10月6日にApple Payで利用できるPASMOサービスが開始された。
iPhone 8またはApple Watch Series 3以降の機種で、iOS 14以降またはwatchOS 7以降の最新バージョンにアップデートされている必要がある。
すでに速報ベースの記事は掲載されているが、本稿では実際にiOS 14.0.1にアップデート済みのiPhone 8を使ってセットアップから利用までを試してみたい。
基本はSuicaと同じ
Apple PayにおけるPASMOは基本的にはSuicaの場合と同じで、Walletアプリまたは、App Storeからダウンロード可能なPASMOアプリ経由でバーチャルICカードを端末に登録し、適時アプリからチャージを行って使用していくことになる。
Walletアプリ経由の場合、開いた画面の右上にある「+」ボタンを押すことでSuicaまたはPASMOを選択できるようになっており、そのまま追加できる(Suicaとは異なり「地域」を「日本」に設定しておく必要がある)。カードはバーチャル版を新規追加するか、あるいは既存の物理カードを取り込んでバーチャルカード化することも可能。この場合、物理カードの定期やオートチャージ情報もそのままiPhoneなどに取り込まれるため、改めて設定する必要はない。
基本的な操作はWalletアプリでもPASMOアプリでも共通なのだが、最大の違いはPASMOアプリでは定期券などの購入がオンライン経由でiPhone上から購入なことと、定期券の支払いやチャージにおいてアプリ上に登録したカードを選択できる点にある。
特にApple Payは現状でVisaカードの登録が行えないため(QUICPayまたはiDとしてのリアル店舗利用は可能)、Visaカードを使った交通系ICカードへのチャージが行えない。そのため、少なくともVisaカードを利用したいユーザーはPASMOアプリ上に登録を行う必要がある。
一部を除き、基本的にAmerican Express、JCB、Mastercard、Visaの国際ブランドであればどれでも登録が可能だ。ただ、本稿を執筆した10月6日午後時点でPASMOアプリはApp Storeに表示されず、すべてのユーザーが見える状態に反映されるために時間がかかるため、「見えるまで待てない」という人はPASMOアプリを呼び出せる直リンクをたどってアプリをダウンロードしてほしい。
定期券利用のユーザーを取り込んで2-3割をモバイルに
ここまでセットアップが完了したら、あとは実際に使うだけだ。すでにSuicaなどのカードを登録しているユーザーの場合、エクスプレスカードの設定を開いて登録したPASMOカードを選択しておく。これで駅の改札をくぐったときなどにPASMOが自動選択されるようになる。
iPhoneの標準機能と深く連動しているのはSuicaと同様で、例えば交通系ICカードで移動中にはその旨の通知が表示されたり、Apple Mapsで経路検索をした際に移動に必要な残高がエクスプレスカードで設定されているカードにない場合は警告が表示されたりする。
PASMOの利用履歴はWalletアプリ上から確認できるが、参照できる情報はPASMOの物理カードで印字できる利用履歴とほぼ同等だ。移動した駅の情報と支払った料金が表示される一方で、物販などでは実際に利用した店舗など細かい情報は表示されない。
とはいえ、物理カード単体では確認できなかった情報が素早く参照できるため、モバイルならではの使い勝手を享受できるだろう。基本的な機能はApple Watchからでも利用できるため、支払いの瞬間だけiPhoneをいちいち取り出すのが面倒という人であれば、PASMOはApple Watchに登録してしまうというのも手だろう。
このように、ここまでの使い方であればSuicaとほとんど変わりなく、PASMOアプリ自体もSuicaのユーザーインターフェイスとそれほど変わらないため、Suicaで困っていないというユーザーであればあえてPASMOを使う理由はないだろう。
一方で、ポイントプログラムの利用や定期券など、「PASMOでないと困る」というユーザーも多くおり、それが今回のPASMO for Apple Payリリースにつながっている。例えば現在Suicaカードの発行枚数は8000万を超えているが、PASMOはその半分にあたる4000万の大台に間もなく届こうとしている。両カードともほぼ首都圏での利用が中心のため、少なくともPASMOが必須というユーザーはSuicaの半数程度、首都圏全体のシェアでいえば3分の1程度は存在することを示している。
今後、どの程度のPASMOカード保持者がモバイルの世界に移ってくるのかは不明だが、PASMO協議会によれば「Suicaが今年2020年9月に1000万のモバイルユーザーに達したことを報告しているので、まずはそこを目指したい」と述べており、全利用者の2-3割程度はモバイルに移行してくることを想定しているとみられる。特に私鉄沿線の在住者やバス利用が多いユーザーなどは、Android版を合わせてモバイルPASMOを利用する素地があるとみられ、あとはどれだけモバイルの便利さをアピールできるかがポイントになるはずだ。