metamorworks via Getty Images

MITの研究チームが、紙吹雪の一片ほどの大きさもない微少なAIチップを設計しました。このチップは数万ものメモリスター(memristor)と呼ばれる受動素子を人工脳シナプスとしてチップ上に配置し、脳の神経構造を模倣する方法で情報を処理するニューロモーフィックデバイス実現への有望なデザイン例だとされます。

従来のノイマン式コンピューターは、電子回路の電荷の有る無しを"0"と"1"という2つのデータ(バイナリー値)として扱うことで特定の処理を実現します。一方メモリスターは人間の脳のシナプスのように、流れる電流の強さを信号の強度として扱い、バイナリートランジスタよりもはるかに広い範囲の動作を実行できます。特定の電流強度に関連づけられる信号をいわゆる”記憶”として蓄え、次に同様の電流を受け取ったときにまったく同じ信号を生成します。

要するに、このような脳にヒントを得た回路で構成されるメモリスターを使えば、たとえば小型のポータブルデバイスにまるでスーパーコンピューターのような能力を詰め込むことが可能になるとされます。

ただ、これまでのメモリスターの設計では正極側と負極側をスイッチング、つまり橋渡しする役目を担う”伝導チャネル”をうまく機能させるのが難しく、信頼性が低下する原因となっていました。しかし、MITの研究者らは金属工学の文献をあたり、メモリスターの正極側に使用される銀、負極側に使用するシリコン双方に相性の良い材料として銅を選出、双方の境界に積層させることで、より微細な伝導チャネルの安定化に成功したとのこと。

こうしてできたチップの最初のテストとして、チームはキャプテンアメリカが持つ盾のグレースケール画像を再現させる実験を行いました。これは各メモリスターを画像を構成するピクセルに割り当て、その色強度(グレースケール)を相対的にメモリスターのコンダクタンス変調に適用しました。これでメモリスターはそれぞれがピクセルの情報を記憶したことになり、チップは記憶した画像を何度でも再現できるようになったとレポートは報告しています。

チームは他にもMITの学内にあるキリアンコートの写真を記憶させ、それをぼかしたりシャープにしたりといった処理を高精度に行うことができました。MITの准教授Jeehwan Kim氏は、これまでソフトウェアとして存在していた人工シナプス網を「現実のニューラルネットワークハードウェアとして構築しようとしている」と述べ、それが将来的なポータブルAIシステムに活用されるとの考えを示しました。さらにこの技術を発展しアレイ化させることで強力な画像認識タスク性能を持たせることを考えているとのこと。そして「いつの日かスーパーコンピュータやインターネット、クラウドに接続せずともこの種のタスクを実行できる”人工の脳”を持ち歩けるようになるかもしれない"と述べています。

source : Nature Nanotechnology
via:MIT News


 

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