多くの話題をさらってきた携帯電話料金ですが、3月に多くの新料金プランがサービスを開始したようです。とりわけ注目度が高かった携帯3社のオンライン専用プランは、サービス開始初日に加入者が殺到するなどして混乱もあったようですが、しばらくすれば落ち着いてくるでしょう。

ですが携帯電話料金を巡る議論はまだ終わったわけではありません。そしてここ最近の動向を確認してみますと、今後注目されるのは音声通話料金となりそうです。

携帯電話の音声通話料金は、一般的に通話し放題のオプションを契約しなければ、30秒22円(税込、以下同様)の追加料金がかかるというのは多くの人の知るところかと思いますが、裏を返すとそれだけ長い間、音声通話料金は見直されていなかったのです。データ通信を主体とした携帯電話料金に関しては菅政権の圧力で大幅に引き下がりましたが、音声通話の引き下げはむしろこれから本格化するようです。

onsei oroshi ryokin  Masahiro Sano
▲総務省「競争ルールの検証に関するWG」第15回会合資料より。MNO3社の従量制の音声通話料は10年以上3分120円(税抜)、つまり税込みで30秒22円という水準から全く変わっていない

そもそも音声通話料金の見直しが進められるようになったのは、2019年11月にMVNOの日本通信が、総務大臣裁定を申請したことが大きかったといえるでしょう。

MVNOが携帯電話事業者(MNO)からネットワークを借りる際の料金は、データ通信に関してはMVNOとMNOの機器を相互に「接続」する仕組みなので料金が毎年見直されるのですが、音声通話は回線をそのまま借りているだけなので「卸役務」、つまりMNOとの交渉によって料金が決まる仕組みです。

ですがMNO側がその卸料金が長年にわたって見直してこなかったため、日本通信はMNOの1つであるNTTドコモに対し音声通話の卸料金を「適正な原価に適正な利潤を加えた金額」に引き下げること、そして通話定額オプションをMVNOにも提供することなどを求めました。ですがその交渉が不調に終わったことで総務大臣申請を仰ぎ、その結果前者の卸料金の引き下げが認められたわけです。

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▲日本通信は総務大臣裁定の末、NTTドコモの音声卸料金引き下げが認められたことを受け、2020年7月に通話定額の「合理的かけほプラン」を開始している

これを機として総務省も、MVNOの競争力向上のため音声卸料金の低廉化をMNO側に求めるようになり、「接続料の算定等に関する研究会」などで議論が進められてきました。結果MNO側は、MVNOに対して音声通話に関する2つの対応を打ち出すこととなりました。

1つは音声卸料金の引き下げ、中でも基本料金の引き下げです。ここ最近発表されたMVNOの新料金プランを見ますと、音声通話付きのプランとデータ通信専用プランの料金差が以前は700円程度あったのが、新プランではいずれも100〜300円程度にまで下がっているのですが、それは今後音声卸料金の基本料が大きく下がることを見込んで、各社が音声付きプランの料金を引き下げたためなのです。

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▲「競争ルールの検証に関するWG」第15回会合資料より。MNOの新しい音声卸料金水準はまだ公開されていないが、MVNO側が基本料を大幅に引き下げているだけに、大幅な引き下げが見込まれている

そしてもう1つはプレフィックス番号の自動付与です。MVNOは高額な通話料を引き下げるため、中継電話サービスを用いて5分、10分の通話定額を実現するなどしていたのですが、それを利用するには電話番号の前にプレフィックス番号を付与したり、専用アプリを使ったりするなどの手間が必要でした。

そこでMNO側は、MVNO側が中継電話サービスを利用しやすくするよう、音声通話のネットワーク上で自動的にプレフィックス番号を付与するサービスを提供するとしたのです。プレフィックス番号が自動付与されれば、標準の通話アプリから電話をするだけで自動的に安価な通話サービスに接続してくれるので、番号の付与や専用アプリなどが必要なく利便性は大幅に高まります。

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▲総務省「接続料の算定等に関する研究会」第28回会合のNTTドコモ提出資料より。同社は専用アプリなどが不要でMVNOの中継電話サービスが利用可能になる、プレフィックス番号の自動付与をいち早く提案。他のMNOもこれを採用する方針を打ち出している

実際、NTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」が2021年3月25日に発表した新料金プランではこの仕組みをいち早く導入。2021年4月7日以降、スマートフォン標準の電話アプリから電話をかけるだけで、同社の中継電話サービス「OCN でんわ」が利用できる仕組みを実現するとしています。

なぜNTTコミュニケーションズが他のMVNOより先にこの仕組みを導入できたのかといえば、同社が回線を借りているのがNTTドコモだけだったことが影響したと考えられます。実はプレフィックス番号自動付与はNTTドコモが提案したものであるため、同社が最も早く準備ができたと考えられることから、新料金プランを打ち出した主要MVNOの中で、KDDIやソフトバンクの回線を借りていないNTTコミュニケーションズが最も対応しやすかったといえるでしょう。

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▲「OCN モバイル ONE」の新料金プラン概要。音声付きプランとデータ専用プランの料金差が132円にまで縮んでいるのに加え、専用アプリ不要で30秒11円の「OCN でんわ」が利用できるようになる

これでMVNOが、MNOとの不平等を解消しながら独自の工夫で料金を引き下げられる環境が整いつつあることは確かでしょう。ですがそもそもの話として浮上してきているのが、冒頭で触れた「30秒22円」という料金が10年以上、長きにわたって全く見直されてこなかったことです。

もちろんMNOの側も、通話定額サービスを提供するなど通話をお得にする取り組みをしていなかった訳ではありません。ですが通話定額を契約するほどでもない人であっても、ちょっと長く通話してしまうケースは時々発生するもの。そうした時にかなりの通話料が取られてしまうことが気になった人は少なくないかと思います。

そこで総務省は、この従量制の通話料にメスを入れようとしており、2021年3月29日に実施された「競争ルールの検証に関するWG」の第15回会合では、音声通話料金が10年以上値下がりしていないことに言及したようです。その資料を見ますと、固定電話と携帯電話の接続料が同じ水準にもかかわらず、携帯電話の従量制料金が高く通話料に大きな格差があると指摘。「携帯電話市場(特に音声通信分野)において競争が十分に機能していないことに原因がある可能性が高い」と記述されています。

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▲「競争ルールの検証に関するWG」第15回会合資料より。固定電話の通話料は引き下げにより接続料に近い水準となる一方、携帯電話の通話料は高止まりが続いているという

そうしたことから2021年4月から、同WGではMNOやMVNOへのヒアリングを実施し、音声通話が高止まりしている原因を追及するとともに、MNOに従量制料金の大幅な引き下げを迫るものと見られています。音声通話は「あまり使わない」という人は増えていますが、一方で「全く使わない」という人もほとんどいない重要な存在でもあるだけに、その引き下げに関する議論がどのような結果を迎えるのか、注目されるところです。

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