2021年7月末から8月の半ばにかけて、携帯4社が決算を発表しました。政府要請による新料金プランの投入による通信料引き下げの影響を大きく受けて以降、各社がその影響をどこまで早く払しょくして利益を出せているのかが注目されることから、今四半期の決算を振り返り、携帯4社の好調・不調とその要因を確認してみたいと思います。

今回の決算で利益が最も伸びているのはKDDIのようで、2022年3月期第1四半期決算の売上高は前年同期比4.6%増の1兆3003億円、営業利益は前年同期比2.9%増の2992億円となっています。その伸びを支えた大きな要因は、「成長領域」と位置付ける事業が伸びていることであるようです。

成長領域の1つは、金融や電力、Eコマースなどコンシューマー向けの非通信サービスとなる「ライフデザイン領域」。そしてもう1つは法人向けの事業を担う「ビジネスセグメント」で、こちらはコロナ禍で拡大している企業のデジタル化需要を取り込んで伸びているようです。

▲KDDIは値下げの影響で通信料収入が減る一方、非通信系サービスや法人向け事業の拡大で増収増益を達成している

一方の通信事業に関しては、「au」だけでなく「UQ mobile」「povo」なども含めたマルチブランド通信ARPU収入が116億円減少するなど大幅に落ち込んでおり、それを先の成長領域などでカバーして増益につながったといえるでしょう。

ちなみに今回の決算において、KDDI代表取締役社長の高橋誠氏は、povoの契約数が「約100万」であることを明らかにしていましたが、前四半期の「100万が見えてきた」所からあまり伸びていない印象も受けます。ただ同社は現在、UQ mobileの獲得にかなりリソースを割いているそうなので、具体的な数字は示されませんでしたが、auからUQ mobileへ移行するユーザーが増えていると考えられそうです。

Masahiro Sano financial results briefing
▲povoの契約があまり伸びていない印象を受けるKDDIだが、UQ mobileの獲得に力を注いでいる影響が大きいという

次に伸びているのがソフトバンク。2022年3月期第1四半期決算を見ると売上高が前年同期比15.7%増の1兆3566億円、営業利益が前年同期比1.1%増の2830億円となっていますが、好調の要因はKDDIとほぼ同じといっていいでしょう。

1つはヤフーを有するZホールディングスがLINEと経営統合したことで、コンシューマー向けの非通信サービスが伸びたこと。そしてもう1つは法人関連事業の伸びで、企業のデジタル化需要を取り込み利益が前年同期比23%伸びたとしています。

一方でコンシューマー向けの通信事業は、やはり料金引き下げの影響を受け落ち込んでいるようですが、オンライン専用の「LINEMO」は契約数が50万に満たないそうなので、サブブランドの「ワイモバイル」にユーザーが流れた影響が大きいと考えられます。実際同社の代表取締役社長執行役員兼CEOである宮川潤一氏によると、ワイモバイルの契約者数は約700万に達し、スマートフォン累計契約数は、この3カ月で10%伸びたと話していました。

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▲ソフトバンクはワイモバイルの獲得に注力、同ブランドのスマートフォン累計契約数は3カ月で10%伸びたとのことだ

そして大手3社の中で唯一利益を落としているのがNTTドコモで、2021年度第1四半期決算は売上高が前年同期比5.6%増の1兆1596億円、営業利益が前年同期比12.9%減の2444億円となっています。その理由の1つはもちろん通信料値下げの影響で、「ahamo」が他社のオンライン専用プランを大きく上回る180万契約を獲得、絶好調なことがそれを示しています。

ただ同社は今年度の値下げ影響が2500億円、他の売り上げでカバーして最終的には600億円程度になるとしており、値下げ自体の影響は他の2社と大きく変わらないようです。にもかかわらず、なぜNTTドコモだけが減益なのかといいますと、他社の伸びしろとなっていた非通信・法人といった領域が伸びていないためです。

実際NTTドコモの非通信分野を担う「スマートライフ領域」は今四半期減益を記録。親会社である日本電信電話(NTT)の代表取締役社長である澤田純氏はその理由について、スマートライフ領域の拡大に向けた施策に力を入れているためと答えているのですが、そうした施策を打たなければいけないほど、NTTドコモは非通信系サービスで出遅れたともいえる訳です。

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▲NTTドコモは通信事業だけでなく、利用拡大に向けた施策に力を入れたことで、スマートライフ領域も減益となっている

出遅れの要因は、NTTドコモがサブブランドを持っていなかったが故でしょう。KDDIやソフトバンクは低価格のサブブランドを以前から持ち、そちらへのユーザー移行が進んでいたことから、通信料収入が減ることを見越して非通信サービスの拡大を急いでいたといえます。

実際、ソフトバンクはワイモバイルとLINEMOの契約数を合わせると約750万、KDDIは2021年5月時点でUQ mobileの契約数が300万としていたことから、povoの契約数を合わせると少なくとも400万の低価格ユーザーを既に抱えていると考えられます。それだけに2社は、通信量収入が下がっても儲けが出る“構え”ができていたといえ、NTTドコモがそこに追いつくにはahamoユーザーの増加を見越した戦略が求められることになりそうです。

そして4社の中で最も利益が低いのは、もちろん楽天モバイルです。親会社である楽天グループの2021年12月期第2四半期決算は、売上高が前年同期比で16.9%増の7936億円、営業損失が1009億円の赤字決算となっています。

赤字の要因はもちろん楽天モバイルへの先行投資が続いていることで、基地局整備を前倒しで進めていることからそれは当然なのですが、それに加えて楽天モバイルを苦しめているのがローミングです。エリア整備途上の楽天モバイルは、エリア外の場所をKDDIとのローミングでカバーしていることから、ユーザー数が増えたことでローミングの利用が増え、その分KDDIに支払うローミング費用が増えたことが赤字幅を拡大させているようです。

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▲楽天モバイルは基地局整備の投資に加え、契約者の増加によるローミング利用の増加で損失が拡大している

楽天グループの代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏はしきりにローミング費用の高さを訴えており、同社が5年も前倒しでエリア整備を進めているのもローミング費用を抑えることが最大の狙いといえるでしょう。ですがそのエリア整備を阻んだのが半導体不足で、楽天モバイルは半導体不足の影響で、4Gの人口カバー率96%の達成時期を2021年夏から、2021年内へと後ろ倒ししています。

一方で、他の3社からは少なくとも当面の間、半導体不足で基地局整備が遅れることは「ない」と回答しています。楽天モバイルはネットワーク整備を大手ベンダーにあまり頼らず、独自の完全仮想化ネットワークを採用していることを売りにしていますが、ある意味でそれが機器調達力の弱さにつながるなどして裏目に出てしまったといえそうです。

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▲楽天モバイルの4Gエリアは2021年6月末時点で人口カバー率90%超に達したものの、夏頃を予定していた96%の達成は半導体不足で後ろ倒しとなってしまった

もちろん楽天モバイルには、iPhoneの販売開始、楽天の他のサービスとのシナジー向上、そして完全仮想化ネットワークの海外事業者への販売など、好材料もいくつか出てきてはいますが、赤字解消にはやはり早期の国内ネットワーク整備が強く求められる所です。三木谷氏は人口カバー率96%を達成した2022年にはローミングの支払いが大幅に減るとし、そのタイミングで契約拡大を図る考えを示していましたが、楽天モバイルはこれまでさまざまな要因で基地局整備に遅れが出ていただけに、依然予断を許さないことは確かでしょう。